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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「奇跡のリンゴ」(2013)</span>



無農薬のリンゴ栽培に成功する話と聞いただけでも、いかにも地味な映画という印象だった「奇跡のリンゴ」(2013)を見た。地味な題材の映画も、「チーム・パチスタの栄光」「ゴールデンスランバー」「ジャージの二人」などの中村義洋監督の手になると、はじめから最後までじっくりと腰を据えたカメラと語り口で、淡々とした流れの中で、じわじわと物語が伝わってくる。

ふたりの主役、阿部サダヲ菅野美穂の夫婦の雰囲気も絶妙だが、座っているだけで演技がにじみ出る職人技ともいうべき山崎努や、原田美枝子笹野高史などの名脇役の存在が大きい。



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三上秋則は、子供の頃から、モノを分解するのが好きだった。
親から買ってもらったおもちゃはもちろん、バイクまで分解してしまうのだ。
1970年代青森県中津軽郡岩木町(現・弘前市)。
三上秋則は、学校では、”変人”呼ばわりされて、同級生の女子高生からは「ばっかじゃないの」と言われても、「そうか、オレはバカなのか」と納得して喜ぶという、少しおめでたい性格。

秋則(阿部サダヲ)は、東京に出て、そろばんで原価計算などをする経理の仕事をしていたが、秋則にとっては、経理の仕事は”天職”のように思えた。ところが事態が急変する。実家からの電報だった。りんごが被害で全滅、すぐ帰れというものだった。

実家に戻った秋則にとっては、りんごのことなどまるで眼中になかったが、そんな時に、見合い話が飛び込んできた。

遅刻して、見合いの席に駆けつけると、秋則の両親と先方の両親、見合い相手がいたが、その相手というのが、なんと「バッカじゃないの」と高校の時に言っていたリンゴ農家・木村家の一人娘・美栄子(菅野美穂)だった。

美栄子に「一緒に夢を追いかけるか」と秋則がプロポースの言葉をいうと、「なに言ってるの。もう決めている」だった。こうして、秋則は美栄子とともに、リンゴ栽培にいそしむ事になる。

ある日、美栄子の体に異変が生じた。美栄子の体は年に十数回もリンゴの樹に散布する農薬に蝕まれていたのだ。美栄子の父・征治(山崎努)によると、そうした症状が起こるのは日常茶飯事だとこともなげにいう。「それだったら、無農薬にすればいいのでは」と秋則。


              無農薬について本を読みあさる秋則

              義父に無農薬のりんご作りの許可を頼む秋則

秋則は美栄子のために無農薬によるリンゴ栽培を決意するが、それは当時、絶対に不可能な栽培方法と言われていた。秋則は美栄子の父・征治の支援を受けて無農薬栽培に挑戦する。農家の会合で、征治は、ほかの農家の面々に、迷惑はかけないので、無農薬を認めて欲しいと宣言する。

ところが、案の定、何度も失敗を重ね、年月ばかりが過ぎ、収穫はなく、借金ばかりが膨らんでいく。次第に周囲の農家からも孤立していき、妻や3人の娘たちにも苦労をかけていた。美栄子の用意する弁当箱のおかずも種類が少なくなっていた。

秋則は、あるとき自分が地面に沈んでいく錯覚に捉えられた。
「地獄だ」とつぶやく秋則は、10年の歳月がたっても成果が実ることはなく、窮地に追い込まれ、ついに自殺を決意、1人で岩木山に向かった。

すると、彼はそこで自生した1本のくるみの樹を発見、樹木は枯れることなく、また害虫も発生していなかったのだ。秋則はその樹を見て、これはりんごの木でも同じことが考えられるのではないかと思う。土を舐めてみる。「これだ!」と秋則は直感する。早速、リンゴ畑に走る。

その頃、いなくなった秋則を必死に探す美栄子の姿が、祭りの列や、屋台の店などにあった。憔悴しきって、ふらつきながらもりんご畑に向かう美栄子。はるか向こうの視界の中に秋則の姿が見えた。

果たして、これが奇跡の大逆転の糸口となるのか・・・。


   

              「笑って、笑って」と励ます美栄子


主な出演:
木村美栄子:菅野美穂(高校生期:飯村未侑
もっちゃん:池内博之
深津:笹野高史
三上幸造:伊武雅刀
木村雛子:畠山紬(幼少期:小西舞優
木村咲:渡邉空美
木村菜ツ子:小泉颯野
三上葺子:原田美枝子
木村征治:山崎努
銀行支店長:本田博太郎

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方言(津軽弁)が全編で話されるので、慣れないと難しいかも知れない。
蛇足だが、fpdは、毎日、津軽弁の環境(4年前から青森から義母が同居)の中にあるので、津軽弁TOEICスコア”があるとすれば「750~800」(甘すぎる?自己申告)だと思う。

昼間、義母に「奇跡のリンゴ」という津軽を舞台にした映画があるが見るか聞いたところ、「テレビは見るものがないので見たい」というので、一緒に見た(fpdも初見)。

感想は「泣かせるな」だった。オープニング・シーンで、秋則が何でもかんでも分解してしまう光景を見て、「全くあのとおり。XX(息子)も、なんでも分解していたっきゃ」(笑)と、思わぬところで、青森の子供たちの習慣がわかった。

この映画の山崎努が演じる木村征治は、年代で言えば、大正時代の末期から昭和2年までくらいの生まれで、戦争に出兵(南方:サイパン?)し、食料がなく、蛇、トカゲ、草などなんでも食べたと語っていた。その土地で、農薬もないのに野菜が出来ていたのに驚きその土を持ち帰って瓶に入れて記念に持っていたのだ。

秋則が、「それはなんですか?」と聞いたときにも、話してもわからないだろうと語っていたのだが、そのいきさつを話していた。征治の多くの戦友は亡くなり、戦友が亡くなる前に、「生きて帰れ」と語っていたようだ。そうした言葉も全てが詰まった瓶だったのだ。無農薬の可能性というのは、戦地で経験していた征治だったので、秋則の無農薬への再挑戦にも理解を示していたのだ。

眠るように息を引き取った征治の手には、秋則が無農薬で栽培したリンゴがしっかり握られていた。医師が手からリンゴを離そうそうとするが離れない。見ていた秋則は「そのままにしておいてください」。「こんな患者は初めてだ」(医師)。



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