
「万引き家族」(2018)を見た。MOVIXさいたまにて。
「三度目の殺人」「海街diary」の是枝裕和(これえだ・ひろかず)監督の最新作。6月8日に公開がスタートしたが、公開週末3日間で興行収入5億7800万円を記録し、今年公開の実写邦画でナンバーワンとなるロケットスタートを切った作品。
「第71回カンヌ国際映画祭」でパルムドール(最高賞)を受賞したことでも話題となり、1ヶ月後の7月9日の時点で、興行収入は34億円を記録し、是枝作品では過去最高の興行収入を記録した「そして父になる」(主演・福山雅治、32億円)を抜き、トップに躍り出た。
順位 | 興行収入 | タイトル | 公開年 | 配給会社 |
1位 | 34.0億 | 万引き家族 | 2018 | ギャガ |
2位 | 32.0億 | そして父になる | 2013 | ギャガ |
3位 | 16.8億 | 海街Diary | 2015 | 東宝、ギャガ |
4位 | 14.6億 | 三度目の殺人 | 2017 | 東宝、ギャガ |
5位 | 9.2億 | 誰も知らない | 2004 | シネカノン |
6位 | 7.2億 | 海よりもまだ深く | 2016 | ギャガ |
7位 | 3.1億 | 花よりもなほ | 2006 | 松竹 |
8位 | 2.2億 | 奇跡 | 2011 | ギャガ |
※2位~8位は、2018年3月時点の資料より。
※1位は、2018年7月第1週の時点の数字。
祖母の年金に頼りつつ、足りない生活費を万引で稼ぐ一家の群像劇で、シニア層から子供まで幅広い世代が劇場に押しかけた。現在まだ公開中のため、さらに興収を伸ばし、日本でも約44億円の大ヒットを記録した米映画「ラ・ラ・ランド」の“アカデミー作品超え”にも期待がかかる。
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再開発が進む東京の下町。周りをビルに囲まれたなか、ポツンと残された古い住宅街に暮らす一家。日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)と息子の祥太(城桧吏:じょうかいり)は、生活のために“親子”ならではの連係プレーで万引きに励んでいた。
その帰り、団地の廊下で凍えている幼い女の子を見つける。思わず家に連れて帰ってきた治に、妻・信代(安藤サクラ)は腹を立てるが、ゆり(佐々木みゆ)の体が傷だらけなことから境遇を察し、面倒を見ることにする。
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カンヌ国際映画祭で、審査委員長のケイト・ブランシェットが、「私が次の映画で泣くシーンがあったとしたら、安藤サクラの真似をしたと思っていい」といったというので、そこを注目してみた(笑)。映画での泣きの演技にもいろいろある。号泣では妻夫木聡の「涙そうそう」や「歌謡曲だよ人生は」などがある。
安藤サクラの泣きはやや違っていた。とにかく何度も目をこする。むしろ泣くのを殺して抑えていたが、そこからほとばしりでる自然の泣きがやはりスゴイ。
安藤サクラは「百円の恋」では、太った体から、ボクシングのために減量してスリムになったが、「万引き家族」では、”肉感的”になるように増量をしたようだ。一糸まとわぬ全裸を見せていたが、重量感にあふれている(笑)。
この映画で、JKリフレという、JKビジネスの発展系のような、あの手この手の風営法の抜け道といってもいいようなシーンには、コミュニケーションの手段(ボードにマジックで言葉を書く)など笑ってしまう。そこでバイトをしている”家族”(同居人)のひとりを演じる松岡茉優(まゆ)がなかなかいい。数年前に「NTT東日本」のCMで見たのが最初だったが、インパクトがあった。
松岡の演じた“亜紀”は当初、“取り柄のない太った女の子”という設定だったという。しかし、松岡の出演作を見た是枝監督がオファーを決め、松岡のイメージに合わせて脚本をすべて書き直したというから入れ込みようが半端ない。
松岡が演じた亜紀は、風俗店でアルバイトをしているという設定であり、NHK「あまちゃん」に出演していた松岡は、オファーを断ってもおかしくない中、“面白いじゃん”と言って快諾したという。そして、風俗嬢役では、エロい役が印象的だった。
松岡が演じた亜紀は、風俗店でアルバイトをしているという設定であり、NHK「あまちゃん」に出演していた松岡は、オファーを断ってもおかしくない中、“面白いじゃん”と言って快諾したという。そして、風俗嬢役では、エロい役が印象的だった。
リリー・フランキーのずる賢いダメ人間ぶりも板についている。
”ワーク・シェアリング”という言葉などで国の働き方改革が叫ばれているが、「ワーク・シェアなんていうのは、みんなで貧しくなりましょう」というようなものといった言葉があり、皮肉っている。
社会の底辺で暮らす模擬家族。安藤サクラが”絆”と安易に口に出していたのは、やや引いてしまうが(笑)。工事現場で日雇いで働く父、クリーニング店で働く母、JK見学店でアルバイトをする母の妹、月6万円ほどの年金を受給する祖母。そしてどこか様々な感覚が麻痺してしまったかのような、時に無邪気な表情を見せる少年と、本当の両親からネグレクトされた少女たちが織り成す人間ドラマ。
原案・監督・脚本・編集:是枝裕和
音楽:細野晴臣(ビクターエンタテインメント)
配給:ギャガ
英題:shoplifters
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