昨年2月に公開された映画「愚行録」を見た。
監督は、ロマン・ポランスキーを輩出したポーランド国立映画大学で演出を学び、本作で長編映画監督デビューとなる石川慶。脚本を「マイ・バック・ページ」、「聖(さとし)の青春」などで注目を集めている向井康介が執筆。
今や有名になった言葉「イヤミス」。
この映画は昨年2月に公開の後、6月から上映予定だった飯田橋のギンレイホールなど二番館での上映が中止となった。未成年との飲酒行為・不適切な関係で芸能活動を無期限停止した小出恵介が「愚行録」に出演していたことから、配給会社は上映中止を決断した。俳優の愚行で飛んだとばっちりを受けた映画でもある。
内容は、ミステリーの一種だが、謎解きというよりも、週刊誌記者が一家惨殺事件の関連で取材する証言者たちの実像に迫るという構成になっている。
一般的に善良な一流企業に勤めるサラリーマンとその家族が、実のところは他人に冷酷であったり、身勝手であったり、嫉妬や妬みが渦巻いていることが明かされていく。これらがタイトルにある「愚行」として語られていく。そして、最後に、衝撃のラストが・・・というお決まりの展開だが、もう一つすっきりしない幕切れだった。
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前半の舞台となるのは名門らしい大学が舞台。
付属高校からエスカレーター式に上がってきた生徒たちは「内部生」と呼ばれ、大学から入ってきた生徒は「外部」として暗黙のようにグループができている。社会も、格差社会というよりも階級社会となっているといったセリフも聞かれた。
人を利用して社会的にのし上がろうとする人物、女を利用する人間、男に擦り寄って生きようとする女、そして幼児期の虐待による犯罪の連鎖といった人間たちのおろかで空っぽな行動=愚行を様々描いているが、やや通り一遍といった印象は拭えない。ある家族を襲った凄惨な殺害事件。その被害者である田向(たこう)家は、エリートサラリーマンの父親に美しい母親、礼儀正しい娘、という誰もが羨む理想の家族そのもの。一家を殺害した犯人の手掛かりはつかめず、捜査は難航。
そんな田向一家惨殺事件の真相を追う週刊誌の記者・田中武志(妻夫木聡)。
幸せで何一つ問題点がなかったように思えた一家だったが、実は夫妻にはそれぞれ闇があり、それは彼らを取り巻く人間関係につながっていることがわかってくる。
取材を重ねるごとに夫妻の秘密を暴いていく田中だが、一方で彼のプライベートにもひとつ問題が・・・。妹の光子(満島ひかり)が娘の育児放棄をした罪で逮捕されていたのだ。嫉妬、憎しみ、恨み、負の感情が渦巻き、事件は予想外の展開を迎える。
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映画の冒頭でバスの乗客のスローモーションのシーンが映し出される。
このオープニングのシーンだけは?引き込まれた。
ひとりの若者(主人公の雑誌記者)が窓際に座っている。
目の前に年配女性が立っている。すると、隣に立っていた中年男が「ぼさ~っと座っていないで席を交代してやれよ」と若者に言う。若者は、一瞬面倒くさそうな顔をするが、立ち上がって席を譲る。次の瞬間、若者が歩き始めるが、すぐに足を踏み外して倒れてしまう。足が不自由だったのだ。足を引きずってバスを降りる。
人は見た目だけではわからないと反省したのだろう。ところがバスが数十メートル言ってしまうと、若者は、シャキっとして立ち上がる。足など不自由ではなかったのだ。仕返しに演技をしたのだった。何やら「ユージュアル・サスペクツ」を彷彿とさせ・・・・・・・・ないか(笑)。
「イヤミス」の傑作ということだが、傑作とまではいかない「ニアミス」に終わったようだ。
★★ (辛め)
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