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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「わが母の記」(2012)</span>


わが母の記」予告編(松竹配給)
 
わが母の記」(2012)を見た。
自伝的小説が原作であり、ストーリーは一言でいえば「母に捨てられたという想いを抱きながら生きてきた小説家(井上靖)が、老いた母親との断絶を埋めようとする姿を描く」ということだが、最後に意外な事実が明らかになる!のである。
 
井上靖(主人公・伊上洪作)の母、自身の兄弟、3人の娘、女中、編集者などが織りなすドラマが美しい自然(海、山)を背景に描かれて感動を呼ぶ。

とくに、多感な高校3年生の三女・琴子を演じている宮崎あおいが、圧巻!
実年齢26歳宮崎あおいが高校生を演じても自然で、美貌を備えて成長して大人になっていく十数年間の変化も見所だった。
 




 
日常のことについて、ペンを走らす父・洪作に対して琴子は、「お父さんは、家族のことも、小説の材料くらいとしか考えていないのね!」というのも強烈だが、洪作も家族に対しては、口調は厳しかった。その辺りは、洪作が気骨のある明治生まれ(明治40年)ということにもあるのか。
 
原作は、井上靖(1907~1991)の自伝的小説「わが母の記 花の下・月の光・雪の面」。「わが母の記」で描かれる時代は、1959年(昭和34年)から1973年(昭和48年)に実母・三重が亡くなるまでの十数年間が描かれている。

井上靖自身がモデルの主人公・伊上洪作50代~60代なかばまでということになる。井上靖=伊上洪作として登場する自伝的作品には、幼少、青年期などを描いた作品として、「しろばんば」「夏草冬涛」「北の海」などがある。井上靖の自宅も撮影に使われたようで、ぎっしり書物が並ぶ書斎、応接間など立派。
 
こうした自伝的小説を、一貫して読めば、井上靖の人生そのものと、関わってきた家族や周りの人物などある程度知ることができて興味深い。
 
この映画の大きな魅力の一つは、豪華キャストにある。
 
日本のトップ俳優である役所広司、演技派女優としてNo.1のベテラン女優・樹木希林、20代の若手女優では圧倒的な存在感のある宮崎あおい、そのほかミムラ南果歩キムラ緑子菊池亜希子など脇役で活躍中の女優が多数出演している。

洪作の妻役の赤間麻里子は、初めて見たと思ったら、映画初出演。
木村多江と大学のクラスメートとか。無名塾出身という点では、天下の役所広司の後輩に当たる。
 
”演技合戦”が見どころなんていう陳腐な表現しかできないが、これから見る人は、
たとえば、志賀子(伊上家の長女)(キムラ緑子)の電話のシーンなどに注目!。会話の中に「ほら、”東京なんとか”っていう映画があったでしょう?(=「東京物語」のこと)と話し方までが、少々ぶっきらぼうで、杉村春子のような振る舞いが唸らせる。電話しながら、片方の手では、足のかゆいところをぼりぼり掻いている・・など(笑)。
脚本にどこまで書いてあるのかわからないが「あるある」のすばらしい?演技なのだ。
 
母・三重の樹木希林などは、”ボケ”が始まったおばあちゃんを見事に演じ、日本アカデミー賞の主演か助演かどちらのカテゴリーになるか微妙だが、早々と「当確」のランプを打っても番狂わせはないほどの”鉄板”の演技だ。三女の宮崎あおいも、ノミネート間違いなしだろう。
 

 
この映画の役所広司ですか(笑)。
日本の現在の俳優では、格が違い過ぎるNo.1俳優だ。
 
蛇足だが、先日、土曜朝のトーク番組「サワコの朝」で、ゲストの役所広司にインタビューする阿川佐和子が、「役所さんは、大作などで主演することが多いでが、”また役所か”とまったく思わせない俳優さんですよね」といったニュアンスのことを語っていた。まさにそうなのだ。固定されたイメージがない。役所自身も、白紙の状態で、役に取り組むので、どの映画も、別の役所広司なのだ。
 
脱線したが、文豪と言われた井上靖ともなると、お抱えの運転手や女中がいたり、軽井沢に別荘があったり(かつては、軽井沢に別荘があるというのは社会的なステータスの象徴でもあった)、生活面では、かなり恵まれている環境だったようだ。

一人のおばあちゃん(井上靖の母・三重)の面倒を見るのに、数人がかりでてんやわんやの大騒ぎ。
 

↑洪作の三人の娘たち
 
海辺、山村の風景など、自然が見事に美しく描かれていることでも目を見張る。
次女がハワイにわたることになるが、豪華客船まで登場する。さまざまな人間模様が描かれている「わが母の記」だった。
 
今年の邦画では、「Always 三丁目の夕日 '64」と並んで、邦画マイベスト10の中に入ることは間違いない作品だ。
 
主な登場人物:
伊上洪作(伊上家の長男、作家) - 役所広司
八重(伊上家の母) - 樹木希林
琴子(洪作の三女) - 宮あおい
桑子(次女、自称古美術商) - 南果歩
志賀子(伊上家の長女) - キムラ緑子
郁子(洪作の長女) - ミムラ
紀子(洪作の次女) - 菊池亜希子
瀬川(編集者) - 三浦貴大
貞代(女中) - 真野恵里菜
美津(洪作の妻) - 赤間麻里子
隼人(伊上家の父) - 三國連太郎
 
脚本・監督 - 原田眞人
 
☆☆☆☆
 
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