「嵐を呼ぶ男」（1957、日活）を見る。日本映画黄金時代を象徴する作品で石原裕次郎の代表作の1本。ジャズ界を舞台に、流しの若者がトップドラマーにのし上がっていく業界の裏側を描いている。あわせて、兄弟愛、親子の和解なども描く。
裕次郎がスティック片手に「おいらはドラマー～♪」と唄い出すシーンは有名。この主題歌は62万枚のヒットとなった。クレジットでは北原三枝が一番手。
北原三枝が演じたプロモーターは大手芸能事務所の”ナベプロ”（渡辺プロダクション）の名誉会長・渡邊美佐がモデル。映画は1966年（渡哲也）と1983年（近藤真彦）にリメイクされている。
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ジャズバンドのプロモーター福島美弥子（北原三枝）は、ある夜、音楽大学の学生・国分英次（青山恭二）から兄の国分正一（石原裕次郎）をドラマーとして売り込まれる。
人気ドラマーのチャーリー・桜田（笈田敏夫）が急に仕事を休んだため、美弥子は喧嘩して留置所に入っている正一の身元引受人になり、ステージに出す。
チャーリーが持永（安部徹）の事務所に移籍したため、美弥子は正一を自宅に住まわせ、兄の福島慎介（岡田眞澄）と新バンドでデビューさせる。
音楽評論家の左京徹（金子信雄）は正一に、美弥子との仲を取り持ってくれるなら正一を宣伝すると取引する。
左京（写真上）はテレビで正一を持ち上げ、正一とチャーリーのドラム対決公演を提案。だがその前日、正一は持永の子分と喧嘩し、左手を怪我してしまう。
翌日の公演では、チャーリーの演奏が優位であったが、正一は右手でドラムを叩きながら歌い、観客の喝采を浴びる。
ジャズミュージシャンとして売れっ子になった正一は、やがて美弥子と結ばれる。弟の英次も自作曲がリサイタルで演奏されることが決まる。
左京は約束を守るよう正一に迫る。正一は美弥子の元を去り、母・貞代（小夜福子）のアパートに戻るが、英次は大家の娘・島みどり（芦川いづみ）と婚約したと聞かされ、追い返される。
行き場を失った正一はダンサーのメリー・丘（白木マリ）の元に身を寄せるが、持永の逆鱗に触れ、子分たちに襲撃され、右手をつぶされる。
正一は行方をくらまし、英次のリサイタルの日を迎える。いきつけのバーでラジオから流れる英次の曲を聞いていた正一を美弥子たちは探し当てる。音楽活動に反対していた貞代もようやく正一を認め、母子は和解する。
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1957年のスポーツ・芸能各界の人気投票（王座）で、相撲は「若の海」（当時の横綱の初代若の花＋栃の海をかけ合わせ？笑）流行歌は「三池浩」（三橋美智也+守屋浩か）野球は「稲川哲二」（稲尾和久＋川上哲治か）にまじって、ジャズでは国分正一（石原裕次郎）が獲得した。
正一（石原裕次郎）の母は、正一が「ドラム」にうつつを抜かし、喧嘩っぽい性格であることから、冷たく当たる一方で次男の英次（青山恭二）ばかりを溺愛する。
英次が、正一の影響を受けて「オタマジャクシ」（音楽の符号）の世界に引きづりこまれるのを恐れていた。ところが、英次が指揮者として成功を収めた背景に、正一の陰の応援があったことをあとで知り、正一に謝罪し、親子が和解するめでたしめでたしとなるのだが、ストーリー的には、イマイチ。興行的には、3億円強（当時）を記録し、500万人以上が劇場に足を運んだという。
ドラマ―のライバルつぶしに、やくざの兄ちゃんたちが、相手をぼこぼこにして、ドラムが叩けないないように手を石で殴りつけるというのはひどすぎる。
映画の冒頭で、ロカビリーで名を馳せた平尾昌晃が歌っている。平尾の出演は、前年（1956年）にジャズ喫茶「テネシー」に出演していた際、ステージを見た渡辺プロの渡辺美佐と映画監督・井上梅次に見初められ出演した。
舞台の一部（ロケ）は五反田（品川区）。
■主な登場人物：
福島美弥子＝北原三枝
国分正一＝石原裕次郎
国分英次＝青山恭二
島みどり＝芦川いづみ
メリー・丘＝白木マリ
福島慎介＝岡田眞澄
左京徹＝金子信雄
国分貞代＝小夜福子
福島愛子＝高野由美
大熊教授＝汐見洋
持永＝安部徹
種田＝冬木京三
有馬時子＝天路圭子
健＝高品格
島善三＝山田禅二
マネージャー滝＝三島謙
バーテン天野＝山田周平
留置場の男＝フランキー堺（ノンクレジット）
