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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「秋刀魚の味」(1962)・・・小津監督の遺作。


秋刀魚の味」予告編
  
小津安二郎監督の名作であり、遺作となった「秋刀魚の味」(1962)は、人を傷つけない「ウソ」なども登場し、ユーモアもたっぷりの人情ドラマだ。山田洋次監督が選ぶ邦画名作100本の中の1本で、BSで放送されていた。
 
婚期を迎えた美しい娘・路子(岩下志麻)と暮らす、妻に先立たれた初老のサラリーマン・平山周平(笠智衆)の姿などをコメディタッチで描いている。
 

小津監督の代表作は「東京物語」(1953)だが、「秋刀魚の味」も、秋刀魚(さんま)こそ一切登場しないが、ほろ苦い秋刀魚の味に見立てた、娘を嫁にやる父親のさびしい心情などが、後ろ姿で描かれている。
 
路子が、思いを寄せていた兄の会社の務める三浦(吉田輝夫)が、見合いで結婚するということを知り、自分の部屋の机の前で、巻き尺を何度も指に巻きつけるシーンがあるが、路子の心情をよくあらわしている。(このシーンについて、岩下志麻は、細かい監督の注文もあり、80回くらい撮り直したとのちに語っている。)
 
三浦は、同僚である路子の兄・幸一から、路子は今は、結婚するつもりなどないといわれていたことから、同じ会社の田口と将来を約束してしまった矢先、路子が自分に好意を寄せているということを後から知り、「もっと早く言ってくれれば・・・」と残念がるのだった。
 
面白いセリフも随所にある。
周平が、息子の和夫(三上真一郎)に、「姉さんには(結婚をすすめても、断っているのは)誰かいい人でもいるのかね」ときくと、和夫は「いるだろう。俺だっているよ。」というのがおかしい。「小さいんだ。太ってんだ。かわいいんだ。バスの車掌だよ。」
 

中学を卒業して40年という周平は、旧友たちと、当時のあだ名が”ひょうたん”とい佐久間先生(東野栄治郎)を招いて同窓会をひらき、酒の席を設けるが、このひょうたん先生の大酒を飲んだ後、醜態をさらす姿に「ああはなりたくないね」というのが、一同の意見だった。ひょうたんがふと漏らす一言「失敗した」が、周平たちは、気にかかる。ひょうたんによると「妻を亡くし、娘を便利に使ってきたことを後悔している」というものだった。娘・伴子(杉村春子)は、父親の世話をしているために、結婚も諦めたようなのだ。
 
周平の友人たちが、周平に「お前も、早く娘さんを嫁にやらないと、ああいう風になってしまうぞ」と意見を言うのだった。そこで、周平は、路子に、結婚する気があるのか、聞くのだが、「私がいなくなったら、お父さんや弟は、どうなるのか」と心配していた。「自分たちでなんとかなる」と周平。
 
結局は見合いをして、嫁ぐことになり、父親の周平のイスに座った、さびしそうな後ろ姿と、ひょうたんが言っていた「(人間は)ひとりぼっちだ」という言葉を反芻する姿とともに、余韻のあるエンディングだった。
 

居酒屋のテレビ画面には、野球中継の放送があり、「バッターは、桑田。ピッチャーは、バッキー・・・」などという映像で、昭和30年代半ばの世相を映し出していた。駅のホームのシーンで、看板に「せんぞくいけ(洗足池)」とあった。
東京・大田区の洗足池。fpdが大学を出て、初めて下宿をしたのが洗足池。洗足池、久が原などその界隈に10年間住んでいたのだ。
 
幸一の妻・秋子を演じた岡田茉莉子のシロクロはっきりした物言いも、いい。
幸一が、父親に「頼みがある。冷蔵庫を買うから、5万円貸してくれ」と借金を申し出たのだが、実は同僚を経由して使用済みのゴルフセットを買わないかと言われていて、これを購入したいために、上乗せして、借りたのだった。
 
秋子は、幸一が借りてきたゴルフセットをみて「そんなのいらないから、返しなさい」と強い口調。
 
あんた程度のサラリーマンが、ゴルフなんて贅沢よ。よしちゃえ、よしちゃえ」というのがおかしい。秋子が反対しているのを知った幸一の会社の三浦がやってきて「奥さん、僕だったら買うな。いいですよ」「マクレガー(有名なゴルフ・ブランド)だからな。」というと、「そんなにいいなら自分で買えば」と秋子。「いや、僕はお金がないから。そうだ月賦でもいいですよ。2,000円で10回」。
 
秋子が、ゴルフセットを未練がましく眺めている幸一に「早く自分の好きなものを買えるような身分になればいいじゃないの」。
 
それに対して黙って、聞えないふりの夫。
 
「ふーん、ノー・コメントか」。50年前の映画に、ノー・コメントなどという言葉が出てくるとは(笑)。
 
結局、秋子が折れて、三浦に2,000円を渡す。「あと、9回ね。覚えておいてよ」と、しっかり念を押すところなど、いずこも?男より女の方が、金銭感覚がシビアで、しっかりしているな、と思った?(爆)。「私も、ワニのハンドバッグを買っちゃうから。高いのよ~」。

 岩下志麻によると、小津監督は、女優に対して、演技をしないように、そのまま自然なのがいいんだから、と演技の注文はしなかったという。
  
出演:
平山路子:岩下志麻
平山周平:笠智衆
平山幸一:佐田啓二
平山秋子:岡田茉莉子
平山和夫:三上真一郎
佐久間清太郎:東野英治郎
佐久間伴子:杉村春子
河合秀三(旧友):中村伸郎
堀江晋(旧友):北竜二
三浦豊:吉田輝雄
田口房子:牧紀子
河合のぶ子:三宅邦子
坂本芳太郎:加東大介
BARのマダム:岸田今日子
「若松」の女将:高橋とよ
渡辺(同窓生):織田政雄
菅井(同窓生):菅原通済
 
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