「ギレルモ・デル・トロのピノッキオ」(原題:Guillermo del Toro's Pinocchio、2022)を見る。アカデミー賞の長編アニメーション部門にノミネートされている。
「ピノキオ」を題材にした映画では、ディズニー・アニメ「ピノキオ」(1940)が有名。人間の魂を妖精に入れてもらったあやつり人形の話。主題歌はディズニーを代表する名曲“星に願いを”。
嘘をついた子供を叱りつけるときに「嘘をつくとピノキオのように鼻が伸びるわよ」が母親の常套句として使われる。
人間にあこがれた人形の男の子が誘惑に惑わされながらも人間になるために奮闘する物語。企画は2008にあったが、資金面などで途中で頓挫して、10年後の2018年にNetflixが権利を買い取り製作再開、2022年10月にプレミア公開にこぎつけた。
声の出演が豪華で、ケイト・ブランシェット、クリストフ・ヴァルツ、ユアン・マクレガー、ティルダ・スウィントンなどが名を連ねている。
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舞台は第一次世界大戦下のイタリア王国。そこで暮らすゼペットは、オーストリア=ハンガリー軍が投下した爆弾によって、息子カルロを喪ってしまう。ゼペットはカルロの墓の側に松の木を植え、息子の死を悼みながら20年間を過ごすことになる。
やがて、成長した木にはコオロギのセバスチャン・J・クリケットが住み着くようになるが、酒浸りになっていたゼペットが新しい息子を作り出すために木を切り倒してしまう。
ゼペットは人形を作る途中で眠ってしまい、その間にゼペットの嘆きを聞いた木の精霊が人形に命を吹き込み、人形に「ピノッキオ」と名前を与える。
住処(すみか)に勝手に命を吹き込まれたセバスチャンは木の精霊に抗議するが、木の精霊から「ピノッキオの良心として成長を手助けすれば、一つだけ願いを叶える」と告げられ、提案を受け入れるのだが…。
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これまでのピノッキオのイメージを変えた映画として注目されている。大人しくて行儀の良かったカルロと異なり、ピノッキオは乱暴者で自由奔放な性格となっている。
セバスチャン・J・クリケットは博識な性格でピノッキオの良心になろうと奮闘するが、そのためにピノッキオを迷わせる存在として描かれる。
教会の礼拝に出かけるが、ピノッキオは村の人々を怖がらせてしまう。
ピノッキオを見た市長はゼペットに対して「ピノッキオを学校に通わせるように」と命令し、ピノッキオは学校に通うことになるが、落ちぶれ貴族のヴォルペ伯爵と猿のスパッツァトゥーラに誘惑されてカーニバルに行ってしまう。
ヴォルペ伯爵は「生きた人形」のピノッキオに利用価値を見出し、契約書を交わして人形劇に出演させるが、連れ戻しに来たゼペットとピノッキオの取り合いになった結果、道路に投げ出されたピノッキオは市長の運転する車にひかれてしまう。
ピノッキオは黒ウサギたちによって死後の世界に連れて来られ、そこで木の精霊の姉妹である死の精霊に出会う。
死の精霊はピノッキオに対して、砂時計の砂が落ち切れば現世に戻ることができるが、死ぬたびに現世に戻る時間が遅くなることを告げる。
現世に戻ったピノッキオはゼペットと共に帰ろうとするが、ヴォルペ伯爵からは契約書を理由に莫大な違約金を要求され、市長からは「不死身の兵士」としてイタリア陸軍に徴兵されそうになる。
厄介事に巻き込まれたゼペットはピノッキオを突き放してしまい、ピノッキオはヴォルペ伯爵の人形劇に出演してゼペットに仕送りをしようと考え、カーニバルの巡業に加わる。セバスチャンから事情を聞いたゼペットは、ピノッキオを探すためカーニバルを追いかける。
ヴォルペ伯爵は、ピノッキオのギャラをゼペットに送ることを条件に一座に入ったが、ヴォルペ伯爵は一切送っていなかったことが発覚、また暴力行為も目撃したことから、ヴォルペ伯爵の本性を知ってしまう。
そこで、ピノッキオはヴォルペ伯爵に仕返しするためスパッツァトゥーラと協力し、ベニート・ムッソリーニの前で彼や愛国心を笑い飛ばす歌を披露して恥をかかせるが、その場で射殺されてしまう。
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精霊や海の怪物(ジョーズのサメを50倍くらい大きくした怪物)などが登場。ピノッキオは不死身の命と引き換えに今すぐ現世に戻して欲しいと死の精霊に頼み込む。
現世に戻ったピノッキオはゼペットを海中から助け出すが、代わりにピノッキオが死んでしまう。セバスチャンは木の精霊に「ピノッキオを生き返らせて欲しい」と願い、その願いを聞き入れた木の精霊の力でピノッキオは生き返る。
ピノッキオはゼペットの元に帰り家族として暮らすが、寿命を迎えたゼペット、セバスチャン、スパッツァトゥーラに先立たれて一人になってしまう。やがてピノッキオは旅に出かけ、不死身の命を失った「本物の少年」として生涯を終えることが語られる。
エンディングシーンでは、死後の世界でセバスチャンが黒ウサギのために歌を披露する姿が描かれて物語が終わる。
3Dアニメのディテールにこだわった実写さながらの絵作りや背景が素晴らしい。
【キャスト】
ピノッキオ、カルロ:グレゴリー・マン
ゼペット:デヴィッド・ブラッドリー
セバスチャン・J・クリケット:ユアン・マクレガー
ヴォルペ伯爵:クリストフ・ヴァルツ
木の精霊、死の精霊:ティルダ・スウィントン
市長:ロン・パールマン
キャンドルウィック:フィン・ウルフハード
スパッツァトゥーラ:ケイト・ブランシェット
神父:バーン・ゴーマン
医者:ジョン・タトゥーロ
黒ウサギ:ティム・ブレイク・ネルソン
ベニート・ムッソリーニ、ムッソリーニの側近、船長:トム・ケニー
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