fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ウンベルトD」(1952)ヴィットリオ・デ・シーカ監督作品。

 
ヴィットリオ・デ・シーカ監督の「ウンベルトD」(1952)を見た。
ウンベルト・Dというのは、イタリアで公共事業省の公務員を30年以上勤めて退職した、現在70歳になるウンベルト・Dフェラーリのこと。
 
ウンベルトは、アパートに愛犬フランクとともに暮らす年金生活者。
生活の頼みの綱であるその年金(恩給)が、不景気にともなって減少し、老人達の生活を逼迫していくという、現代の日本でも実に現実感のある話である。
 
映画の冒頭、帽子をかぶった老人たちが、「年金を上げろ!」「大臣に会わせろ」というデモ行進がある。警察は「ジイさんたち早くいけよ!」「家に帰れ」と制止する。
 
ウンベルトも生活が困窮し、家賃を滞納している。
このアパートの家主の女は意地の悪い女で、その古アパートは、売春宿と化しており、難癖をつけてウンベルトを追い出して、金持ちの男と婚姻し、ウンベルトの部屋を改造して広い居間にしようと企てているのだ。
 
ついに滞納の支払い期限が来て、アパートを追い出されたウンベルト。
街中で、昔の同僚やかつての上司などに声をかけるが、プライドもあって、お金をかしてほしいとは言えず、また、知り合いたちも、ウンベルトの困っている様子を知りながらも助けようという気は全くなく、通り一遍のあいさつで去っていってしまう。
 
物乞いをするにもプライドが許さず、ついに決意したウンベルトは、最愛の犬を抱いて線路に立った。迫り来る列車。彼の運命はいかに・・・。
 
・・・
ウンベルトが飼っている子犬は、
妻も亡くなったいまでは、孤独を癒す唯一のパートナー。経済的に窮地に追い込まれた老人には、もはや生きる希望も失い、死を考えはじめる。
 
そこで唯一の心残りは、愛犬のブチ犬フランクで、自分の亡き後に面倒をみてくれる場所を探したりもするが、全くアテがみつからない。子犬フランクを知っている小さな女の子に、もらってくれないかと頼むと少女は喜ぶが母親の反対でそれも叶わず。
 
 
犬を一時預かりするところを探したが、そこも、あれこれ費用の注文をつけるので「預けない」と断ると、「金にならない長話は迷惑だ」というがめつい夫婦だった。
 
・・・
愛犬フランクは、主人のウンベルトから「立で!」と言われれば、直立不動で立つ。
あるとき、自分では物乞いができないので、フランクの口に帽子を噛ませ、フランクに立たせたのだが、まるで、”忠犬ハチ公” そのもの。泣かせる(笑)。
 
        主人の命令とあらば、と代わりに物乞いをさせられるフランク。
 
その光景を知り合いの老人に見られ、「賢いね」と言われると、「遊んでいただけです」と口を濁すウンベルトだった。
 
ヴィットリオ・デ・シーカと言えば「自転車泥棒」や「靴みがき」がまず浮かぶが、「ウンベルトD」も代表作の1本であることは間違いないだろう。
 
 
アパートの三階の窓から、表の通りの道路のレンガを見つめるウンベルト。
飛び降りることを一瞬考えたのだが、残っている愛犬のことを思うと、思いとどまった。
       愛犬とともに列車に飛び込もうと線路に立つウンベルトだったが・・・。
 
最後には、愛犬に救われることになる。
ウンベルトは残り少い人生をこの愛犬とともにと生きて行こうと決心する。
この愛犬は、賢く、主人が死のうとしていたことを分かっていたのだ。
 
ウンベルトの経済苦と孤独感が描かれ、時代的にも暗い印象だが、最後にはわずかな希望が見えたエンディングで救われる。
 
 
このフランクという子犬、なんとなく映画「アーティスト」のアギーに似ている。
 
☆☆☆☆
 
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
 「にほん映画村」に参加しています:ついでにクリック・ポン♪。