第31回東京国際映画祭で見た2本目の映画は「Japan Now」部門の特集上映「映画俳優 役所広司」の1本として上映された「孤狼の血」(2018)。TOHOシネマズ 六本木ヒルズにて。日本語を母国語としない観客向けに英語の字幕が入っている。映画は今年の5月に一般公開された。
いまや伝説のヤクザ映画となっている「仁義なき戦い」の東映が再びヤクザ映画に取り組み、昭和63年(1988年)の広島県にある架空の都市・呉原を舞台に、血で血を洗うヤクザ同士の抗争に身を投じていくベテランと新米の”バディ”刑事二人を描いた本作は、圧倒的な極上バイオレンスエンターテインメント映画として、記憶されることになりそうだ。クセになる映画だ。
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物語は呉原東署二課暴力団係(通称・マル暴)に赴任してきた新米刑事・日岡(松坂桃李)が、数え切れないほどの表彰と処罰を受けてきた敏腕かつ横暴な巡査部長・大上(おおがみ、役所広司)の下につくことから始まる。
大上の暴力的な捜査や暴力団からの金銭の授受を目撃した日岡は、彼のやり方に疑問を抱き異議を唱える。しかし、14年前の大規模な抗争をきっかけに真っ向から対立することとなった五十子会(いらこかい)と尾谷組の長らく続く冷戦状態をなんとか維持し、大きな衝突を防ぐべく奮闘する大上の姿を見るうちに、日岡は自身の考えを改め始めるのだった。
失踪した五十子会のフロント企業に勤める男・上早稲(うえさわ、駿河太郎)の捜索や尾谷組構成員・柳田(田中偉登)が殺された事件の捜査を通して、次第に絆を深めていく二人だったが、ある日大上に関する重要な疑惑が浮上する。 それは、14年前の抗争を終結させるきっかけとなったある男の殺人事件に、大上が関わっているというものだった。
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とにかく全編、バイオレンスの描写が凄まじい。はっきり言うと、気が弱い人は敬遠したほうがいいだろう。目を背けたくなるシーンが多い。冒頭から、想像を絶するエグいシーンで始まる。監督が、この映画は、こんな映画だぞ、覚悟はいいかと観客に最初から投げかけているようなものだった。
あまり書いてしまうと、これから見る人にはよくないので控えるが、豚小屋での組員への暴力や、五十子会の組長への壮絶な仕打ちは凄まじいを通り越す。当然のことながらR-15作品。
全編広島弁。卑猥な言葉もポンポン飛び出す。
この映画の面白さは、暴力員よりも暴力的な主人公が、実は、一般の堅気の人間を最も守ろうとしたこと、暴力的な刑事の下で、名門・広島大学卒業のエリート警官が仕事をすることになり、正義感に燃えていたが、やがて刑事を理解していく過程がいい。この警官と恋人となる薬剤師・岡田桃子(阿部純子)が魅力的だったが実は…というところが驚きだった。
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キャスト
柳田孝:田中偉登…尾谷組の組員(準構成員)
賽本友保(さいもと ともやす):ウダタカキ…尾谷組の元若頭(14年前に死去)
経理担当社員
「撮影中は呉原というダーティな街に舞い降りた天使のような気持ちでいました」と続けた。出演オファーを受けたとき「原作がカッコいいのに、脚本になったとき、大上はなおさらハードな男になっていた。街でしょっちゅう痰を吐く天使なんですよ」と振り返った。
したヤクザが大好きだ。役所さんはそのにおいを色濃く出せる俳優。そういうこともあって、ヤクザではなく刑事ですが大上役をお願いした」と語った。
印象に残ったのは、ひとりの人間は、多重構造であり、セコい、暑苦しいという部分や、ユーモアと欠点を併せ持っている。そういう複雑で面白い人物をやらせてもらったという。
質疑応答では、インドネシアからきた役所広司の大ファンという女性は、日本語が流暢で「ハリウッドスターなどは、サイコパスなどの役のめり込みすぎて、撮影後も、それを引きずる役者もいるようだが、役所さんはどうか」という質問があった。
これに対して役所は「僕の場合『撮影が今日でおしまい!』とクランクアップとなったら、その人物はどこかにいってしまいますね」とあっさり回答。「でも妻に聞くと、撮影中は『変なやつが帰ってきた』となるようです、と笑わせた。「ということは、撮影中は役の人物をどこかでつなぎとめているんだと思う」と語った。
松坂桃李のファンだという女性は、この映画を見るのが17回目というが「松坂さんとのシーンでは特にどのシーンが印象に残っているか」という質問。「バーのシーンの松坂くんとのシーンは、監督からワンカットの長回しのシーンといわれて、ワンカットの力は大きい」と振り返った。映画の最後のところで、役柄上必要な太った役所が出てくるが「数日間で太った」という。
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