ドラマの登場から意表を突き、極め付きは、着任早々から、先発メンバーをその場で、部員に告げるのだ。部員たちは「なぜだ?」とあっけにとられるのだが、大道は、野球部選手の一人一人の過去3年分、429試合についてのデータをデジタル化して分析してタブレットに収めていたのだ。
「ルーズヴェルト・ゲーム」では、”青島杯”という社内の部別対抗試合が伝統的に行われていた。会社の創業者・青島会長(山崎努)が力を入れているのだが、社内では「製造部」の部員のほとんどが高校野球の甲子園経験者で力があった。製造部がいくら強いとはいえ、「野球部」が敗北しては面目丸つぶれとなる。ところが試合のほうは、製造部が、6回あたりまで5-2でリード。
それでも、野球部が巻き返して、9回裏には、7対6で、2アウト、ランナー1塁という
状況まで追い上げていた。製造部のピッチャーが故障発生。製造部も、持ち駒がなくなり、唯一残っていたのは、派遣社員・沖原だけだった。キャッチャーはライトをピッチャーに、沖原をライトのポジションにつかせようとするのだが、沖原が「私に投げさせてください」と申し出る。
試合を観戦している青島会長の横には社長秘書(檀れい)がいて、選手のデータ・実績などを逐一報告していた。「沖原は、高校時代に少しだけ野球をやっていたようですが、メンバーの中では、あまり期待できそうもない選手ですね」だった。
沖原は、製造部の派遣社員で、過去に何かあったようで、野球にはかかわりたくないという思いがあったのだが、実際にグラウンドで、選手の動きなどを見ているうちに、目が輝いてきていた。
9回の裏の時点で、所要を終えて、社長の細川充(唐沢寿明)が戻ってきたときに、青島会長が、細川に「賭けをしないか」という。青島が負けたら、自身の持ち株を、細川に進呈するというのだ。
もし青島が勝ったら、野球部の廃部を延期して、秋の都市対抗野球まで待ってほしいという申し出だった。細川は「その手には乗りませんよ。野球部が勝つほうに賭けるんでしょう」というが、青島の返答は以外にも「製造部でいいよ」だった。
「アメリカのルーズヴェルト大統領は、野球は8対7がおもしろい、といった」と細川に教えたのは青島だった。「同じ8対7でも、シーソーゲームもいいが、大量の点差を一気に取り戻す逆転こそだいご味がある」と語ったのも青島だった。
9回の裏、2アウトで、製造部が7対6で1点リード。
沖原のピッチング練習の一投は、キャッチャーの頭上を飛ぶ暴投。
見守っている選手たちからは、失笑や軽蔑の笑いが漏れる。
キャッチャーも、状況を察して、沖原に「打たせていいよ。守りが守るから」と安心させるようにいう。沖原は「ミットを動かさないでください」とキャッチャーに念を押す。
この意味を、われわれは後で思い知ることになる。
ピッチャーが振りかぶって第一球を投げた!
構えたミット通りに、剛速球がズバリ!
キャッチャーが、あまりの衝撃に、後ずさりするほどだった。
この光景に、どよめきが起きると同時に、ネット裏の観戦者は、総立ちになるのである。今のは何だ、とあっけにとられて、ことばも出ない。
この沖原のフォームなどを注目していた男こそ、野球部監督の大道だった。
この製造部梱包係のピッチャーの才能を持った男を野球部が放っておくはずもなく、次回以降、活躍の場があるのだろう。
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