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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「見知らぬ乗客」(1951)アルフレッド・ヒッチコック監督。

アルフレッド・ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」(原題:Strangers on a Train, 1951、日本公開1953)を見た。テレビでかつて見ていたような記憶がある。”交換殺人”をめぐるサスペンスだ。さすがヒッチコック、随所に見所がある。
 
”交換殺人”(映画では、Swap Murdersと言っていた)というのは、AとBという人間がお互いに接点、面識がないが、Aが殺したいと思う人間をBが、Bが殺したい人間をAがそれぞれ実行するというもので、万一事件が発覚しても、それぞれに動機がないことから、足がつかないという前提で行われる。
 
この映画では、交換殺人の話を持ちかけてきた人間が、先に殺人を実行してしまい、有無を言わせず、返礼殺人の実行を迫るのだが、どう考えても、相手は狂っているとして、断固として応じない。すると、あの手この手でさらに相手は脅して揺さぶりをかけてくるのだが・・・。
 
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マチュア・テニス選手として名の通っているガイ・ヘインズ(ファーリー・グレンジャー)は、ワシントンから故郷メトカルフへ離婚のため帰る途中、列車の中で不思議な男ブルーノ・アントニーロバート・ウォーカー)と知り合った。
 
           ”交換殺人”を持ちかけるブルーノ(右)
 
ブルーノは、ガイが本を読んでいるところに近づいて、ズケズケとした物言いで、最近妻ミリアムと不和になり、モートン上院議員レオ・G・キャロル)の娘アン(ルース・ローマン)と結婚したがっていることを知っていて、自分の父を殺してくれるならミリアムを殺してやろうと申し出たのである。
 
ガイはそんな交換殺人なんてと一笑に付したが、アントニーは遊園地の草原で本当にミリアムを殺してしまったのだ。ガイはアリバイが不充分なまま刑事の尾行を受けることになったが、そのスキを狙ってブルーノは自分はミリアムを殺したのに、ガイだけ手を汚さないでいい思いをさせるわけには行かないと、父親殺しをガイに迫るのだった。
 
ガイも、この事実を知ったアンも、心からブルーノに翻意を促したが、ブルーノはいよいよ狂的になって行き、ついにフォレスト・ヒルズのテニス試合当日、ブルーノは車中でガイからかすめたライターを現場に置いてくる計画を企てていることがわかった。
 
ガイは必死に試合をすすめ、敵に辛勝して尾行刑事をまき、ブルーノを遊園地に追った。2人はメリーゴーランド上で対決、あわてた刑事の一弾が係の男を倒したので、突然急速回転をはじめたメリーゴーランドの上の格闘は凄絶をきわめるものとなった。
 
つにい回転木馬は心棒から折れてみじんに崩け、ガイは外へ放り出されたが、ブルーノはあえなく下敷きとなって息絶えた。その手の中に握られていたライターによって、ガイの容疑が晴れたのだった(MovieWalker)。
 
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回転木馬(メリーゴーランド)が、事故により、高速で回転してしまい、一部の子供は超スピードに喜ぶが、大人は恐怖のどん底に。その回転木馬のステージ上の格闘は見応えがあった。
 
また、小道具の使い方も面白い。特に物語の上で重要な鍵となるライター
殺人犯人が、そのライターの持ち主に殺人を擦り付けるために、殺人現場のどこかに落とそうと企んでいたのだが、その前にうっかり下水溝にライターを落としてしまったから、焦る犯人。ライターを取り出せるのか、ハラハラさせる。その他、メガネ、ネクタイなども効果的に使われている。
 
浮気をした妻が、他人の子供を宿し、妻の方から離婚を切り出してきたのに、「気が変わった。女の心は変わるもの」などという妻に苛立つ夫は、さっさと離婚して、意中の女性と再婚を望んでいたのだが、その妻が、交換殺人を提案して来た男に殺されたのだったが、警察は当然嫌疑を夫に向けてきた・・・。無実を貼らせるのか。
 
後に「0011ナポレオンソロ」のボス役を演じるレオ・G・キャロルも出演している。ヒッチコックは、大きな弦楽器(コントラバス)を列車に乗せて乗車しようとする人物でワンカット登場している。
 
全米テニス・オープンは、ニューヨーク州クイーンズ区フォレストヒルズ(Forest Hills)で開催されていたが、映画の中で、主人公でアマのテニスプレヤーのガイ・ヘインズが度々口にしていたが「次にフォレスト・ヒルズがあるので・・・」は、字幕では「試合があるので」となっていた。フォレスト・ヒルズ=テニスというのは、ウインブルドン=テニスというように、地名だけで、誰でも知っているということが前提になっている。
 
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パトリシア・ハイスミスの原作をヒッチコックが映画化。音楽は、ディミトリー・ティオムキン(「真昼の決闘」「リオ・ブラボー」「アラモ」など)が担当。アカデミー賞では、撮影賞(白黒部門)にノミネートされた。
 
原題Strangers on a Trainを「見知らぬ乗客」としたのはまずまずだが、中華圏でのタイトルは「火車怪客」でまさにそのものずばり。「火車」というのは中国語で「列車」のこと。中国語で「汽車」=「自動車」のことなので、最初は戸惑った。街中で「汽車」を売っているはずはないのだが・・・笑。
 
  予告篇
 
ラスト・シーンは、ニヤッとさせられる。
電車で、見知らぬ人から声をかけられても相手にしないことだ。
 
☆☆☆