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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「飢餓海峡」(1965) :若き刑事(高倉健)が犯人を追い詰める。</span>


 
飢餓海峡」(1965)は、何度もテレビでも放送されていたが、途中の断片は見ていたが、今回初めて見た。3時間2分(完全版)。
 

とある事件によって大金を手にした男と、男を一途に愛し続けた女。
この2人が辿る悲劇的な運命を、戦後の混乱期を背景にダイナミックな演出で描破している。
 
オープニングで「東映」のロゴマークとともに登場する「東映W106方式」(16mmで撮ったものを35mmに拡大してフィルムの粒子をあえて粗くする)は、生々しい映像的質感を獲得している点でも注目されている。
 
自分の犯した過去の罪を隠し、その発覚を恐れてさらに犯罪(殺人)を犯す人物を三國連太郎が巧みに演じている。三國の他、左幸子伴淳三郎高倉健が迫真の演技で、感動を呼ぶ。特に左幸子の純朴で一途な性格がにじみ出る演技は圧巻だった。
 
二つの点と点の事件が1本の線で結びつくまでの推理の展開にグイグイと引き込まれる。先月亡くなった高倉健が、この映画では、1時間50分ほどして初めて登場するが、若い刑事役でやや硬さはあるものの、証拠を示して犯人に詰め寄っていくシーンは見所。高倉健追悼の意味でも、タイミングよく見られてよかった。
 
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(あらすじ) 
飢餓海峡 ・・・ それは日本(にっぽん)のどこにでも見られる海峡である。その根底には、ドロドロした人間の愛と憎しみの執念を見ることができる」(ナレーション)
 
昭和22年9月20日、10号台風の最中、北海道岩内で質店一家三人が惨殺され、犯人は放火して姿を消した。その直後嵐となった海で、青函連絡船の惨事が起き、船客530名の命が奪われた。
 

 
死体収容にあたった函館警察の弓坂刑事(伴淳三郎)は、引取り手のない二つの死体に疑惑を感じた。船客名簿にもないこの二死体は、どこか別の場所から流れて来たものと思えた。そして岩内警察からの事件の報告は、弓坂に確信をもたせた。
 
事件の三日前朝日温泉に出かけた質屋の主人は、この日網走を出所した強盗犯沼田八郎と木島忠吉それに札幌の犬飼多吉(三國連太郎と名のる大男と同宿していた。
 
質屋の主人が、自宅に78万円の金を保管していたことも判明した。
弓坂は、犬飼多吉の住所を歩いたが該当者は見あたらず、沼田、木島の複製写真が出来るまで死体の照合は出来なかった。
 
だが弓坂は漁師から面白い話を聞いた。
消防団と名のる大男が、連絡船の死体をひきあげるため、船を借りていったというのだ。弓坂は、直ちに犬飼が渡ったと見られる青森県下北半島に行き、そこで船を焼いた痕跡を発見した。犬飼が上陸したことはまちがいない。
 
その頃、杉戸八重(左幸子)は貧しい家庭を支えるために芸者になっていたが、一夜を共にした犬飼は、八重に34,000円の金を手渡し去った。八重はその恩人への感謝に、自分の切ってやった爪を肌身につけて持っていた。
 

 
そんな時、八重の前に犬飼の件で弓坂が現われたが、八重は犬飼をかばって何も話さなかった。八重は借金を返済すると東京へ発った。
 
一方写真鑑定の結果死体は沼田、木島であり二人は、事件後逃亡中、金の奪い合いから犬飼に殺害されたと推定された。その犬飼を知っているのは八重だけだ。
 
弓坂の労もむなしく終戦直後の混乱で女は発見出来なかった。
それから10年、八重は舞鶴で心中死体となって発見された。しかしこれは偽装殺人とみなされた。
 
舞鶴警察の味村刑事(高倉健)は女の懐中から舞鶴の澱紛工場主樽見京一郎が、刑余更生事業資金に3,000万円寄贈したという新聞の切り抜きを発見した。
 
八重の父に会った味村は、10年前八重が弓坂の追求を受けたと聞き、北海道に飛んだ。樽見が犬飼であるという確証は、彼が刑余者更生に寄附したことだ。
 
弓坂と味村は舞鶴に帰ると、樽見を責めたが、しらをきる樽見の大罪は、八重が純愛の記念に残した犬飼の爪と、34,000円を包んだ、岩内事件の古新聞から崩れていった(MovieWalker)。
 

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男の親指の爪、新聞の切り抜き、小型船の燃やした灰・・・。
「完全犯罪の壁」が崩れていく、小道具の使い方も見事だった。何よりもどん底の貧しさを味わった人間しかわからない苦しみや業、性(さが)が、犯人、娼妓(公娼)、老刑事などによって浮き彫りになる。
 
砂の器」と似たような設定もあり、甲乙つけがたい名作だ。
 
 
三國連太郎・・・犬飼多吉/樽見京一郎
風見章子 ・・・妻敏子
左幸子  ・・・杉戸八重
加藤嘉  ・・・父長左衛門
伴淳三郎 ・・・弓坂吉太郎
進藤幸  ・・・妻織江
加藤忠  ・・・刈田治助
岡野耕作 ・・・戸波刑事
菅原正  ・・・佐藤刑事
志摩栄  ・・・岩内署長
外山高士 ・・・田島清之助
河合絃司 ・・・単本虎次郎
最上逸馬 ・・・沼田八郎
安藤三男 ・・・木島忠吉
曽根秀介 ・・・朝日館主人
牧野内とみ子・・朝日館女中
北山達也  ・・・札幌の警部補
山本麟一  ・・・和尚
大久保正信・・・漁師辰次
矢野昭   ・・・下北の漁師
西村淳二  ・・・下北の巡査
遠藤慎子  ・・・巫子
田村錦人  ・・・大湊の巡査
沢彰謙    ・・・来間未吉
安城百合子 ・・・葛城時子
荒木玉枝  ・・・富貴屋のおかみ
河村久子  ・・・煙草屋のおかみ
亀石征一郎 ・・・小川
須賀良    ・・・
八名信夫  ・・・町田
久保一    ・・・池袋の警官
北峰有二  ・・・警視庁の係官
三井弘次  ・・・本島進市
沢村貞子  ・・・妙子
高須準之助 ・・・竹中誠一
藤田進    ・・・荻村利吉
鈴木昭夫   ・・・唐木刑事
関山耕司   ・・・堀口刑事
斎藤三男  ・・・嘱託医
高倉健    ・・・
味村時雄刑事
 
内田吐夢監督の主な作品]
1925年『義血』/1927年『競争三日間』/1929年『生ける人形』/1931年『日本嬢(ミスニッポン)』『仇討選手』/1932年『大地に立つ前後篇』/1933年『警察官』/1935年『白銀の王座前後篇』/1936年『人生劇場青春編』/1937年『裸の町』『限りなき前進』/1939年『土』/1940年『歴史』/1942年『鳥居強右衛門』/1955年『血槍富士』/1956年『黒田騒動』/1957年『大菩薩峠』(1959年まで)/1958年『森と湖のまつり』/1959年『浪花の恋の物語』/1960年『酒と女と槍』『妖刀物語 花の吉原百人斬り』/1961年『宮本武蔵』(1965年まで)/1962年『恋や恋なすな恋』/1964年『飢餓海峡』/1968年『人生劇場飛車角と吉良常』/1971年『真剣勝負』
 
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