「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」(予告編)
映画のタイトルが「ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない」だが、いまの厳しい就職・雇用環境の世の中、中卒の26歳の元ニートの青年(小池徹平)が劣悪な職場環境の中で自分なりの生き方を見出していく成長物語を描いている。それにしても長いタイトルで、一度に覚えるには限界かもしれない。
いじめが原因で高校を中退し、引きこもりのニート生活を送ってきた26歳の真男(小池徹平)は、母の死をきっかけに一念発揮してプログラマーの資格を取得し、就職活動を始める。不況でどこの会社も真男を採用してくれなかったが、黒井システムという会社はあっさりと採用する。
映画のラストシーンでは、「ブラック会社に勤めているんだが、まだ俺は頑張れるかもしれない」というクレジットとなっていた(笑)。
このニート青年が、あらゆる会社の面接で、「中卒」「資格・キャリアなし」などの理由で「不合格」。やっと「合格」を得られた会社に出社してみると、そこはとんでもない会社だった。
食堂で、たまたまこの青年が、無料就職情報誌「R25」を手にして、ぱらぱ読んでみると、その特集の中の「ブラック会社の見分け方」のなかの5項目に、すべてが当てはまっているのが、今入社したばかりの会社だった。
深夜残業は当たり前、(移動交通費などの)経費は落ちない、社員が全く仕事をやる気がない・・・など。
そんな掃き溜めのような職場で、残っている人間というのは・・・。それぞれ事情を抱えていたのだ。新人として入社した元ニート青年・大根田真男(通称マ男)(小池徹平)は、母親から、まともな仕事に就くように言われて、スーツも新調してもらうが、出社する姿を見ずに交通事故で死んでしまう。
出社した会社は、まるで戦地のようだった。
社員の中に一人だけ、仕事もでき、まともと思える人物、藤田(田辺誠一)がいて、マ男は、藤田からいろいろと助けられるが、藤田ほどの人物が、なぜ、ブラック会社に在籍しているのか疑問に思いながらも、藤田の影響を受け、尊敬の念を抱く。
藤田も、マ男と同じように、5年間はニートだったという過去が明らかになる。その前は司法試験を目指していたのだが、プログラマーだった恋人の自殺をきっかけに、贖罪の気持ちからか、現在のプログラマーのブラック会社に勤めているのだった。
マ男は、井出から、「藤田はホモだよ」と嘘の情報を聞かされるが、マ男は、藤田の言動・態度に「カッケー(かっこいい)」と、パソコンの「2チャンネル」に書き込む始末で、慕っている。
そんな時、派遣会社からこの会社に限定期間仕事に加わって来たのが若くて美人の中西亜矢子(:マイコ)。中西は、マ男に話があるとマ男を呼び出すが、マ男は自分に気があるのかと思ったら「藤田さんがステキで、気持ちを伝えて欲しい」だった。
マ男は、がっくりだが、中西は、間男があてにならないので、藤田に思いをぶつける。「今週末に”二人で”食事しませんか」。断られると「では、来週末”二人で”」これも断られ、さらに「ではその次の週に”二人で”ディズニーランドでも」・・・と”二人で”を強調するが(笑)、それはできませんときっぱり断られ、中西は、しゃがみこんで、すすり泣く。かっこいいマイコを振ってしまうとは・・・。
IT企業のトップ5社のうちの1社を辞めて入社してきた木村(田中圭)は、早稲田大学・理工学部出身ということで、将来起業するのが目的。大手ではできないことを、弱小企業のリーダーに収まって、やがては会社を乗っ取るという野心を持っている。そして、社員を奴隷のようにこき使うというのを企んでいるのだった。
藤田がマ男に言った言葉が、マ男を鼓舞し、自身を強く変えていくきっかけとなった。「君は何のために生きているのか。何のために仕事をしているのか」。
マ男は、藤田が会社を辞めるといった時に、「藤田がいなくなったら、仕事はできない」と考えていたが、藤田が「会社に残る」というのを翻意させ、「行ってください」というほどに成長したマ男の頼もしい姿があった。
ニート、失業者、仕事に苦しむ人たちへの応援歌のような映画だった。
小池徹平は、いいとこ出のぼんぼんのような気弱ないい人を演じることが多いが、この映画の最後には、全社員に向かって、「ここにいる人間は、最低だ。足の引っ張り合いで、自分のことしか考えていない。」と自分が、崖っぷちで、この会社で頑張ってきた事情を語ると、一同は、話に聞き入る。
田辺誠一が、たしかにこの映画は「カッケー」(笑)。
変なタイトルの映画だが、一見の価値はあった。
映画のラストシーンに出演者のクレジットがで終わっても、まだ最後に「オチ」があった。毎度お馴染みの、ブラック会社の社長(森本レオ)のワン・パターンの面接風景で、不採用続きの応募者ばかりの中で、やってきた応募者に、「家族に(合格を)早く知らせてください」というのだった。結局1日と持たない社員が多い職場なのだが・・・。