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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「海よりもまだ深く」(2016)



海よりもまだ深く」を見た監督は是枝裕和。主演は阿部寛
団地を舞台に、売れない小説家の主人公と、団地に一人住まいのその母親、別れた元妻とその息子。こんなはずじゃなかったと今を生きる家族を映したストーリー。
 
主演の阿部寛は映画歩いても 歩いても(2008)奇跡(2011)ドラマゴーイング マイ ホーム、本作と是枝作品には4度目の出演(主演は3度目)。歩いても 歩いても以来の樹木希林と親子役を演じている。
 
樹木希林が演じる母・淑子が住んでいる団地は是枝監督が28歳まで実際に住んでいた東京都清瀬市旭が丘団地が使われた。
 
導入部から引き込まれる。母と娘の会話。母「うちにも1人、大器(晩成)が・・・」娘「まあ、おっきいことはおっきいけどね」という会話の後、電車内の冴えない風貌の主人公・良多(阿部寛)の顔が映し出される。
 
降車駅は「清瀬駅北口」。タイトルが右わきに小さく「海よりもまだ深く」と縦書きに映し出される。この「大器」という言葉は、後に、良多が母親に向かって「俺はね、大器晩成型なんだよ」というと、母が「時間がかかりすぎでは」というセリフにつながっていく。
 
「歩いても 歩いても」のタイトルがいしだあゆみの「ブルーライト・ヨコハマ」の歌詞の一部からきているように、「海よりもまだ深く」は、劇中流れるテレサ・テンの曲「別れの予感」(♪海よりもまだ深く 空よりもまだ青く♪)から取られている。
 
映画は「歩いても 歩いても」と同様、近くでありながらもっともやっかいな家族関係を切り取っているが、この映画でも、母親役の樹木希林の絶妙の自然体の演技にうならされる。
 
物語
良多阿部寛は作家として過去(16年前)に文学賞を受賞した経歴を持つが、その後は鳴かず飛ばずでずっと興信所勤めを続けていた。出版社からは漫画の原作をやらないかと勧められてはいたが、純文学作家のプライドから二の足を踏んでいたのだった。そのくせ競輪などギャンブルには目がなく、少し稼ぎがあればそこにつぎ込むばかりでいつも金欠状態
 
母親の淑子樹木希林や姉の千奈津小林聡美に金をせびる毎日を送っていた。そんな良多に愛想を尽かした妻の響子真木よう子は離婚して久しく、一人息子の真吾吉澤太陽のための養育費を求めるほかは接触を拒んでいた。だが、そんな良多にも父親としての意地があり、真吾と顔を合わせるときには金を都合してでもプレゼントを用意していた。
 
台風が日本に接近しているある日、良多は月に一度の息子との接触を持った。響子はもと夫である良多が、響子と恋人との接触を極秘調査していることに呆れ、冷たい態度を崩さない。それでも天気の崩れかたを危ぶみ、親子三人、淑子のアパートで一夜を過ごすこととなった。
 
父親を心配して調子を合わせる真吾は、眠れずに父と一緒に嵐のなかを外出、公園の滑り台に籠って駄菓子を味わう。戯れに話し込む親子は、将来の夢について言葉を交わす。考え込む良多は、翌日からの自分のことを振り返ってみるのだった。翌日、晴れ渡った空のもと団地を出る親子の姿があった・・・
 
・・・
どこの家でも、親戚・家族や兄弟でも、必ず一人くらいは、ギャンブルにうつつを抜かしたり、家族の悩みの種となるようなダメ人間がいるもの。それが良多。
 
                         ギャンブル(競輪)に興じる良多
 
良多は、元々は地方公務員になりたかったと息子の真吾に語る場面があるが、現実は、その日暮らしのような生活で、母親、姉、さらには、興信所の若手社員・町田池松壮亮にまでお金を借りまくる始末。
 
また、家の中にへそくりがないか箪笥をあちこち探しまわる。
姉・千奈津小林聡美)は、そんな良多の裏をかいて、ストッキングの中にお金でも隠してあるように見せかけて、開けてみると、ダンボールの切れ端が入っていて、「残念でした!姉より」というメモがあった。
 
どうやら亡くなった父親譲りのようで、良多が質屋にカメラを質入れに行くと、親父さんもよく来ていた、というのだった。月一回、別れた息子に面会するが、息子からも「お金、大丈夫?」と心配されるのだ。
 
良多は、そのくせ、母親には、いい顔をしたくて、借金した1万円を渡して、CDでも買いなよと渡す。母親は「いい物件があるけどマンションでも買って」というと「甲斐性なしの息子ですみませんね」と言い返すのが精いっぱいだ。
 
母親が「ずっと寝たきりで生きている」のがいいか「ぽっくり死んで、毎日夢に出てくる」のとどっちがいいと聞いてきたときに、どっちも嫌だが「ずっと寝たきり」というと「ファイナル・アンサー?」と母親。
 
皆集まったところで、母親が「コーヒーを淹れるけど、違いがわかる人だと困っちゃうけどね」と「違いがわかる男」というCMの有名セリフなどもさりげなく使っている。
 
良多が息子のために運動靴を買ってやるというのだが、息子が気を使って安い靴を手にする。良多は「遠慮するな。ミズノにしろ」と高い靴を手に取るのはいいが、わざと階段で靴に汚れをつけて、店員に値段を負けさせるというのは、情けないというかみみっちい(笑)。興信所の探偵の傍ら、高校生をゆすってお金を巻き上げたりするが、所長(リリー・フランキー)にばれて、叱責されるのだ。
 
とにかく、最初から最期まで、ことばの伏線や味わいのあるセリフが多いのもこの映画の見どころ。
キャスト
· 良多(作家で興信所勤務):阿部寛
· 響子(良多の元妻):真木よう子
· 千奈津(良多の姉):小林聡美
· 山辺山辺興信所・所長):リリー・フランキー
· 町田(山辺興信所社員):池松壮亮
· 真悟(良多・響子の息子):吉澤太陽
· 福住(響子の新恋人):小澤征悦
· 仁井田:橋爪功
· 淑子(良多の母):樹木希林
 
そして父になる」「海街Diary」と今年の「海よりもまだ深く」と是枝ワールドの映画は、日本映画界では、貴重な存在だ。
 
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