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映画「BAD LANDS バッド・ランズ」(2023)を見る。安藤サクラ主演X原田眞人監督最新作。

BAD LANDS バッド・ランズ」(2023)を見る。MOVIXさいたまにて。監督は「クライマーズ・ハイ」「わが母の記」「日本のいちばん長い日」で3度日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞している原田眞人

上質でカッコいいクライム・サスペンス・エンタテイメント映画の誕生。ダークヒーロー(ヒロイン)ともいうべき安藤サクラが何といっても目が離せないほど、カッコいい。

映画のテーマが「特殊詐欺」。オレオレ詐欺の特徴も複数の連携により巧妙化している。ターゲットは金持ちの高齢者に変わりはないが、詐欺グループには、老人が多く住むアパート、マンションの住人の名簿があり、ターゲットはA、B、Cマイナス、などランク付けされている。

組織化された特殊詐欺グループの指示役から下見、受け子の存在などの手口が明かされると同時に、警察との攻防がスリリングで、導入部からワクワクさせられる。

出演する俳優陣が豪華で、日本を代表する女優の一人、安藤サクラに加えて「燃えよ剣」に続いて原田作品に出演する山田涼介のW主演で詐欺グループのバディを演じる。

そのほか、生瀬勝久、宇崎竜童、天童よしみ江口のりこなどがわきを固めている。安藤サクラ江口のりこは、雰囲気が似ているが直接のからみはない。

前作「ヘルドッグス」で主演を演じた岡田准一がワンシーンで登場するなどあっと言わせるほど贅沢な布陣となっている。

社会の最底辺ともいうべきドヤ街の舞台セットもすばらしい。機関銃のように繰り出す大阪弁による会話やスピーディーな展開もいい。

銀行から大金をおろして、受け渡し場所に向かう女性の後を数人の詐欺チームが追い、受け子たちに指示を出すコーチ役(通称三塁コーチと呼ばれる)のネリ(安藤サクラ)の指の動きで、ゴーサインか中止の合図が出る。

警察が現場を押さえようと目を光らせていることを知ったネリが中止と合図すると、撤退、中止となる。警察の防犯カメラのチェックも厳しい。

銀行内のほか、通りなどの主要ポイントに同一人物、車などがあったことなどをくまなく監視して、詐欺グループを追う。

映画が始まって15分ほどして、映画のタイトルが初めて登場する。このあたりもインパクトがある。

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舞台は大阪・西成。特殊詐欺チームに身を置く女性ネリ(安藤サクラ)の前に、出所した異父弟のジョー(山田涼介)が戻って来る。

チームの元締めである名簿屋に、弟を雇ってほしいと頼み込むネリ。しかし、大胆不敵なことを思いつき、実行するジョーは、サイコパスで、その暴走によってネリの人生は揺さぶられ、やがて決断の時がやって来る。

ネリの父親が明かされたりといった親子の葛藤や、血のつながらない姉と弟の兄弟愛、底辺で暮らす仲間との信頼といったドラマが織り込まれて重厚で、情報も多いため、1度ならず、二度見たくなる映画ではある。

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特殊詐欺の舞台裏を描いてタイムリーだ。きょう(5日)の夕方のニュースで、今年1月~8月までの特殊詐欺の被害額は52億円という数字が紹介されていた。

映画の中でも、2億円、3億円というキャッシュをどのように海外に持ち出すかというのがあった。裏賭博を操る金髪女性の林田は、暗号資産であるビットコインにして、アジアなどの海外で現金化できると提案する。手数料の交渉などにもたけているネリと折り合いが成立。

山田涼介の狂ったはじけっぷりも見どころ。賭博で大負けし、裏でネリが保証人にされたことで「トロ」(借金の隠語)が250万円に膨らむ。利子はトイチ(10日で1割)という闇金のお決まりの高利子(中にはトサン=10日で3割というのもある)。

曼荼羅(まんだら)”と呼ばれるベテランの元ヤクザを演じる宇崎竜童も全身刺青で、強烈な凄みがある。電池(寿命)が切れるのも近いとみて、お金には執着せず瞑想にふけることが多い。

 

裏賭博を仕切る金髪女性のサリngROCKという女優もインパクトがある。どこか和製シャロン・ストーンのよう。

「なめたらあかん」のCMの言葉も登場する天童よしみも、関西のおばちゃん感が良く出ている。  

大阪・西成の街並みは、滋賀県彦根にセットを組んで再現しているということだが、空気感が良く出ていてリアルだった。

BAD LANDS」というのは隠れ喫茶店のようなところの店の名前で、BAD LANDSの店主がNBAミネソタ・チームの大ファンというのも小ネタで登場している。

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主な登場人物:
■橋岡煉梨(ネリ):安藤サクラ
…受け子のリーダー格で、通称「三塁コーチ」。ターゲットの下見、オレオレ詐欺の受け子の差配などを担当。血のつながらない弟・穣(ジョー)がいる。ジョーとコンビを組んで、独居高齢者を訪ね、巧みにだます。
■矢代穣(ジョー):山田涼介
サイコパスで、刑務所から出所。姉とバディを組んで、詐欺に関わる。賭博で最初は大勝するが、最後は大負けし、限度まで借金がかさむ。
■高城政司:生瀬勝久
…表向きは「NPO法人理事長」だが、電話詐欺の標的リストを作る裏稼業を仕切る、通称「名簿屋」。実はネリの実父。特殊詐欺グループの黒幕。
■宇佐美:大場泰正
…教授と呼ばれ、安アパートに住む特殊詐欺の受け子の一人。
■佐竹:吉原光夫
大阪府警特殊詐欺合同特別捜査班の刑事
■佐竹の部下:田原靖子
…刑事の研修生で、射撃のオリンピック候補
■日野:江口のりこ
大阪府警特殊詐欺合同特別捜査班の班長
■胡屋賢人:渕上泰史
…投資家。ネリの元カレ。気に入った女性をそばに置くが、サディスティックな性格で、暴力を振るう。
■胡屋の側近:縄田カノン
…胡屋の指示で動く。      
■新井ママ:天童よしみ
…特殊詐欺の道具屋の親玉。
■林田:サリngROCK      
…金髪で裏賭場の帳付。クールで切れ者という印象。
曼荼羅(上松):宇崎竜童
…元ヤクザ。体中に刺青がある。電池(=寿命)が残り少ないことを自覚している。
■麻雀の客の一人:岡田准一
…ジョーに銃を突きつけられるが、言葉で諭し追い払う。
■残間:前田航基 
…ジョーのダチの一人     
■珈琲屋「BAD LANDS」のオーナー:鴨鈴女
NBAミネソタ・チーム(ミネソタ・ティンバーウルブズ)の大ファンで、店の中にはチームの関連グッズが一面に

※個人的には、邦画では、見た中では今年のNo.1映画。安藤サクラの賞獲りレース(日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など)に期待したい。

 

※松竹系シネコン「MOVIXさいたま」にて鑑賞(10月5日、1,300円)。

 

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