アルフレッド・ヒッチコック監督の「ロープ」(原題:Rope、1948)を見た。舞台劇の映画化ということで、舞台がマンハッタンの摩天楼(高層ビル群)を見下ろすアパートの一室の中だけというワン・シチュエーション映画。
当時のカメラは1回の撮影が10分しか撮れないので全編ワンショットにするために10分ごとに黒味切替えとなっている。背中などにカメラが回り、暗くなったところでつなげるといった実験映画と言われている。
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大きな窓からマンハッタンの摩天楼が一目で見渡せるニューヨークのあるアパートの一室で事件は起こる。フィリップ・モーガン(ファーリー・グレンジャー)とブラントン・ショー(ジョン・ドール)という大学を出たばかりの青年2人が、同級生だったデイビットをロープで絞め殺して、死体をイタリア製チェスト(衣装箱)に入れたのだった。
動機はとくになく、ただ自分たちがずば抜けて人より秀れていることを試したかったのだ。2人はもっとスリルを味わうために被害者の父ケントリー(サー・セドリック・ハードウィック)、恋人ジャネット・ウォーカー(ジョアン・チャンドラー)、被害者の恋仇だったケネス・ローレンス(ダグラス・ディック)、伯母のアトウォーター夫人(コンスタンス・コリア)、青年たちの先生だった大学教授ルパート・カデル(ジェームズ・スチュアート)を招いてパーティを催す。
死体入りの衣装箱の上にごちそうを並べて皆に食べさせたり、殺人に使ったロープで数冊の本を縛って父親に贈るなど、腹の中で優越感を味わっていた。
時間が経つにつれて、フィリップは犯した罪の恐ろしさに次第に冷静さを失っていくが、ブランドンは鋼鉄のような神経の持ち主。2人の異常さに感づいたルパートは、帰りがけにデイビッドの帽子を見つけて、「デイヴィッドがいた」ことを確信し、一旦は外に出るが、煙草入れを忘れたと電話してから、再び部屋を訪れたのだが・・・。
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チェストの中に入っている死体がいつ発見されるかというサスペンスはある。
教授のルパート(J・スチュアート)が奇妙な状況を察知し、探偵のような役回りを果たしている。チェストを開けそうになったりするシーンでは、ハラハラさせられる。全体のストーリー的に説得力や合理性がなく、共感できるところがないのが残念。
会話の中で、なんとかという映画は良かったとか、ジェームス・メイスン、ケーリー・グラント、エロール・フリンがかっこいいといった当時の著名俳優の名前がぽんぽん飛び出していたのはサービスか。映画内の時間進行と現実の時が同時に進行していくという実験もされているようだ。
ヒッチコック作品としては、「名作」と言われることは少ないようだが、後の作品「裏窓」(1954)の布石になっているというのは評価されているようだ。
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