「白い巨塔」(1966)とその名を聞くだけで・・・。
田宮二郎の野心家で、傲慢不遜、自信に満ちた、不適な面構えが目に浮かぶ(笑)
「田宮二郎といえば、白い巨塔」「白い巨塔といえば、田宮二郎」。この映画の時点では、若干32歳という若さ。鬼気迫る演技に圧倒された。
原作は、もちろん山崎豊子。テレビで、田宮主演のほか、最近では、唐沢寿明でもシリーズで、リメイクされてきたが、何と言っても、田宮二郎の映画オリジナルがベストだ。山崎豊子原作の映画(「華麗なる一族」「不毛地帯」「金環蝕」ほか)では、ベスト作品。
映画では、大阪・浪速大学を舞台に、助教授の財前五郎(田宮二郎)の権力(教授)を目指した異常なまでの執念と、医療の誤診による裁判というタブーに、鋭く切り込んだ問題作であった。
明らかに誤診と見られたが、大学病院の権威の失墜を恐れて、それを覆い隠そうとする医学界の重鎮・・・。一方では、患者側に立ち、自らの職を賭して懸命に診療・再検査を主張したために、追い落とされる里見助教授(田村高廣)を対比させていた。
田宮の冷徹かつ権力へのあくなき執念の名演があって、この映画を一段と際立たせた。
見所は随所に・・・。
・教授選考会の緊迫感。票読みのスリル。
・医療ミス、誤診を問う裁判。その結果は・・・。
・医学部長を巻き込んでの、金品、札束による教授選の票獲得・切り崩し工作。
などなど。
俳優陣が豪華を極めた。
出演:田宮二郎(浪速大学・財前助教授、東教授の後任に)
東野英治郎 (浪速大学・東教授)
田村高廣 (浪速大学・里見助教授)
小沢栄太郎 (浪速大学・鵜飼医学部長)
船越英ニ (財前の対立候補で金沢大学教授)
滝沢 修 (東都大学教授・日本医学界の重鎮)
藤村志保 (東教授の娘)
小川真由美 (財前助教授の愛人)
石山健二郎 (財前の義父)
加藤 嘉 (浪速大学教授)
加藤 武 (浪速大学教授)
製作:永田雅一
監督:山本薩夫
原作:山崎豊子
脚本:橋本 忍
撮影:宗川信夫
音楽:池野成
「ただ今より、財前教授の総回診が始まります」
ラスト・シーンである。大学病院の廊下に回診を告げる音声が響き渡ると、多くの医局員を引き連れた財前五郎が歩いてゆく。その顔は権力を握った満足感に浸っているのだった。
1966年(昭和41年)度、キネマ旬報ベストワン作品。当然過ぎる評価だ。