「天国と地獄」
仲代達矢は、日本の演劇界の重鎮で、今や俳優の宝。77歳だが現役で、これからも劇場で見たいものです。
仲代達矢は、最近TVで、役者人生について語っていた。やはり体力勝負だという。映画などでは「若い人が自分の背中、演技を見ているから、一瞬たりとも、気が抜けない」と語る。自らの体で示して後輩に伝えていきたいという信念がにじみ出ていた。次代へのバトン渡しに全精力を注いでいるようだ。
仲代をはじめて知ったのは、TVのCMだった。シオノギの「ポポンS」のCMで、実直そうなサラリーマンで、低音で「ポポンS」を宣伝していた(笑)。ギョロ目で、いかつい風貌。
翌年「椿三十郎」でも黒沢に続けて起用され、今度は剛直な武士を演じ、仲代の風格と演技力を買った監督に応えた。1963年にも黒澤作品「天国と地獄」で誘拐事件捜査を指揮する警部役を演じ、犯人に対する異常な執念に個性を発揮した。
1975年に、恭子夫人と共に「無名塾」を創立、後進の養成を開始。1979年には俳優座を退団。以後は無名塾公演で、脚本・演出を妻に任せ、自分が出演する形で舞台活動を継続。山本薩夫監督の「不毛地帯」(1976)は、時のロッキード事件と極似、話題となった。
主な出演映画:(★は黒澤作品)
★『七人の侍』(1954年)…通りすがりの浪人 役 ☆☆☆☆☆(邦画では唯一☆5つ)
『火の鳥』(1956年)
『サザエさんシリーズ』(1956年 - 1961年)
『大番シリーズ』(1957年 - 1958年)
『炎上』(1958年)
『裸の太陽』(1958年)
『鍵』(カンヌ国際映画祭審査員賞、ゴールデングローブ賞外国語映画賞受賞作品。1959年) ☆☆☆
『人間の條件』 第一部 - 第六部(1959年 - 1961年) ☆☆☆
『野獣死すべし』(1959年)☆☆☆
『女が階段を上る時』(1960年)
『みな殺しの歌より 拳銃よさらば!』(1960年)
★『用心棒』(ヴェネチア国際映画祭主演男優賞、アカデミー賞衣装デザイン賞ノミネート。1961年) ☆☆☆☆
★『椿三十郎』(1962年) ☆☆☆☆
『切腹』(1962年)
★『天国と地獄』(1963年)☆☆☆☆
『五十万人の遺産』(1963年)
『東海道四谷怪談』(1965年)
『大菩薩峠』(1966年)
『他人の顔』(1966年)
『殺人狂時代』(1967年)
『上意討ち 拝領妻始末』(ヴェネチア国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作品。1967年) ☆☆☆☆
『旅路』(1967年)
『日本のいちばん長い日』(1967年)…ナレーター ☆☆☆
『肉弾』(1968年)…ナレーター
『連合艦隊司令長官 山本五十六』(1968年)…ナレーター
『野獣暁に死す』(1968年、イタリア映画)
『人斬り』(1969年)
『日本海大海戦』(1969年)
『地獄変』(1969年)
『いのちぼうにふろう』(1971年)☆☆☆
『激動の昭和史 沖縄決戦』(1971年)
『人間革命』(1973年)☆☆☆☆
『哀しみのベラドンナ』(1973年)
『華麗なる一族』(1974年)☆☆☆☆
『青春の門』(1975年)☆☆☆
『吾輩は猫である』(1975年)
『金環蝕』(1975年)☆☆☆
『吶喊』(1975年)
『不毛地帯』(1976年)☆☆☆☆
『女王蜂』(1978年) ☆☆☆
『雲霧仁左衛門』(1978年) ☆☆☆
『火の鳥』(1978年)
『ブルークリスマス』(1978年)
『二百三高地』(1980年)☆☆☆
『鬼龍院花子の生涯』(1982年)☆☆☆
『宇宙戦艦ヤマト 完結編』(1983年)…ナレーター
『食卓のない家』(1985年)
『道』(1986年)
『熱海殺人事件』(1986年)
『ハチ公物語』(1987年)
『優駿 ORACION』(1988年)
『アナザー・ウェイ ―D機関情報―』(1988年)
『戦場にかける橋2』(1989年、イギリス映画)
『226』(1989年)
『フィレンツェの風に抱かれて』(1991年)
『豪姫』(1992年)
『遠き落日』(1992年)
『妖獣都市 香港魔界編』(1992年、香港映画)
『子連れ狼 その小さき手に』(1993年)
『月光の夏』(1993年)
『欽ちゃんのシネマジャック 〜蛍の光〜』
『EAST MEETS WEST』(1995年)
『宮澤賢治 -その愛-』(1996年)
『金融腐食列島 呪縛』(1999年)☆☆☆
『雨あがる』(2000年) ☆☆☆
『助太刀屋助六』(2001年)
『白い犬とワルツを』(2002年)
『陽はまた昇る』(2002年)☆☆☆
『阿修羅のごとく』(2003年)
『男たちの大和/YAMATO』(2005年)
『犬神家の一族』(2006年)☆☆☆
『引き出しの中のラブレター』(2009年)
『春との旅』(2010年)
『座頭市』(2010年)★★
『果たし状」(2015)☆☆☆☆
仲代出演作品の個人的ベスト10を選ぶと・・。
①「天国と地獄」・・・警部役は鬼気迫り、社長役の三船に同情し、「鬼になっても犯人を捜し出せ」のセリフは迫ってきた(爆)。
③「椿三十郎」・・・三船・三十郎の好敵手で、あの形相は迫力満点。
⑤「華麗なる一族」・・・財閥の御曹司役(TVでは、キムタクだったが、スケールが違いすぎ?)
⑥「影武者」・・・舞台役者の演技が光った。
⑦「用心棒」・・・ニヒルでニヤついた侍が、銃を持って、刀の三船の好敵手を演じた。
⑧「上意討ち」・・・映画そのものが、痛快。
⑨「金環触」・・・どす黒い政財界の陰謀など。官房長官を貫禄で演じた。