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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「恋人」(1951、新東宝)を見る。市川崑監督。池部良、久慈あさみ主演。

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恋人」(1951、新東宝)を見る。劇作家・梅田晴夫が書いたラジオドラマ「結婚の前夜」が原作で監督は市川崑。モノクロ、70分。久慈あさみ池部良主演。

結婚を翌日に控えた女性が幼なじみの男性を街へと誘い出し、独身最後の日に時を忘れて楽しく過ごすうち、友達だと思っていた2人は互いの本当の気持ちを知るというラブストーリー。

森繁久弥が、実名でナイトクラブのマネージャー役で出演。森繁久弥久慈あさみは後の「社長シリーズ」で27本共演することになる。

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田切京子(久慈あさみ)は25歳の独身女性。幼馴染の遠藤誠一池部良)という友だちがいる。誠一はカメラマンで、小田切家とは家族ぐるみの付き合いがある。

田切家は、外交官の父・恵介(千田是也)と母・節子(村瀬幸子)、そして京子の3人家族だ。父は仕事でイギリスで暮していたことがあり、イギリス風の生活習慣に馴れ親しんでおり、パイプを愛用している。一方、節子は着物が似合う女性。

京子は銀行員と婚約中だったが、いよいよ明日、式を挙げることとなり、小田切家はその準備に忙しい。しかし、京子はそんな周囲の雰囲気をよそに、独身時代最後の自由を楽しむため、誠一を誘って銀座に繰り出すことにする。

茶店や映画館、スケート、ダンスホールと2人は楽しむが、京子は、誠一との楽しい時間を過ごすうちに、結婚に迷いを感じるようになる。

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 スケートに行こうといいながら初心者だった京子(誠一は、スイスイ)。

誠一も京子を心から愛していたが、自分の気持ちをどうしても言い出せないまま、最後の夜は更けていく。京子もそんな誠一の気持ちを知り、帰りたがらない。結局、2人は終電にも乗り遅れてしまい。歩いて帰宅することとなる。

翌日、周囲の心配をよそに、結婚式は無事に終了する。誠一は結婚式の翌日に小田切家を訪問する。恵介と節子は快く誠一を迎え、ご馳走を振舞う。

恵介と節子は誠一と京子が相思相愛の仲であったことに気付き、愛し合っていても結ばれない男女交際を嘆きつつ、誠一の多幸を願い、この物語は終わる。

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京子は明日結婚式という前日に長年の友達・誠一を誘って映画を見て食事をするが「奥さんになってしまえば、もう友達でもいられない」と思って独身最後の日の区切りをつけたかったのか。いや、そうではなく、お互いに友情以上の気持ちがあるはずで、結婚式を取りやめにして、プロポーズを受けることを期待したようだ。

京子は、何度も結婚して不幸になるということを誠一に話していたからだ。誠一が思っていることを言いだせないでいるので、いらだちもあった。誠一に対して、「うわの空だ。いつもぼんやりしている」と批判も口にしていた。

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食事をして、映画を見て、スケートをして、ダンスホールで踊って、終電車に乗り遅れた2人。さあ、どうなる、というところが見どころだった(笑)。

「どこかに泊まるのは変かしら」と京子が言うと「変、変だ」と誠一。「別れたくなかったのは私だけ?」に返答をためらう誠一は「車を見つけてくる。ここで待っていて」とタクシーを探しに行く。

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駅の出口で待つ京子が左右を行ったり来たりするシーンは見どころだった。

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「きょう会ったのは、ぼくたちもしかして…」といいかける誠一に対して「何?言って」と迫る京子だったが、誠一の答えは「ぼくたちは友達だ」だった。誠一が煮え切らないので、歩いて帰るとその場を去っていく京子。

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二人で見た映画はロバート・テイラーヴィヴィアン・リー主演の「哀愁」(1940、日本公開1949年)。「兵役から帰還したら、また同じ場所で会おう」といった映画のシーンが2-3分続く。尺を稼ぎすぎ?(笑)。

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京子は「MGMの傑作の一つね。この頃の映画ってどうして本当のことばっかりなの。雲に乗って飛んだり、お馬が口を開いたりするような映画が見てみたい。お嫁に行っておばあさんになって意地悪になる。そんな人はどこにでもいるわ」という。

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すると誠一は「君のことを映画にしたらいい」。「どうして?」と京子。「子供のくせに子供でない。良家の娘のくせにアバズレでさ」。「あたし、25よ。立派な大人よ。なにさ、あんた長男のくせに。わたしは明日から”奥様”よ。一人前よ。あんたとは違うのよ」「奥様か」と誠一。

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京子の両親は、誠一が京子を好きなことは知っていて、京子の父親によれば、なかなか想いを伝えることができない人間もいる。それをずっと心に閉まっておく生き方もあると話している。

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■主な登場人物:

池部良遠藤誠一):新聞社のカメラマン

久慈あさみ(小田切京子):誠一の幼友達。銀行員との結婚を控えている。

千田是也(小田切恵介):京子の父。

村瀬幸子(小田切節子):京子の母。

北林谷栄(佐伯さん):家政婦

森繁久彌ダンスホールのマネージャー役、実名で出演。)

斎田愛子ダンスホールの歌手役、実名で出演。)

伊藤雄之助(クリーニング店員)

小高まさる

新谷實

鈴木俊子

武村新

横尾泥海男

若月輝夫