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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「そこのみにて光輝く」(2014)</span>

 

 
 
そこのみにて光輝く」は、芥川賞候補に幾度も名を連ねながら受賞がかなわず、41歳で自ら命を絶った不遇の作家・佐藤泰志の唯一の長編小説が原作。
 
オカンの嫁入り」の呉美保監督がメガホンをとり、愛を捨てた男と愛を諦めた女の出会いを描く。綾野剛池脇千鶴主演。
 
(あらすじ)
仕事を辞めブラブラと過ごしていた佐藤達夫綾野剛)は、粗暴だが人懐こい青年・大城拓児(菅田将暉)とパチンコ屋で知り合う。ついて来るよう案内された先には、取り残されたように存在する一軒のバラックで、寝たきりの父、その世話に追われる母かずこ(伊佐山ひろ子)、水商売で一家を支える千夏(池脇千鶴)がいた。世間からさげすまれたその場所で、ひとり光輝く千夏に達夫はひかれていく。しかしそんな時、事件が起こる。
 
・・・
 古いアパートの一室で、雑然とした畳の部屋で短パン一つで横たわっている男(綾野剛)がいた。男は仕事もせず、パチンコと散歩をするだけが毎日の生活。無精ひげで、過去の事件を引きずっているようだ。男は、パチンコ店で知り合った拓児(菅田将暉)という若者から、家に来て飯を食べないかと誘われついていく。
 
男は佐藤と名乗り、食事を作ってくれた女は拓児の姉で、千夏(池脇千鶴)と名乗った。ショートパンツ姿で、むっちりタイプの千夏は、ワケありの雰囲気。

家には、母親と、脳梗塞で寝込んだきりの父親がいた。
母親のかずこは、佐藤をみて「前科の友達か」と不躾に聞く。
拓児が、事件を起こして仮釈放中の身であることがわかってくる。
 
千夏は、佐藤達夫に「何してる人?」と聞くと「別に何も」、「奥さんは?」「いないです」といった他愛ない会話が続くと弟・拓児は「何?」と質問をうるさそうに遮る。
 
夜、達夫がバーらしき店のカウンターに顔を出すと、店のママが、「一人、空いたけどどうする?」と声をかけてきた。バーの名を借りた風俗の店だった。達夫はかなりベロベロに酔っていたが、なかから出てきたのが、千夏だったことに驚く。千夏は、達夫に向かって「こういうとこにくるんだな」。酔った勢いで、口論となる千夏と達夫。
 
別の日に、達夫は、千夏の家を訪ねると、千夏から「あんなところでカラダ売っているのがおかしかったんでしょ。笑っていれば」というと達夫は、酔っていたので謝りに来たという。
 
千夏は、妻子持ちの中島という男の愛人だった。中島は刺青もあり、地元では市役所などにも顔が利く男のようだが、千夏に暴力をふるい、人の弱みにつけこむ質の悪い人物だった。
 
中島の会社で働いていた千夏の弟・拓児から、中島が千夏をおもちゃにしていることを知り乗り込んでいく。「なんだオメエは」という中島に「千夏と別れてくれませんか。」というが「オメエ、誰に向かって言ってんだ」と食ってかかってきた。「家族を大事にしたらどうですか」というものの「大事にしてるからおかしくなるんだべ」。
 
千夏に、達夫は、「もうこんな仕事は辞めれや」というと、「私だって昔、運送会社の事務をやったことがある。一ヶ月持たなかった。毎日会社へ行って、飲みに行って。私には居場所がないんだよね。そういうのわかんないっしょ」。
 
千夏はさらに「あんた、何様。一回やったぐらいで。稼がなけりゃならないの。わかるよね。何なのよ」。達夫は「聞こえないのか。腐れ縁、切りたくねえのか」と返すが、千夏は「あんたさあ、私と結婚でもしたいの。バカだと思われるよ」と取りつくシマもない。
 
達夫は、かつて石堀りの仕事をしていた時に「ハッパ」(ダイナマイト)の事故で、仲間を死なせたことに対する自責の念を持ち続けていたが、その石堀の仕事の責任者・松本(火野正平)から、「達夫のせいではないから、戻って来い」という誘いを受けていた。その男に「金がほしいだけだ。貯金が底をついたこともあるが、家族を持ちたくなったんだ」という。松本は、「バカが、俺をみれ、だーれもいない。それでいいんだ」。「オレはあんたと違う」と達夫。
 
・・・
池脇千鶴は、ポッチャリ体型で、ショートパンツ姿が多いが、中島という男が、車の中でも、要求してくるので、男に向かって、「早く済ませて」というシーンで、壮絶な演技を見せて、体当たりだった。
 
千夏が、中島から乱暴され、顔に傷まで出来て、家に戻ったので、弟の拓児もさすがに状況をつかむ。 中島が社員たちと飲んでいる場所に向かい、中島を睨むが、中島は「座って、飲め」と何事もなかったようないつもの態度。中島は「お前には用はない。お前を必要としている人間はいない」というので、ついにキレてしまう拓児。
 
ナイフで中島を切りつける拓児。
結局、失血するものの死にはいたらなかった。
 
登場人物全てが、居場所がない人間のようだ。
 

 

 
 
ある日、二人で海で泳いだこともある海辺を千夏と達夫が歩く姿があった。
これから、光輝くことはあるのか。海で泳いだシーンは印象深い。
 
映画は、身も心もずたずたになった男と女が、自分たちの居場所を求めてもがく姿が描かれている。暗く重い映画だ。綾野剛はテレビドラマ「空飛ぶ広報室」で初めて見たときは、好青年といった役柄だったが、過去の作品を見てくると、屈折した若者を演じる役が多いのに驚いた。池脇千鶴は、どんな激しいシーンも演じてしまう女優魂のある女優だ。R15+指定映画。
 
主な出演者:
大城千夏:池脇千鶴
大城拓児:菅田将暉
中島:高橋和也
松本:火野正平
大城かずこ:伊佐山ひろ子
大城泰治:田村泰二郎
 
監督:呉美保
原作:佐藤泰志
脚本:高田亮
音楽:田中拓人
製作:永田守

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