「ザ・テキサス・レンジャーズ」(原題:The Highwaymen、2019)を見た。伝説のフランシスハマーとメイニーゴールトのテキサスレンジャーの物語。Netflix製作。
この映画は、大恐慌時代のアメリカのに実在した男女2人組の銀行強盗、ボニーとクライドの壮絶な青春を描いたアメリカン・ニューシネマの先駆的傑作「俺たちに明日はない」(原題:Bonnie and Clyde)を、実話に基づきレンジャー側から描いた映画。
「俺たちに明日はない」の壮絶なラストシーンを知っているので、そのシーンになるまでのプロセスが描かれるので興味津々に見た。この映画では、87発とされる銃弾を受けたボニーとクライドのシーンがより詳しく描かれる。
全体として、ボニーとクライドの顔のアップはこのラストに少しだけ出ただけで、ほとんど全編で顔を見せないところも面白い。二人が逃走用に使ったフォード社の乗用車「フォードV8」や、ボニーが足に怪我をしていて引きずる足元だけだったり、2人の姿は遠景でしか描かれないのだ。ボニーは、フェイ・ダナウエイのイメージが強すぎる。
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1934年、テキサス。 強盗殺人犯のボニー・バーカーとクライド・バロウが脱獄して2年。 テキサス州知事のファーガソン(キャシー・ベイツ)は、伝説のテキサス・レンジャーズだったフランク・ハマー(ケビン・コスナー)に、彼らの逮捕を依頼。 ハマーはかつての相棒メイニー(ウディ・ハレルソン)を誘い入れ、独自に彼らを追うことになった。
フランクとメイニーがボニーとクライドの居場所を突き止めるが、街の住人たちにとってはボニーとクライドは英雄のような存在で、応援しているという人も多く、行く先々で人だかりができて、周りからは手出しができないというのが面白い。
ボニーとクライドは強盗や殺人を繰り返すが、強盗は銀行などに限って行っていたことで、不況に苦しむ一般人からは歓迎されたようなのだ。
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フランクは、かつてレンジャーで鳴らしただけあって、銃器の販売店で銃を見て購入するシーンが見所の一つ。詳しい銃の解説書を見ながら、店主に見せてくれというのだが、いかにもなプロで、若い店員などは目が点になるほどだ。
「(トンプソンの)サブマシンガンを見せてくれ」というと、次々に銃の名前を告げるのだ。
・ピストルグリップのコルト・モニター・マシン・ライフル(自動小銃)
・コルトの自動小銃
・ブローニング(字幕)(実際はBAR .30-06)(写真↓)
・レミントンM11(12インチ)
・ウィンチェスター
・弾倉は箱型で1ダース、ドラムで二つ
・装填(そうてん)用の半月クリップ
などを矢継ぎ早に店主に告げる。
「どれを希望します」と店主が言うと、「全部だ」というのだ。
ウィンチェスター銃を手馴れた手つきで、カシャカシャと扱う姿に、若い店員は驚きの表情。
ケヴィン・コスナーは、同じ時代の「アンタッチャブル」でエリオット・ネスを演じたが、ネスの40年後の姿にもダブって見える。フランクの相棒のメイニーを演じているウディ・ハレルソンが渋い。ハレルソンといえば「スリー・ビルボード」(2017)でビル・ウィロビー保安官を演じてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされたのが印象的。
AP通信から「1000ドル払うので、ボニーとクライドを追いつめた際の話を聞かせて下さい」というオファーがあったが、取り次いだ若い警察官にメイニーは「恥を知れ(Shame on you!)」といい、2人はそれを断った。ボニーの葬儀には20,000人、クライドの葬儀には15,000人が集まったという。実在のボニーとクライドの写真や当時のフォードの車なども写真で登場した。
1930年代の時代背景を見事に再現している。何十台ものクラシックカーなどをよく集めたものだ。当時の映画雑誌も出てきて、そこには人気女優だったクララ・ボウが載っていて、「クララ・ボウのファンだ」という警官もいた。
知事役でキャシー・ベイツが出ているが、出番は少ないものの、アクが強く印象に残る。135分とやや長く、全体に派手なアクションもなく淡々と推移するが、映像が鮮明で見応えがあった。「ボニーとクライド」(俺たちに明日はない)のアナザーストーリーとして面白い。すごいな、Netflix(笑)。
タイトル(原題)のHighwaymenは、交通警察官のこと・テキサス・レンジャーは、テキサス州の騎馬警官。
予告編: