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<span itemprop="headline">映画「嫌な女」(2016)吉田羊、木村佳乃主演。黒木瞳初監督。</span>



嫌な女」(2016年)を見た。
今年6月に公開されたが、10億円の製作費で、女優・黒木瞳が初監督デビューということで、公開前は話題になったが、全国52館で公開され、ネットなどによると評価は限りなく低い。公開されたことすら忘れ去られてしまいそうだが、吉田羊の映画初主演作ということでみた木村佳乃主演

ドラマ(NHK BSプレミアム、3月放送)では、黒木瞳が主演を演じ、黒木が光文社と原作者の桂に呼びかけ、映画化が決定。当初は黒木が出演する予定であったが、監督の選考に難航し自身が監督を務めることになった。

失敗作という先入観があったので、期待しなかった分、見どころが多く、予想以上に面白かった。とくに貴重面でやや堅物な弁護士(吉田羊)と従姉(いとこ)で、小さい頃から性格が真逆で、自分勝手なわがまま放題の詐欺師(木村佳乃)のエンドレスのバトルの演技は見ごたえがある。

・・・
石田徹子吉田羊は一流大学を卒業し、ストレートで司法試験に合格した優秀な弁護士だった。仕事に恵まれ、結婚し家庭も手に入れたが、なぜか心は満たされない。むしろ誰かと過ごすことで自分がより一人ぼっちだと感じるような、言いようのない孤独を抱えて生きていた。気が付けば、仕事はできるが温かみのない堅物弁護士になっていた。

ある嵐の日、長いこと疎遠だった徹子の従姉・小谷夏木村佳乃が弁護を頼みたいと訪ねてくる。徹子は昔からこの夏子が苦手だった。「人と同じなんて絶対に嫌!死んでも嫌!」が口癖の派手で目立ちたがり屋の女。その夏子が婚約破棄で慰謝料を請求されているという。

気乗りしないまま徹子は相手の男に会って話を聞くと、夏子が男名義のマンションを自分名義に変えさせようとしたが、それが叶わないとなった途端に婚約破棄を言いだしたらしい。

結婚詐欺パチンコ台の前でパチンコに興じながら携帯電話で、その時夏子は徹子にこう言い放った。「私が本気だったと言えばそれまでよ。心の中なんて誰にもバレないでしょ?」だった。

なんとか男に訴えを取り下げさせたが、夏子は弁護料も支払わずに徹子の前から姿を消してしまう。それ以来、徹子はプライベートでは離婚を切り出され、仕事では失敗続き、いつの間にか順風満帆だった人生もどこへやら・・・。



再び徹子の前に夏子が現れ、図々しくまたトラブルの処理を頼んでくるのだった。
今回の依頼はゴッホの絵画「ひまわり」を200万で売ったが、絵を売った男から贋作だから返金をして欲しいと訴えてきたという。やっぱり夏子は夏子だった。
 
次から次へとトラブルの種をまいては、徹子に後始末をさせていく夏子。
徹子も、ついにはキレる。「私はあんたの尻ぬぐいのために弁護士になったんじゃない!」と。


                    夏子(木村佳乃)に振り回される弁護士・徹子(吉田羊、左)。
・・・
女詐欺師・夏子を演じる木村佳乃は、手が付けられないほどの悪女、嫌な女。
しかし、相手の懐に飛び込み、相手を思いやる気持ちは深い。

その夏子から「アンタもだんだん嫌な女になってきたね」といわれる徹子(吉田羊)。タイトルの嫌な女とは、どちらのことなのか、両方なのか・・・?。
 
弁護士という職業も大変だ。
家を勝手に出て行った母親の弁護をする弁護士に対して、そこの息子から「弁護士って、お金になれば誰の弁護もするんだね」は強烈。弁護士事務所では、所長(ラサール石井)から、従姉が弁護の報酬を踏み倒していることに対して「仕事は報酬をいただいて初めて終わるんだ」と叱責され、徹子が立て替えるのだ。
 
一方では、堅物で、常に他人と距離を置く徹子の心境の変化(成長)を描く物語でもあったようだ。事務所のベテラン女性事務員のアドバイスや、夏子の存在が、今までに自分でも思わなかった他人への共感や思いやりを気づかせていたのだった。
 
夏子と関係を持ち、高額の絵を売りつけたチャラ男・太田古川雄大が、資産家の娘・神谷真里菜(佐々木希)がまさに結婚式を挙げている最中に、夏子は「ぶち壊してやる」と乗り込むが、会場には入れてもらえない。しかし、チャラ男をぎゃふんといわせたのは、ほかならぬ弁護士・徹子だった。

古田との面会で徹子は、夏子の訴訟関係で、古田の発言を撮影していたのだ。
その時の発言は、「オレ、いま結婚しようとしているの。資産家の令嬢で、”カネの成る木”を見つけたの。つきまとわないでくれれる」などが収められていた。

この映像が、結婚式で流されたのだ。
どうなったかは明らかだ。いくら花婿が弁解しようが、理解を得られるはずはなく、
花嫁(佐々木希)は、新郎に近づき、”股間ゲリ”をお見舞い(笑)。

ここで、夏子の演説が始まる。「とんでもない男と結婚する前に気付いてよかった。」
 
デジカメで撮影した「ビデオメッセージ」というのがカギとなっており、効果的に生かされた映画だった。それは、病院で、離婚して寂しく死んでいく前に、元妻にビデオ・メッセージを残す老人の言葉も感動的だった。できすぎといえばできすぎで、やや説教クサくないでもないが、元妻がこれを聞く機会もあり、印象的だ。

これほど、生の声で説得力があり、訴えるものは無い。
夏子は、病院の老人に対して毎日通い看護を続けていたのだ。
「これまでの人生で、最も楽しかったことベスト10は?」と聞くなどして・・・。
 
一般の評判などに関係なく、一見の価値ある映画だった。
吉田羊は、年齢非公開としているが、1974年2月3日生まれ(42歳)で、「HERO」(2014年)で一躍人気女優の仲間入り。「嫌な女」では、20代のような驚くべきキュートな表情を見せるシーンがある。年齢非公開の理由は、年齢によって役柄を限定されるのを嫌って、というのを読んだことがある。遅咲きだが、この2-3年で最もブレイクした女優の一人であることは間違いないようだ。
 
キャスト
· 石田徹子(敏腕弁護士) - 吉田羊
· 小谷夏子(女詐欺師) - 木村佳乃
· 磯崎賢(後輩弁護士) - 中村蒼
· 太田俊輔(夏子の詐欺事件関係者) - 古川雄大
· 神谷真里菜(俊輔の婚約者) - 佐々木希
· 橋本敬介(敬一郎の息子) - 袴田吉彦
· 敬介の妻 - 田中麗奈
· 近藤高明(敬一郎の隣床の入院患者) - 織本順吉
· 橋本敬一郎(夏子の内縁の夫) - 寺田農
· 萩原道哉(法律事務所 所長) - ラサール石井
· 大宅みゆき(法律事務所 事務) - 永島暎子
· 吉崎典子 - 高田敏江
· 坂口博之(徹子の元夫) - テット・ワダ
· 近藤高明 ‐ 織本順吉

黒木瞳(56)は、一時期は、CMなど1位となったことがあったが、風評では、扱いにくい女優として、このところ出演が激減。起死回生を狙った監督デビューということだったようだが、ふたを開けたら、酷評の嵐。映画は大赤字。踏んだり蹴ったりの状況のようだが、女優あるいは監督として再び脚光を浴びることはあるのか・・・。

この映画、最低、と一蹴するには惜しいほど”嫌な映画”ではなかった。


☆☆☆



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