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映画「イニシェリン島の精霊」(原題:The Banshees of Inisherin、2022)を見る。アカデミー賞9部門ノミネート。

イニシェリン島の精霊」(原題:The Banshees of Inisherin、2022)を見る(MOVIXさいたま)。監督は「スリー・ビルボード」のマーティン・マクドナー。第80回ゴールデングローブ賞で最多7部門8ノミネートされ作品賞、主演男優賞、脚本賞の3部門を受賞。主演はコリン・ファレル

アカデミー賞では9部門にノミネートされていてド本命ともいわれている。期待して見に行くと、エンタメ性がないので、肩透かしの退屈さに裏切られるかもしれない。ただ、アカデミー賞の賞レースでは、何か獲りそう。

親友と思っていた人間から、理由もなく「たった今から縁を切る。今後は一切話しかけるな」と言われたら「あなたならどうする~♪」(笑)。
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本土が内戦に揺れる1923年が舞台。アイルランドの孤島、イニシェリン島。対岸での本土(イギリス)では、内戦が始まろうとしている。

島民全員が顔見知りのこの平和な小さい島で、パードリック・スーラウォーン(コリン・ファレル)は長年友情を育んできたはずだった友人コルム・ドハティ(ブレンダン・グリーソン)に突然の絶縁を告げられる。

パブでの飲み友達だったはずなのに、なぜかと聞くと「お前の話はつまらない。ロバが糞をしたという話を2時間したよな。退屈な人間だからだ」だった。

コルムは「これからは、つまらない人間の話を聞くという人生には嫌気がさした。オレは残りの人生を有意義に過ごす(作曲したり…)」というのだ。

もし、話しかけてきたりすれば、その都度「〇〇をXXする」という宣言をされてしまう。パードリックは、仲直りの希望をもって話しかけてしまうのだが「〇〇をXXする」というのが実際に起こってしまい騒動となってしまう。

本気だったということがパードリックもわかっていく。二人はよりを戻すことができるのか…。

 「親父(警官)に殴られてさ」
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孤島が舞台で、ニュースらしきものは一切なく、そこに住む人々は、パブで気晴らしをするくらいしかなく、パードリックが、友人のコルムを連れてこなかったりすると、やかましいほどのうわさとなる。


登場人物も、店の女主人などは、客に何かニュースはないかと毎回聞くが、何もないという返事ばかり。店では郵便の扱いもしているようで、パードリックの妹シボーン・スーラウォーン(ケリー・コンドン)に来た手紙の封を開けてしまったりして、何の話か詮索するうるささ。


コルムにとって、小さな島で目的もなく生きるパードリックとの時間は「生産性のないもの」として見えたのか。「優しい人間というが、17世紀に優しかった人間のことなど誰も覚えていない。一方で、モーツアルトは誰でも覚えている」という。

偏屈な人間や、変わり者が多い村の中で、パードリックの妹シボーンは読書家で常識を持ち合わせている。モーツアルトを17世紀といったが18世紀だと訂正している。

島国から出ていないためか、パードリックは、周りから見ればバカにされている存在。

パードリックは、妹シボーンに「オレはこの島で一番のバカか?」と聞くと、いやドミニク・キアニー(バリー・コーガン)だろうと意見が一致。それでは、2番目か、と食い下がるが、兄思いの妹は否定する。

そんな中、シボーンは本土での職を得て閉鎖的な社会を飛び出して去っていく。


前半は、単調で平坦なストーリーだったが、後半から、そこまでやるかという事態が起こり、驚かされる。見終わった後で、じわじわと味わいが増す映画ではあった。


コルムのセリフだったか「人生は、死ぬまで暇つぶしが続く」という言葉があったが、閉鎖的な小さな島で暮らす人々にとっては、何も起こらず暇・暇・暇の毎日が続く。

息子ドミニクに暴力をふるう警官がいたり、告解を聞く司祭が暴言を吐いたりとブラック・ユーモアも見られた。


中予言者の様な老女が登場するが、この老女は、人の死を叫び声で予告するといわれるアイルランドの精霊・バンシーという存在のようで、きょう2人死ぬ、などと予言していた。精霊をモチーフにしているというが、あまりピンとこない。


2人の友情の崩壊から始まる予測不能なまさかまさかのストーリーが展開されるところが見どころ。

 

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