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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「近松物語」(1954)を見る。溝口健二監督の名作。

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近松物語」(1954)を見る。溝口健二監督の名作の1本を見るのに数十年かかってしまった(笑)。「名作に進路を取れ!」のサブタイトルのブログは?

近松門左衛門人形浄瑠璃の演目「大経師昔暦」(だいきょうじむかしごよみ、通称「おさん茂兵衛」)が下敷きで、川口松太郎が書いた戯曲「おさん茂兵衛」を映画化。

そもそも原作は正徳5年(1715年)のもので、300年以上前の江戸時代の作品が現代に通じるものがあるというのも驚きだ。

溝口監督というと、ワンショットの長回しとロングショットを組み合わせてワンシーンを作り出す演出で知られ、国内外の多くの監督がお手本にしている。

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時は江戸時代。

朝廷御用の、経巻・仏画などを表装した職人の長「大経師(だいきょうじ)」が、翌年の新暦(経師歴)の専売権を独占し、大儲けをしていた。

京都で大店(おおだな:大規模商店)を営む大経師以春(いしゅん:進藤英太郎)は、若い後妻・おさん(香川京子)をもらいながら、女中のお玉(南田洋子)にも手を出す始末。

お玉は、店の手代(てだい)で腕利きの茂兵衛(もへい:長谷川一夫)へ思いを寄せており、以春のセクハラのことを相談する。真面目な茂兵衛は「奉公する身分をわきまえ事を荒げるな。なによりも奥さん(=おさん)に知れたら可愛そうだ」と相手にしない。

ある日、おさんの所に兄の道善(田中春男)が訪ねてきた。道楽者の道善は、借金の利子の支払いに困り、その返済を妹に泣きついてきたのだった。

いくら裕福な店とはいえ、金に細かい主人・以春がすんなりお金を貸してくれるはずがない。夫にも相談できず、困ったおさんは茂兵衛に相談する。

おさんの願いを叶えたい茂兵衛は、仕方なく店のお金を一時用立てる手配をする。しかしそれを見ていた番頭の助右衛門(小沢栄太郎)は、ことの次第を主人の以春にばらしてしまうのだった・・・。

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映画の冒頭で、不義密通(=不貞行為、不倫)を犯した男女が縄で縛られて刑場に引かれるシーンがある。それを眺める村民たちの中に、おさんと茂兵衛の姿もあった。

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この映画のラストでは、おさんと茂兵衛が刑場に連れていかれるシーンがある。

あらぬ誤解から、一緒に逃亡することになった茂兵衛とおさんだったが、茂兵衛が、秘めた思いをおさんに漏らしたことで、自殺をしようとしたおさんの気持ちが変化し、「死ぬのはいや。茂兵衛とともに生きたい」と思うようになる。

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これから死刑にされる二人の姿を見た大店の使用人たちは「おさんのあんなに明るい顔は見たことあらへん。これからほんまに死にはるんやろか」といった声が聞こえてくる。馬上で縛られた二人は、強く手を握っていた。

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”女性映画の巨匠”と呼ばれた溝口健二監督の、悲恋の中にある厳しさや美しさが存分に出ている。

香川京子がヒロインを演じた(当時23歳)。初の人妻を演じる(当時は未婚で、溝口監督独特の演技指導しない演出も重なり、既婚者の動作が中々演じられなかったという)。本人の思い出に残る作品といい「できるまでやらされ死ぬほどつらかったが、芝居の基本を教えてもらった」と振り返っている。

出演は、長谷川一夫進藤英太郎小沢栄太郎香川京子南田洋子、浪花千恵子、十朱久雄、小松みどりほか。