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Netflix配信映画「アイリッシュマン」(原題:The Irishman、2019)を見る。

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Netflix配信映画「アイリッシュマン」(原題:The Irishman、2019)を見た。マーティン・スコセッシ監督の3時間半という大作。スコセッシ監督の集大成のような作品。出演は、ロバート・デ・ニーロジョー・ペシハーヴェイ・カイテルといったスコセッシ監督の常連に加えて、アメリ労働組合の大物ボス役でアル・パチーノが重要な役を演じている。

ジョー・ペシは、ラッセル・バッファリーノという大物の役だが、特殊メイク技術を使っての顔がクシャクシャで皺だらけの老人メイクは驚異的。「グッド・フェローズ」「カジノ」などでは、4文字言葉を早口でまくし立ててキレる役が多かったが、この映画では、どちらかといえば物静かでどっしりと構えた大物ぶりを見せる。「見かけはそうでもないが、全ての道は”ラッセル”に通じる」と言われる程の実力者だ。アカデミー賞助演男優賞の最有力候補になりそう。

ロバート・デ・ニーロが演じるトラック運転手のフランク・シーランは、若い時もデ・ニーロ自身が演じているが、これは、いわゆる「デジタルディエイジング(de-aging)」技術により、全く違和感がなく実在感があった。

アル・パチーノが演じる”ジミー・ホッファ”は、アメリカの労働組合指導者として絶大な人気を誇っていた人物。相当に短気で切れやすく、言葉は乱暴だが、労働者層にとってまさに神的な存在。映画の中では、1950年代だったらエルビス・プレスリー、60年代だったらビートルズ並みであり、パットン将軍並みだと言うセリフも聞こえた。ただ時間に対しては厳しく、一切妥協はしない。約束などで、10分の遅れまではギリギリ許すがそれ以上の遅れは1秒たりとも許さないのだ。

 

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映画は、そのカリスマ指導者が忽然と姿を消し、発見されなかった謎について、一つの説に基づいて映像化。原作はチャールズ・ブラントが2004年に発表したノンフィクション作品「I Heard You Paint Houses」。この文字が画面に大きく現れるシーンがある。日本語では「聞いたぞ お前が家でペンキを塗った」。 

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映画は、”アイリッシュマン”であるフランク・シーラン(ロバート・デ・ニーロ)が晩年、老人ホームで独りで過去を語るスタイルで始まる。若いフランクが、偶然のラッセルとの出会いから、ギャングの世界でのし上がっていく姿が大きな柱となっている。

また、マフィアとケネディ大統領家族とのコネクション、キューバカストロなどリアルな歴史的な背景を当時の実写フィルムを含めて描いた骨太なドラマとなっている。マフィアの登場人物が多数登場するが、何年何月に死亡(殺される)などが、逐一字幕に登場するのがリアル。フランクは生き残って、それまで父親らしい事を怠って来たことを娘たちに詫びようとするのだが、娘たちは最終的に許すことはなかったようだ。

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トラック運転手だったフランク・シーランがつぶやく。「ペンキ屋はペンキ屋が塗るものだと思っていた。俺はトラック運転手の千人のうちの一人だ。その俺がペンキを塗った」と。「ペンキ塗り=殺人」。銃でいきなり相手を撃ち殺すシーンなど呆気にとられるほど簡単で、銃は川底に沈める。

ロバート・デ・ニーロアル・パチーノジョー・ペシの円熟した演技を見るのがこの映画の大きな見所だ。カメラがグイグイと進んで、ワンカットで移動して映していくシーンも見ごたえがある。1960年代のアメリカの雰囲気が、当時の車やテレビ、店の風景などを通じて再現されている。