「激しい季節」(原題:Estate violenta / Violent Summer, 1959)を見た。こんな”いい”映画を見過ごしていたとは…笑。
主演女優のエレオノーラ・ロッシ・ドラゴが知的な美貌で魅力全開。共演は「素直な悪女」のジャン=ルイ・トランティニャン、「芽生え」「お嬢さん、お手やわらかに!」のジャクリーヌ・ササールなど。お気に入り映画100本に加えたい映画。
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第二次大戦も末期に近い夏、イタリアの高級避暑地リッチョーネでは、ロッサーナ(ジャクリーヌ・ササール)たちの上流社会の若いグループが、祖国の苦境をよそに青春を享楽していた。
カルロ(ジャン・ルイ・トランティニャン)という青年がこのグループに加わった。彼はファシスト党の高官の息子で、戦火を避けてやってきたのだ。ロッサーナは、しだいにカルロにひかれていった。
突然、この避暑地にも敵機がきた。海岸の砂浜で、おびえた小さな女の子が駈けだした。カルロはころんだ女の子を抱いて救った。カルロは子供の母親ロベルタ(エレオノーラ・ロッシ・ドラゴ)を知り、激しく彼女にひきつけられた。
ロベルタは海軍将校の妻だったが、夫はかずかずの武勲をたてた後に地中海に消えた武人だった。ロベルタもカルロたちのグループに近づいていった。ロベルタの義妹マッダレーナ(フェデリカ・ランキ)が、戦火を逃れて身を寄せてきたので、若いマッダレーナを年頃の若いグループに紹介するのが目的だった。
一同がロベルタをともなってカルロの別荘にやってきた。ロベルタとカルロは無意識の内に抱擁した。それを見たロッサーナは泣きながら走り去っていった。
ラジオはムッソリーニ首相にかわってバピエトロ・ドリオ政権の確立を告げた。カルロの父は政変を避けてここの別荘まで逃げのびてきたが、やがてカルロを残したまま姿をけした。市民は、ムッソリーニによる20年間に及ぶ圧政から解放されたと、ムッソリーニの像をロープで縛って壊した。
その夜、ロベルタとカルロは、はじめて一緒に激情の夜をすごした。彼女は、生れて初めての愛の歓びと幸福を知った。しかし格式を重んずる母親は、激しくロベルタを責めた。だが、彼女はもはやカルロと離れられなくなっていた。
カルロの兵役延期の証明書はすでに期限がきれていた。ロベルタとカルロは悩んだ末、ついに逃亡を決意した。二人は避灘民たちとともに列車で出発した。しかし、列車はリッチョーネを離れてまもない駅で猛爆を受けた。
ロベルタは線路近くに横たわる少女を見てリッチョーネに残してきた我が子を思い出した。カルロははっきりと事態を察した。ロベルタに子供のもとに帰るようにいいきかせた。列車にロベルタをのせ、戦場に向うべく駅にとどまった。ロベルタは嗚咽しながら遠ざかっていった。
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第二次世界大戦も終焉に近づいた頃のイタリアが舞台で、映画館では、空襲などがあると映画は中止となった。観客は、足踏みをして、再上映を訴えるが、軍関係者が突然入ってきて、軍関係者はすぐに兵舎に戻るように通達があったり、そうしたことは日常茶飯事のようだった。
音楽が効果的に使われていた。主題歌の「激しい季節」はマリオ・ナシンベーネの作曲による哀愁漂うムード・ミュージックで、映画ではカルロがロベルタをダンスに誘うシーンに使われていた。
若者の仲間たちがカルロの家に集まるが、音楽レコードのコレクションが多くあり、「ビギン・ザ・ビギン」(1938年のレコードが当時大ヒット)「テンプテーション」(1933年にビング・クロスビーがヒットさせたアメリカ産の名曲)なども含まれていた。とくにダンスのシーンに使われていた「テンプテーション」が印象に残る。背景に流れる音楽で、1963年の「ブーベの恋人」にそっくりのメロディが流れていた。
主な出演:
ロベルタ・パルメザン:エレオノラ・ロッシ=ドラゴ
カルロ・カレモーリ:ジャン=ルイ・トランティニャン
ロッサナ:ジャクリーヌ・ササール
マッダレーナ:フェデリカ・ランキ
監督:ヴァレリオ・ズルリーニ
製作:シルヴィオ・クレメンテッリ
脚本:ヴァレリオ・ズルリーニ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、ジョルジオ・プロスペリ
音楽:マリオ・ナシンベーネ
音楽指揮:フランコ・フェラーラ
撮影:ティノ・サントーニ
編集:マリオ・セランドレイ
■エレオノラ・ロッシ=ドラゴの出演作品:
「地中海の虎」I pirati di Capri(1949)
「人間魚雷」sette dell'Orsa maggiore(1953)
「戦争と女」Destinées(1954)
「埋れた青春」L'Affaire Maurizius(1954) :キネマ旬報ベストテン第4位
「ナポレオン」Napoléon(1955)
「女ともだち」Le amiche(1955)
「出撃命令」Il prezzo della gloria(1956)
「南十字星の下」Dagli Appennini alle Ande(1959)
「刑事」Un Maledetto imbroglio (1959)
「激しい季節」Estate violenta(1959)
「全艦船を撃沈せよ」Sotto dieci bandiere (1960)
「ダビデとゴライアス」David e Golia (1960)
「女の部屋」La garçonnière (1960)
「ビザンチン大襲撃」Rosmunda e Alboino (1961)
「史上最笑の作戦Il giorno più corto (1963)
「もしお許し願えれば女について話しましょう」Se permettete parliamo di donne(1964)
「私は宇宙人を見た」Il disco volante(1964)
「アンクル・トム」Onkel Toms Hütte(1965)
「天地創造」La Bibbia(1966)
「ドリアン・グレイ/美しき肖像」Dorian Gray(1970)
エレオノーラ・ロッシ・ドラゴの出演映画を追いかけなくては(笑)。