第22回アカデミー賞で、7部門にノミネートされ、作品賞、主演男優賞、助演女優賞を獲得した傑作でありながら、27年ものあいだ日本には入ってこなかった(※)。これは見ごたえがあった! ”名作”に進路・・・が、ズバリ的中?(笑)。
アカデミー賞主演男優賞を受賞したブロデリック・クロフォード(左)
アカデミー賞主演男優賞を獲得したブロデリック・クロフォードは、一見ひょうひょうとしているようだが、演説ではまくし立てるうまさがあった。助演女優賞を受賞したマーセデス・マッケンブリッジが素晴らしい。男から思いっきり平手打ちをくらわされるシーンがあるが、そのあとの、ニタっとしたような向かってくる表情がたくましくすごい。当時は、ハスキーボイスが魅力の個性派女優ということで、オーソン・ウェルズに「もっとも偉大なラジオ女優」と言わせたという。
原作はロバート・ペン・ウォーレンの小説「すべて王の臣」(タイトル:All The King's
Men はハンプティ・ダンプティの詩の一部に由来。「王様の家来みんな」)の映画化。野心家の地方政治家が権力欲の虜となって自滅していく様を描く硬派のドラマ作品。2006年にショーン・ペン主演でリメイクされた。
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若い新聞記者ジャック・バーデンと農民出身で政治的野望を持つウィリー・スタークは取材を通じて知りあいになる。スタークは、しゃべりのうまさが絶妙で、聴衆を惹きつけ、虎視眈々と当選を狙う田舎の政治家志望者。ある講演をきっかけにのしあがってゆくのだが・・・。
主人公のスタークを演じるブロデリック・クロフォードという俳優は、小太りでどこにでもいるようなオッサンだが、演説をするときの風貌は、あのケーン(「市民ケーン」のオーソン・ウエルズ)を彷彿とさせる。演説の背景には
大きな顔のイラストがあるところまで似ている。
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権力を持つと、傲慢になり、何でも思い通りになると勘違いしてしまうのか、自ら墓穴を掘るというのは古今東西、いずこの国も同じか。病院の医療費をゼロにすると民衆の喝采を浴びるが、そんなことができるはずもなく、最後に待ち受けていたのは・・・。
政治的駆け引きとそのための裏工作にのめりこんでいく男と、彼に付き添う上流階級出身のジャーナリストの人生が交錯し、悲劇が生まれていくといったストーリー。
未見のショーン・ペン主演のリメイク作品「オール・ザ・キングスメン」(2006)は、アンソニー・ホプキンス、ジュード・ロウ、ケイト・ウインスレット、マーク・ラファロといった豪華俳優が出演しており、こちらも見てみたい。
(※)日本で「27年間も公開されなかったわけ」とは・・・。
監督・脚本を務めたロバート・ロッセンが赤狩りの一環で下院非米活動委員会へ召喚され、元共産党員であることが取り沙汰されていたため。当時米国ではマッカーシズムが吹き荒れており、日本でも第3次吉田内閣が下院非米活動委員会をモデルにして共産主義勢力を取り締まろうとしていた時代。仮にロバート・ロッセンが召喚されなければ、本作はアカデミー賞の監督賞と脚色賞も受賞していた可能性が高いという。戦後、GHQが輸入映画の検閲を行っていたことも影響していたようだ。
政治家の汚さ、強欲ぶりを描いており「政治の裏側を徹底して暴いて」いる。
「政界浄化を唱え知事選にうって出た小役人が、二度の落選で理想主義を地にまみれさせ、俗物に堕ちて行く様を描く」(allcinema)。
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