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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「悪人」(2010)</span>


「悪人」予告編

 

 
話題の「悪人」(2010)を見た。評価は、一言では難しい。
 
モントリオール映画祭で、最優秀女優賞(深津絵里)受賞でいやがうえにも期待が大きく、みたい映画だった。
 
松本清張2時間サスペンス殺人ドラマといってしまうと辛口過ぎるか。
映画自体は面白かった。
 
暗い過去を背負い、狭い地域内で生きてきた青年が、殺人を犯してしまう、その動機は何だったのか・・・。
 

映画館の大きなスクリーンの中で、柄本明が、妻(宮崎美子)に向かって「お前の育て方が悪いから、こうなってしまった(出会い系で知り合った男に殺された)」と大声で叫ぶシーンがあるが、その声が劇場いっぱいに響き渡るが、これが映画館で見る映画の醍醐味だ(笑)。DVDでは決して味わえない。
 
話はそれたが、宣伝文句に踊らされると、悪人がこの映画にたくさん登場するが、極悪人ともいうべき、最も悪人と言えるのは誰か?的な謎解きがテーマになりがちだ。
 
そもそも悪人とは、悪とは何か・・・を問いかけてくる。
 
現実には、人間は「この人は善人、この人は悪人」と単純に区分けできるものでもない。いい面、悪い面、善悪両方を備えているというのが一般的だろう。
 
テレビなどを見ていると、殺人事件の犯人が逮捕されると、決まって近所の人のコメント。「真面目そうな人で、あいさつもよくしていた。とても殺人を犯すような人には見えない」というのが、いつもの通りの多くのコメントだ。
 
ネタばれ全開です。
この映画の主人公、土木作業員の清水祐一(妻夫木聡)も、友達はいなく、孤独な人生を送ってきた、地味な若者だ。それがなぜ、殺人犯になったのか・・・。 清張風にいえば、殺人の動機は何か、だ。
 
一方の主人公、佐賀の紳士服量販店に勤める馬込光代(深津絵里)は、妹と2人で暮らすアパートと職場の往復だけの退屈な毎日を送っていた。

孤独な2人が、偶然出会い、惹かれあっていくが、この二人が出会う直前に、清水は殺人を犯しているのである。


「もっと早く出会っていれば良かった…」

そんな祐一の自首を止めたのは光代だった。生まれて初めて人を愛する喜びに満たされる光代は、祐一と共に絶望的な逃避行へと向かう・・・。これが、周りの人間たちをもすべて狂わせることになる。
 
二人がたどり着いたのは、無人灯台
 
それは祐一が幼いころ、母親に連れて行ってもらった灯台。母親は祐一を灯台のふもとに連れて行き置き去りにしてしまうという過去がある。

祐一は、母親に去られ、祖母(樹木希林)に育てられるのである。
 
祐一が、テレビで殺人犯ということでニュースとなり、祐一を捨てた母親(余貴美子)が、祖母のもとを訪ねる。「おばあちゃんが、育て方が悪い」など悪態をつく。さらに「祐一にも時々会うが、千円、二千円と、お金もない私からお金を持っていく」という。余のいつも役柄によって、顔つきまで違って見える名演が印象的だ。
 

それにもまして、樹木希林は、老婆の役が、本当にうまい。「歩いても 歩いても」もすごかったが、殺人者の祖母ということになるが、事実上は育ての親ということで、連日、報道記者、カメラマンが自宅に待ちかまえている。この取材の仕方があまりにも強引で、非人間的にも思える態度が、この映画では最も「悪人」に思えてくる。
 
仕事のネタ集めといっても、人権を無視したような、張り込み姿勢は、見ていて憤りすら感じる。
 

保険外交員、佳乃(満島ひかり)は、出会い系サイトで、清水祐一と出会うが、会うのにお金を要求したり、人を見下したり、挙句の果てには、親切に車で送るというのを、「(事実無根にもかかわらず)レイプされたと警察に訴えてやる」と自分勝手な人間。 見下されて、憤りを感じた祐一は、争いの末に、佳乃を殺害してしまう。
 

佳乃は、殺される直前にやはり出会い系サイトで知り合った増尾岡田将生)とドライブしていたのだが、増尾は、佳乃が簡単に誰の車にも乗ってついてくるような尻の軽い人間は嫌いだと言って、車から突き飛ばしてしまう。
 
そのことなどを自分の友人たちに吹聴するという、軽い大学生だ。岡田将生は「告白」でも、空気の読めない、生徒からも馬鹿にされるような若い教師を演じていたが、年長者とのコミュニケーションができない軽薄そうな役柄が多い(笑)。
 
娘の佳乃を殺された父親役の柄本明は、佳乃を車から突き落とした増尾を探し出し、「娘を殺された父親の気持ちがわかるか。そうやってこれからも、他人のことを笑い物にして生きていけ」と説教をする。若者のグループの中に、一人だけ、父親の気持ちを理解している青年がいた。
 
犯人が、警察に逮捕される直前に、光代の首を絞める。「俺は、思っているような人間ではない」と言いながら。警察に逮捕されたときに、光代が共犯者にならないようにということか。
 
警察に捕らえられる祐一の手と、首を絞められてもうろうとしているであろう、倒れている光代の手が、それぞれ伸ばしても届きそうで届かない。光代は、一瞬微笑みを浮かべていた。それは、わずかな逃避行の時間だったが、その間は、幸せだったことをかみしめるような表情で・・・。
 
深津絵里は、この映画でモントリオール映画祭の最優秀女優賞を獲得した。時々、はっとするような美しさをみせるが、美人タイプではない(“ふかっちゃん”ファンの人、失礼。笑)。顔は、ほくろが多いな。
 
逮捕される前の日のシーンか。二人で、灯台から海を眺めるシーンがある。
幸せに満ちた表情。言葉は少ない。祐一も、充実感で目に涙があふれそうだ。光代もしかり。これがラストシーンになるが、これでやや救われたような気がする。
 
バスの運転手(モロ師岡)が、バスに乗ろうとする婆ちゃん(樹木希林)を追いかけてくるマスコミに、「バスの中まで、うるさく取材するな」といった意味の言葉や、下車する婆ちゃんに「あんたのせいではない。しっかりして」と激励するシーンは、印象的だった。
 
健康食品か、漢方を「23万円」もの高額で、老人などに強制的に売りつける悪徳業者も「悪人」だった。子供を捨てた母親(余貴美子)も、悪人に違いない。永山絢斗なども出演。
 
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