抱腹絶倒の傑作お茶の間コメディ!!
久しぶりに舞台を見た。三谷幸喜の「君となら」。このキャッチコピーが示す通り、誤解やすれ違いが複雑に錯綜するシチュエーションの中で、人々が懸命に打開しようとする姿が描かれる。”シルバー・ラブ・コメディ”ともいわれるようだが、そのわけとは・・・。
年上の娘のフィアンセが70歳であること、”おとうさん”と呼ばれたことで 「そりゃあありえない」と落胆する父親。
舞台の幕が上がると「愛は勝つ」の曲がポータブルラジオから流れている。
理髪店を営む小磯家。次女のふじみ(イモトアヤコ)と長女のあゆみ(竹内結子)があゆみの恋人・諸星賢也(愛称ケニー、小林勝也)について話をしている。次第に噛み合わなくなっていく2人の会話。
あゆみは、ふじみにだけ、ケニーの写真を見せる。
驚くふじみだったが、両親をいかに説得するか、話を切り出すか。
どうやら”青年(家族皆がそう思いこんでいる)実業家”のケニーは実は70歳(実はこれも嘘で、実際は73歳!)で父親の国太郎(草刈正雄)より年上らしい。この事実を両親にどう伝えようかと悩む2人。そこへ、小磯家に突然ケニーが現れて、事態は思わぬ方向に・・・。”諸星賢也”という名前から、颯爽とした青年を想像していたのだから。 ここまでは”嘘”というより”勘違い”が話を広げていくが、その時、天然モード満載の母・よりえ(長野里美)が帰宅。あゆみは、とりあえず本人を見て驚く前に、写真を見せておこうと考え、親子で写っている写真を見せると、ケニーと一緒に写真に写っている彼の息子・玄也(長谷川朝晴)をあゆみの恋人と勘違いすることになり、これからとんでもない騒動になることが予想される。
息子の玄也は、父の相手が、財産目当てではないか、だまされているのではないかなどを知るためにやってきたのだが、あゆみの母・よりえが相手と勘違いし、ある程度の年齢で魅力的でもあるので納得する。
20代の女性だとしたら、財産目当てに決まっていると思いこんでいるからだ。 父親・国太郎(草刈正雄)は、家族から着替えをするように言われていながら、ずっとステテコのままなのが、おっさんぽい。玄也は、国太郎がよりえと親しそうにしているのはおかしいと、ふじみに質すと、「あれは隣の家の人で、母と幼馴染み」ととっさに説明するから、さらにややこしくなる。
携帯もデジカメも一般的でなかった20年前。
やがて、事情を理解した父は、相手が歳は離れているが、誠実であり、頼りがいもあって、家族も最後には応援する立場に回る。母親だけが、気づいておらず、
・・・舞台は、小磯家の居間だけだが、庭には、父親が若い時にたしなんでいたバスケットボールのネットがある。小道具として、効果的に利用される。 自転車もあり、流しソーメンの設備まで登場する。2階からソーメンを1階に流しながら、下では、ソーメンをすするという場面は見どころだ。 ・・・舞台を見るのは、小劇場で、「女優誕生」のような芝居を10年前くらいに観て以来。これから、年に何回かは、舞台も観ていきたい。
国太郎は、きっぱりと「これはあり得ない。絶対にありえない」の一点張りだったが、やがて、賢也について理解を示すことになる。
そうした中で、妹のふじみも、父親に相談があると語っているのだが、なかなか二人になれずに、話しが延び延びになってしまう。この伏線が、最後に「あっ」と言わせる。
「君となら」が初舞台となる竹内結子とイモトアヤコ。
竹内結子は全ての原因が自分にあるにもかかわらず、いつもほわんとした雰囲気でその場にいるあゆみを等身大で演じている。
くるくる変わる表情と立ち姿の美しさがめだつ。
一方、次女・ふじみ役のイモトアヤコは、すべての状況を把握している人物で、問題を収拾するために、とにかく動く。”空気を読んでいない人たち”に、それとなく
そうじゃないでしょうとシグナルを送るパフォーマンスがおかしい。
玄也が突然、体をくねらせて、タコ踊りのような格好をするのは、ポケットにあるポケベルの振動によるもの。
ポケベルは、会社など決まったところから「社に電話するように」という合図のためのもの。そこで玄也は、ポケベルが鳴るたびに「電話をお借りします」といって、家にあるるダイヤル式固定電話をかけに行く。
通話が終わると、「電話代10円置いておきます。こういうことはきちんとしないと」とその都度言うのだが、天然の母・よりえは、娘の将来のダンナと思っている玄也はしっかり者という印象を抱いてしまうのだ。
やがて、事情を理解した父は、相手が歳は離れているが、誠実であり、頼りがいもあって、家族も最後には応援する立場に回る。母親だけが、気づいておらず、
この説得が問題となる。
そして、今度は、ふじみが「つきあっている人がいる」とあゆみに言う。
「そうなの?よかったじゃない」と会話をしているのだが、ふじみは、「写真を見て驚かないでね」と念を押すのだった・・・。
「なに、歳がものすごく離れているってこと?」
「いいえ、そうじゃなくて」。
「じゃぁ、ものすごく年下?」
「いいえ、そうでもなくて」。
写真を取り出して、「絶対に驚かないでよ」と念を押して、あゆみにみせると、あゆみは「こ、これは・・・」と絶句するだけで、言葉が出ない。
この舞台のイモトアヤコは、主演といってもいいくらいの存在感だ。
テレビでは、眉を太く書いて、世界を飛び回っている”珍獣ハンター”として知られるが、舞台でも活躍しそうだ。