「おくりびと」は、感動作品だった。
深みのある映画だった。見るのを躊躇していたが、見てよかったと思う。
有楽町の丸の内プラセールは、空席なしの超満員だった。
水曜日レディズディにぶつかってしまった(笑)。
前列から三番目の座席は見上げるようで、きつかったが、感動が遥かに上回った!
海外での評判も高く、モントリオール、アカデミー賞外国映画賞の日本代表作品に続いて、中国の
アカデミー賞で、3冠を受賞した。中国の賞は「第17回中国金鶏百花映画祭」で、国際映画部門の作品、監督、主演男優賞を受賞。絶賛されたという。
この映画は、「タイトル」が出る前に ”意外な”展開があり驚かされ、笑わせ、本編では、あるときは厳粛に、あるときは目頭を熱くさせ、またしても(「ラストゲーム 最後の早慶戦」に続いて)ハンカチを必要とした(笑)。
本木雅弘演ずる大悟は、妻に1,600万円もするということは内緒でチェロを購入。オーケストラの演奏者として身を立てていくつもりでいた。しかし、オーケストラが解散することになり、やむなく実家のある山形に帰るのだが、そこで得た仕事は・・・。
NKエージェントという会社(といっても社員は社長と事務員1人)で面接、即採用。
(「NK」が納棺の頭文字であるとは知らずに・・。)
本木演じる主人公の“納棺師”は、死人を扱うことで、まわりからは疎まれるような仕事と見られていた。死に化粧と納棺の儀式を行う夫の仕事に嫌気がさして、実家に帰ってしまう妻・美香(広末涼子)。広末は、自然体で、キュートで好感が持てる。涙を浮かべる受け身の演技もすばらしい。
死の儀式を執り行う主人公の周りからは“けがれの職業”だという目で見られる納棺師。
ところが、最初はショックを受けた広末涼子演じる妻さえも、儀式の凄みと、夫の真剣さ、
その厳かな儀式に考えを変えていく。 納棺師の先輩役の山崎努が、年輪を感じさせる。とくに、フライドチキンを食べるシーンなど、「人間は、生き物を食べることで生きている」といいながら、よく食べる(笑)。死と対極にある生は、食べることと言わんばかりである(笑)。
伊丹十三の「お葬式」でも主役を演じたが、「おくりびと」での山崎も、さすがというほかない、
すばらしさ。
この映画では、小さい頃に父親に捨てられて、父親の顔さえほとんど覚えていない状態だったが、
ラストシーンで、感動が訪れる・・・。親と子、生と死とは何か・・・を問いかけている。
この映画の脇役陣がすばらしい。
筆頭は、笹野高史。この人は、飄々としているが、つぼを得た演技で、うならせる。
その一言に、重みがある。実は火葬場で、最後に火葬を執り行う仕事をしているが、
「自分は、新たな旅立ちに、人を送り出す”門番”だ」という。
そして、そのときに言うせりふはいつも、「ありがとな、また会おう!」だった。
名わき役とはこの人にぴったりの言葉だ。
笹野高史についての記事:http://blogs.yahoo.co.jp/fpdxw092/54892451.html
吉行和子も、口は悪いが、女一人、銭湯をきりもりして、親しまれている役柄を見事に演じている。
余貴美子は、どことなくわけありの陰がある役柄が似合うようだ。この映画でも、やはりだった・・・。吉行和子にもなんとなく似ているような気がした。
山形の風景も、地元の言葉もいい。
主な出演者:
本木雅弘
広末涼子
山崎努
峰岸徹
余貴美子
吉行和子
笹野高史
杉本哲太
宮田早苗
☆☆☆☆
(追記:アカデミー賞外国語映画賞にノミネート=2009年1月22日、果たして・・・)