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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「小さいおうち」(2014)

 
約1年前の2014年1月下旬に公開された山田洋次監督の「小さいおうち」を見た。
予想したとおり、黒木華(はる)は、昭和時代に溶け込んで見応えがあった。
 
昭和初期から終戦までの時代の中流家庭の人妻の恋愛事件(不倫)とそれを知ってしまった女中の対応が、時を経て平成時代に自叙伝という形で明かされる話を、
”山田組”の常連キャストを中心に描いている。
 
映画は、布宮タキ(倍賞千恵子)が亡くなり、遺品整理をしていた親類の青年・荒井健史(妻夫木聡が、タキが書きためていたノートを託されるところから始まり、現代の平成パートと昭和の回想パートとが描かれる。
 
 
 
昭和初期の女中・タキを演じた黒木華(はる)が、外見、佇まいが昭和時代の女中の雰囲気そのままで、高い評価を得て、第64回ベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞を受賞したのは記憶に新しい。
 
この作品は、2014年の日本アカデミー賞には間に合わなかったので、2015年の対象作品になると思うが、女優新人賞は確実だろう。
 
蛇足だが、黒木華のエプロン姿を見ていたら、「○○○○細胞はあります」と言った人が、事件として取り上げられる前にエプロン姿で実験をしている姿に似ているような気がした。
 
それはともかく、晩年のタキが、自伝のような形で、ノートに書き綴り始めるのだが、号泣を自分でも抑えることができなかった。その真の理由は、本人しかわからないが、自分が秘してしまいこんでいた過去の出来事に対して、自分のとった行動は正しかったのか、間違っていたのか、といった自責の念からなのか。
 
 
 
自分が仕えていた平井家の時子(松たか子)が、若い男・板倉正治吉岡秀隆)と浮気をしていることに対して、板倉の出征前の最後に二人を会わせなかったこと、結果、時子は板倉と再会することなく、夫ともに、空襲により防空壕で命を落としてしまったのだった。
 
時子の息子・平井恭一(米倉斉加年)は、両親が亡くなったものの生き延びていた。
時子の板倉への「最後に家に来て会って欲しい」という手紙をタキは板倉に届けずに未開封のまま、遺品として残していた。
 
この手紙を健史(妻夫木聡)が、恭一に手渡したのだ。恭一は目が見えなくなっており、健史が読んで聞かせた。息子の恭一は、知りたくなかったであろう母・時子の不倫を知ることになる。
 
来年2015年は、終戦70周年を迎える。
戦争を知る世代は、ますます少なくなり、直接体験している人は、当時小学生でも、高齢(80歳以上)となっている。戦争の時代には、食料も配給制になり、召集令状赤紙)一枚で戦争に駆り出された。戦争反対を唱える者は非国民扱いの時代だった。
 
タキが死ぬ直前に語った言葉「私は長く生きすぎた」という言葉が印象に残る。
タキが自伝でノートに書いていく言葉に、健史(妻夫木聡)がいちいち「違うでしょう、ばあちゃん」と書物で読んだ知識と違うところを指摘していた。タキは、その時代を生きてきた生き証人である。ただ、ノートに書けなかったこともあったような印象もある。たとえば、頼もしささえある女主人・時子への想いか、はたまた板倉への感情か・・・。
 
山田監督は来年も、家族をテーマにした映画を撮る。
「家族はつらいよ」である。こちらにも期待したい。
 
「小さいおうち」の 
主な出演者:
平井時子 - 松たか子
布宮タキ - 倍賞千恵子(晩年期)、黒木華(青年期)
平井雅樹 - 片岡孝太郎
荒井健史 - 妻夫木聡
小中先生 - 橋爪功
小中夫人 - 吉行和子
貞子 - 室井滋
松岡睦子 - 中嶋朋子
柳社長 - ラサール石井
カネ - あき竹城
花輪和夫 - 笹野高史
花輪の叔母 - 松金よね子
平井恭一 - 秋山聡(幼年期)、市川福太郎(少年期)、米倉斉加年(晩年期)
酒屋のおやじ - 螢雪次朗
治療師 - 林家正蔵
荒井軍治 - 小林稔
荒井康子 - 夏川結衣
ユキ - 木村文乃
 
監督 - 山田洋次
原作 - 中島京子
音楽 - 久石譲
プロデューサー - 深澤宏、斎藤寛之
 
映画というのは、脚本、セリフの中に、さりげない時代を映す言葉があって面白い。
板倉正治吉岡秀隆)は、音楽も趣味のようで、映画「オーケストラの少女」では、(名指揮者レオポルド・)ストコフスキーが”ノンタクト”(指揮棒を持たない)で演奏していたと語っていた。
 
また、時子(松たか子)の夫・平井雅樹(片岡孝太郎)の会社の社長は、その当時としては珍しくアメリカを訪問したことがあったが、「日本人はひじきと油揚げでしょう。アメリカ人は、ビフテキをバターでジュージュー焼いて食うんだから、身体はでかいし、女も綺麗で足が長い・・・」と二度も語っていた。
 
 
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