映画「無法松の一生」 荻 昌弘 解説
山田洋次監督が選ぶ日本映画名作100本(家族編)が、毎週日曜日NHK BSプレミアム(22:00~)で放送されている。昨日は、かつてテレビで断片的にしか見ていなかった「無法松の一生」(1958)を観ることができた。かつての月曜ロードショーでは、映画解説者の荻昌弘さんが紹介していた(懐かしい)。
映画は、1943年版での無念の想い(重要な部分を検閲でカットされた)を晴らすため、また、カラー、シネマスコープで、松五郎を撮るために稲垣自身がリメイクした。
この映画は、ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞(グランプリ)受賞。その時の現地からの、日本への電報は、「トリマシタ、ナキマシタ」 (まだFAXもEメールもない時代、これは泣かせたことだろう)。
♪♪小倉生まれで 玄海育ち 口も荒いが 気も荒い
無法一代 涙を捨てて 度胸千両 生きる身の
男一代 無法松 ♪♪
映画では、”世界のミフネ”(三船敏郎)がすごい。
あの、豪放で繊細な演技!
コミカルなマラソンの走りの格好、無欲の奉仕、夫人への思慕、複雑な想いをこめて打つ太鼓の音、などが感動的だ。
松五郎は夫人の前から姿を消す。
雪の降る日、小学校の校庭に、かすかな笑みをうかべた松五郎が倒れていた。残された柳行李の中には、吉岡(夫人宅)家からもらった数々の祝儀の品々が手をつけられずにあり、その奥底には夫人と息子宛の貯金通帳もあった。良子夫人は冷い亡きがらに取りすがって号泣・・・ラストシーンだった。
飲み屋で、女性の映ったポスターをみた松五郎は、一瞬、そのポスターに夫人の面影をダブらせる・・・。そのとき、後の解説でわかったが、1秒にも見たない時間、夫人の写真がフラッシュバックされていた。この演出もすごい。そのポスターをもらい受け、家に貼っておくが夫人が訪ねてきたときに、そのポスターを見られないようにまるめたりして、隠そうとするなど「見透かされまい」とする松五郎の心の内などが繊細に描かれる。
吉岡夫人に扮した高峰秀子の名演が印象に残る作品でもあった。
笠智衆などの脇役もすばらしい。
製作:田中友幸
音楽:團伊玖磨
監督:稲垣浩
出演:
三船敏郎(富島松五郎)
芥川比呂志(吉岡小太郎)
高峰秀子(吉岡良子)
笠智衆(結城重蔵)
田中春男(熊吉)
大村千吉(ぼんさん)
多々良純(清吉)
稲葉義男(巡査)
宮口精二(撃剣の師範)
土屋嘉男 (高校の先生)
左卜全(居酒屋の亭主)
有島一郎 (オイチニの薬や)
沢村いき雄(俥の客)
中村伸郎 (良子の兄)
中北千枝子 (良子の兄の妻)
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