

映画「劇場版 緊急取調室 THE FINAL」(2025)を見る(MOVIXさいたま)。緊急取調室というのは、可視化された特別取調室で厄介な被疑者と対峙する捜査一課の取調べ専門チーム「緊急事案対応取調班=通称・キントリ」のこと。
「緊急取調室」は長年シリーズとしてテレビ放送されてきたが、ドラマ版はほとんど見ていない。劇場版でファイナルとあるように、総集編のような形で、単発で見ても面白かった。
この映画は公開までに紆余曲折があったという。詳細は下記(※)。ドラマ版と同じく常廣丈太監督・井上由美子脚本のタッグで制作。
超大型台風の連続発生により日本が非常事態に陥る中、内閣総理大臣・長内が災害対策会議に遅れて到着したことから、その「空白の10分」を糾弾する男が長内総理を襲撃する事件が起こった。
「空白の10分」に総理大臣は何をしていたのかがカギで、中盤以降に明かされる。一国の総理ともなると、スケジュールは分刻みなのかもしれない。
それにしても、重要会議とはいえ、わずか10分など移動を考えれば起こりうると思うので、なぜこだわるのかと不思議に思ったが、この10分の謎こそがこの映画の核心部分だった。
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超大型台風が連続発生し、国家を揺るがす非常事態の最中、内閣総理大臣・長内洋次郎(石丸幹二)は、災害対策会議に10分遅れて到着する。
さらに、その「空白の10分」を糾弾する暴漢・森下弘道(佐々木蔵之介)が現れ、総理大臣襲撃事件が発生する-。
警視庁は、森下の起こしたテロ事件を早急に解決するため、キントリの緊急招集を決定。真壁有希子(天海祐希)らキントリチームは取調べを開始する。

だが、森下は犯行動機を語らないどころか、取調室に総理大臣を連れて来い!と無謀な要求を繰り返す。
森下の取調べが行き詰まる中、長内総理に“ある疑惑”が浮かび上がる。
「総理を取調べたいんです」有希子は真相解明のために総理大臣を事情聴取すべく動き出す。熟練のチームワークと緊迫の心理戦。キントリは全てを懸けて、前代未聞の取調べ、内閣総理大臣との最後の闘いに挑む。


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緊急取調室で真壁有希子(天海祐希)らキントリチームは長内総理を襲った犯人・森下弘道(佐々木蔵之介)の取調べを開始するが、森下は犯行動機など一切語らず、長内洋二郎総理(石丸幹二)との面会を要求する。長内総理に合わせれば真実を語るというのだ。
そんな中、長内総理にある疑惑が浮上し、真壁は真相解明のため長内総理の事情聴取に乗り出すが、現職の総理大臣を呼び出して事情聴取するなどどう考えても不可能。
警視庁の副総監である磐城和久(大倉孝二)は元キントリ班員であったことから磐城に総理に打診するように頼むが、磐城はできるわけないと真っ向から反対。
キントリチームは策を練る。あるアイデアが浮かんだ。
超大型台風で緊急事態が発生していることから、災害などにあたり指揮を執っている警視庁総監・永松(平泉成)を激励する名目で総理に警視庁を訪問させ、緊急取調室での現場を見てもらおうという計画だった。
警視庁では、総理の導線(歩くルート)の変更を主席秘書官・光園寺(徳重聡)に伝えると難色を示されたが、キントリ班は緊急取調室に総理を連れていくことに成功した。
総理はキントリの目論見を見抜いていた。自らわざと「キントリの罠」に乗ったというのだ。総理は、事情聴取される側でなく、聴取する側の立場になりキントリの真壁を聴取したいというのだ。

総理が、緊急取調室の外側の人間を退場させて、録音も停止することを条件にして、聴取を始める。総理は「なぜ自分を聴取しようと考えたのか」と激しく迫るのだった。
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物語のスリリングな展開、会話劇の妙、一癖も二癖もある俳優陣の演技が見どころだった。25年間、抱えてきた執念の塊のような人物・森下(佐々木蔵之介)がギラギラとした目で迫力があり圧巻。
森下と総理になった長内との間には浅からぬ深い深い因縁があった。
大倉孝二の警視庁の副総監という役は重すぎるのではないかと思うが、これまでにも上にはペコペコで部下には圧力をかける小心者のような役が似合う。
「いやいやいやいやいや、そんなことできるわけねえだろう」
大倉副総監が、キントリから総理の聴取を取り付けてくれと言われた時に返す言葉が「いやいやいやいやいやいやいや…」と手を横に振りながら言うのが、口癖なのか笑わせる。
総理の暴走を見張りお目付け役のような副総理・外務大臣の岩倉(小野武彦)の存在は、アニメ付きで口元が曲がり恫喝するような態度のどこかの国の元副総理に似ている。
主演の真壁(天海祐希)は、圧倒的な観察力と心理戦で被疑者の嘘を暴き、感情に流されない冷静さと、内に秘めた強い正義感で、このシリーズは天海祐希の代表作かもしれない。
他には小日向文世、田中哲司、野間口徹、でんでん、塚地武雅、鈴木浩介、勝村政信といった名バイプレーヤーがわきを固める。
取り調べなどの人物の状況をカメラが360度回りながら映したり、画面の構図がやや斜めになるなど緊迫感のある展開も見どころだった。
蛇足:佐々木蔵之介の演技がすばらしく、今年の「助演男優賞」候補に佐藤二朗(「爆弾」)と横浜流星(「国宝」)とともに挙げたい(笑)。

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(※)映画公開までの紆余曲折:
本作は、公開に至るまでの紆余曲折も含めて語られることの多い作品でもある。当初は2022年公開予定だった。しかし作中の設定が安倍晋三元首相銃撃事件と酷似しているとして延期された。
さらに2023年、市川猿之助による自殺幇助事件、永山絢斗の大麻取締法違反が相次ぎ、当初バージョンおよびそれに直結するテレビスペシャルは事実上“お蔵入り”となった。
そのため、一時はシリーズそのものの存続すら危ぶまれ「呪われた作品」とまで言われる事態に発展したのだった。
しかし制作陣はシリーズ消滅という最悪の結末を回避する道を選ぶ。内閣総理大臣・長内洋次郎役を石丸幹二に変更し、再撮影を敢行。長い時間と調整を経て、まったく新たな劇場版として完成させたのである。といういわくつきの作品だった。
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