山田太一脚本の「想い出づくり。」(TBS制作のテレビドラマ)が、1981年9月18日から12月25日にかけて放送されたが、このドラマの主演の田中裕子と脇役ででていた田中美佐(田中美佐子の当時の芸名)の”W田中”のファンになった(笑)。
この奇妙な二人の関係をクールに見つめて、現代人の孤独を滲(にじ)ませながら、ひとりの女子大生が大人へと旅立っていく姿を描く。 ”虚構の愛”を経て成長していく一人の女性の話(笑)。
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予備校の中年講師の三村(山崎努)に弓子(田中美佐子)は秘かに瞳れていた。ひょんなことから親しく話をする機会があり、薄汚れた駅前の食堂で三村は「男には、自分の傘に女を入れてやりたい奴と、自分が女の傘に入りたい奴と二通りある。俺は入れて貰うほうだ」と弓子に話した。
その夜、二人は酔いつぶれて三村の愛人の和子(加賀まりこ)の部屋へ行った。弓子は和子に対して批判的な言葉を投げつけたが、三村に関る人がすべて傷ついていて、傷つきながらもそれぞれの愛を終らせようとはしていないことを知った。
「50年たったら結婚しよう」という三村の言葉を理解しようとしながらも、彼を愛したことから始まった行き場のない淋しさに疲れ始めていた。ある日弓子は、一人旅から帰って来た和子と会っている三村にばったり会い、なごやかそうな二人の姿を見て動揺してしまう。妻の真知子に電話を入れる三村を、弓子は力なく見ているだけだった。そして、「もう大人のふりはおしまい。秩序正しい大人の世界を崩してしまいました」と三村に別れを告げた(MovieWalker)。
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1980年代初めの日本の風景描写などが懐かしさを呼び起こす。
50代半ばの予備校講師・三村は病気がちでお嬢さん育ちで世間知らずの妻を持ち、外には10年来の夫婦同然の愛人のほか、予備校教え子の20歳の女子大生とも半同棲し、酒におぼれるという山崎努の破天荒な生活ぶりと、それに翻弄される周りの人間たちの孤独を描いている。
予備校講師というのは、講師を掛け持ちしているとはいえ、そんなに収入があるのか。女子大生にアパートを借りてやったり、指輪をプレゼントしたり・・・。「飲み代を稼ぐために働いてんだ」と三村が言うと、女子大生の弓子からは「それじゃあ、”せんかた(詮方)なし”(=どうしようもない)だわ。あっち(昔からの愛人)をやめれば少しは楽になるわ」と言われる始末。三村もどうしようもない人間。ああ言えばこう言うで「あいつとは色恋じゃない。夫婦みたいなもんだ」。すると弓子は、自分をさして「じゃあ、これは」というと「お前は宝だ。二人で一軒もとう。」と見境がない。
三村の持論もハチャメチャ。「酒が飲めないというのは病気だ。酒は飲めません。タバコは吸いません。」と酔っぱらっておどけたり、「軍隊では炊事班長だった」と自慢もする。おまえ(弓子)が36年早く生まれていればもっと楽しいことがあったものを」って、女子大生とは36歳差か(笑)。義弟からも「やることが派手なんだから、自分から(女性関係を)大っぴらにしているようなもんですよ」と何度も言われるのだ。
三村は若い弓子に執着して「50年たったら結婚しよう。オレが知っているやつがいなくなったら結婚しよう」というと「あの世で?」「地下へ潜ろう」といった現実離れした会話が続く。「50年も生きる気ないわ」「そういう刹那主義はいかん。」
弓子はアルバイトで中学の先生になるが、生徒は「あの先生まだ独身らしいぜ。「ふーん、オールドミスか」と言ってくすくす笑う。「オールドミス」死語でしょ!
愛人の加賀まりこが三村に対して”殺意”を示すような目をするところがど迫力で怖い。映画は、本庄(ほんじょう:埼玉県本庄市)から早稲田まで100キロのハイクで終わるのだが、本庄の発音が地元の人間(fpd)からしたらおかしな発音だった。「ほ」にアクセントを置いていたが、そうではない。
弓子のアパートにいた三村(国語を教えている)が「今日はこれで行くよ」というと、弓子は「日本語は正しく使ってください。帰るよでしょ」と皮肉を込めて言う。三村は、「お前はメチャメチャなインチキな女だな」と捨て台詞。
田中美佐子は、映画の主演でいきなり、大胆なフルヌードで、ベッドシーンを演じているのが驚きだ。ドラマでは、活躍してきたが、映画での代表作が思い浮かばないのがさびしい。
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藤田敏八監督といえば、1970年代から80年代にかけて、青春映画、とりわけ苦い青春やエロスに主体を置いた映画を撮りつづけていた監督。
藤田監督映画の個人的ベスト5:(順不同)
①「八月の濡れた砂」(1971)
②「八月はエロスの匂い」(1972)
③「赤ちょうちん」(1974)
④「バージンブルース」(1974)
⑤「スローなブギにしてくれ」(1981)
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