「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(原題:Trumbo、2016)を東京・日比谷のTOHOシネマズ・シャンテで見た。今年観た劇場映画で、一番面白かった映画というのが、この作品。
ダルトン・トランボを演じるブライアン・クランストンがすごい。メガネとひげで別人かと思ったが、これまでに「アルゴ」「ドライヴ」「リトル・ミス・サンシャイン」「GODZILLA ゴジラ」などに出演している。
不屈の闘志で信念を曲げず、仕事一筋で、家族にも厳しかったが、弾圧から解放されてからは、実は人一倍家族思いであることがわかり、家族のきずなが強まっていくところが感動を呼ぶ。夫を支える妻を演じるのがダイアン・レインだが、なかなか素晴らしい。当時、女優でゴシップ・コラムニストに扮して、”嫌味な女”を演
じているヘレン・ミレンは堂々として貫禄がある。
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第二次世界大戦後の1950年代、共産主義排斥活動“赤狩り”が猛威を振るうアメリカ。その理不尽な弾圧はハリウッドにも飛び火し、売れっ子脚本家ダルトン・トランボ(ブライアン・クランストン)は、議会での証言拒否を理由に投獄されてしまう。
やがて出所し、最愛の家族の元に戻ったものの、すでにハリウッドでのキャリアを絶たれた彼には仕事がなかった。しかし、友人にこっそり脚本を託した「ローマの休日」に続き、偽名で書いた別の作品(「黒い牡牛」)でもアカデミー賞に輝いたトランボは、再起への歩みを力強く踏み出す・・・(MovieWalker)。
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興味深い、見どころは・・・。
1950年代のニュースの実写フィルム(アカデミー賞授賞式で、デボラ・カーが「脚本賞は、”ローマの休日”」と発表する映像など多数)のほか、ジョン・ウエイン、カーク・ダグラス、エドワード・G・ロビンソン、「栄光への脱出」のオット・プレミンジャー監督、「誰が為に鐘は鳴る」のサム・ウッド監督などが実名で登場(そっくりの俳優が演じている)するところなど。
また「ローマの休日」の”真実の口”のシーンを劇場で見るトランボ夫妻の、観客の反応に「してやったり」の表情を映したり、「スパルタカス」の実際の映像などが次から次に出てくるのだから、映画ファンには堪えられない。
最初にトランボが脚本を書いて出してきたタイトルに対して、トランボの娘が「ダサいタイトル」といったことで、Roman Holiday(「ローマの休日」)に変更されたというエピソードも面白い。この映画は大ヒットしアカデミー賞でも脚本賞受賞などで注目されることになった。
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オット・プレミンジャーは、「ポール・ニューマン主演で映画を撮るが、トランボの実名で作品を発表する」とトランボに約束し、脚本を依頼する。
周囲のハリウッドの多くの映画人の抵抗を押し切るところが潔かった。またカーク・ダグラスも、トランボの名前を出すことが条件だと制作サイドに突きつけるのだ。マッカーシズム(赤狩り運動)が吹き荒れる中で、その差別、不条理に戦った人物もいたという象徴か。
1年間も干されて仕事がなく、苦しみを味わったことから、仲間の名前を売ったりしたものもいた。
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ダルトン・トランボの名前を聞いてまず思い出すのは1971年に監督・脚本を手掛けた「ジョニーは戦場へ行った」。これは、第2次世界大戦が勃発した1939年に発刊した自身の小説を映像化したもの。
映画では戦争によって五感も手足も失った男を主人公とすることにより、当時ベトナム戦争に参加していたアメリカ政府を、痛烈に批判する内容となっている。このほか「パピヨン」「ダラスの熱い日」などの骨太の作品の脚本も書いている。
予告編
トランボの主な脚本:
「潜水艦SOS」 The Devil's Playground(1937年)
「恋愛手帖」 Kitty Foyle: The Natural History of a Woman(1940年)
「夫は還らず」(1943年)劇場未公開TV放映
「緑のそよ風」 Our Vines Have Tender Grapes(1945年)
「東京上空三十秒」 Thirty Seconds Over Tokyo(1944年)
「ローマの休日」 Roman Holiday (1953年)イアン・マクレラン・ハンター名義
「テキサスの死闘」 Terror in a Texas Town(1958年)劇場未公開、米JBSでTV放映、ベン・L・ベリー名義
「スパルタカス」 Spartacus(1960年)
「栄光への脱出」 Exodus(1960年)
「ガン・ファイター」 The Last Sunset(1961年)
「脱獄」 Lonely Are the Brave(1962年)
「いそしぎ」 The Sandpiper(1965年)
「ハワイ」 Hawaii(1965年)
「フィクサー」 The Fixer(1968年)
「ホースメン」 The Horsemen(1971年)
「ジョニーは戦場へ行った」 Johnny Got His Gun(1971年)カメオ出演も
「ダラスの熱い日」 Executive Action(1973年)
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