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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">監督:深作欣二シリーズ第1弾「軍旗はためく下(もと)に」(1972)</span>


 
深作欣二作品シリーズ第一弾は「軍旗はためく下(もと)に」(1972)。
これは、すごい映画です。従来の戦争映画の、敵とのドンパチではなく、戦後二十数年を経て、いまもなお残る戦争の傷跡と当時の状況を生々しく描いた反戦映画だった。
 
以前、ちょうど5年前に「丹波哲郎追悼記念」の第1弾映画として取り上げています。
コメントは、なんと一人!(fpdと同世代で、学生の時にリアルタイムで見たであろう
NZRRさんでした。)
 
「軍旗はためく下に」の当時の評価は、たとえばキネマ旬報では、「2位」。
斉藤耕一など気鋭の監督が注目されたころで、日活が、青春物から「ロマンポルノ」
にシフトした時期で、8位、10位にその分野の名作が名前を連ねている。

 1972年度「キネマ旬報」邦画ベストテン
 第1位 忍ぶ川 監督:熊井啓
 第2位 軍旗はためく下に 監督:深作欣二
 第3位 故郷 監督:山田洋次
 第4位 旅の重さ 監督:斎藤耕一
 第5位 約束 監督:斎藤耕一
 第6位 男はつらいよ 柴又慕情 監督:山田洋次
 第7位 海軍特別年少兵 監督:今井正
 第8位 一条さゆり 濡れた欲情 監督:神代辰巳
 第9位 サマー・ソルジャー 監督:勅使河原宏
 第10位 白い指の戯れ 監督:村川透
(7,9位は未見)
 

 
内容は、軍人でありながら、敵前逃亡の罪で、処刑され、遺族年金をもらえなかった未亡人の真実追求の戦いと、戦時中の当時の状況がフラッシュバックされて、生々しく描かれていくというもの。主演の丹波哲郎は、TVの「三匹の侍」の一人で、刀の達人を演じて、その後は「キーハンター」などのリーダー格が印象的。映画では、なんといっても「砂の器」や「不毛地帯」。
 
ストーリー:
昭和27年に戦没者遺族法が施行されていらい、その対象外とされている遺族がいた。富樫軍曹(丹波哲郎)の遺族である。戦争が終ったが富樫は帰らない。
死亡通知が届いただけだった。しかしその死亡通知は戦死ではなく死亡としか
記されていない。
 
どうやら軍法会議にかけられ銃殺されたらしい。厚生省はそのことを理由に遺族年金の支払いを拒んでいる。納得できない妻(左幸子)は厚生省から紹介を受け、富樫軍曹のかつての戦友達に本当のことを聞きに行く。

そこには戦後の復興の波に乗り遅れスラム街で暮らす者(三谷昇)。
かつての軍隊経験をネタにお笑いコントを演じている芸人(ラッキー7)。
戦後の混乱期に戦争中の贖罪の念から酒におぼれ目を不自由にしてしまった者。米軍戦闘機が上空を飛び交う高校で教師をしている者(内藤武敏)。
戦犯として戦後裁かれる事なく復興の波に乗り成功している者。
さまざまな人間達だった・・・。

そこから物語が始まる。

“敵前逃亡”の確たる証拠はなく、サキエは、以来、約20年間、1971年(昭和46年)の今日まで夫の無罪を訴え続けてきた。そして、ある日、サキエはついにその小さな手掛かりを手に入れる・・・。

その手がかりというのは、亡夫が所属していた部隊の生存者の中で当局の照会に返事をよこさなかったものが4人いた、という事実。その4人とは、元陸軍上等兵寺島継夫(養豚業)、元陸軍伍長秋葉友幸(漫才師)、元陸軍憲兵軍曹越智信行(按摩)、元陸軍少尉大橋忠彦(高校教師)。

サキエはワラにもすがる思いで、この4人を追求していくと、その追求の過程で、更に多くの人物がサキエの前に現われてくる。師団参謀・千田少佐、小隊長・後藤少尉、富樫分隊員・堺上等兵、同小針一等兵
 
そして、サキエの前に明らかにされたものは、今まで想像もしたことのなかった恐るべき戦場の実相だった。・・・敵前逃亡、友軍相殺、人肉嗜食、上官殺害等々、そうしたショッキングな事件が連続する中で、サキエは否応なく、亡夫のたどった苛烈な戦争の道を追体験していくことになる・・・。

そして、カメラは一転して、戦時中にフラッシュバック・・・。
戦争の狂気。
さまざまな恐るべき現実を隠蔽するために、敵前逃亡をでっち上げ、軍が銃殺刑にする際の描写が鬼気迫る。気の弱い人には、勧められない(笑)。
 
銃殺される富樫軍曹を含む数人で肩を組んで、”天皇陛下、ばんざい”と言って亡くなっていく姿は、壮絶。このときの鬼気迫る丹波哲郎の名演が光る。
 
 


出演
 丹波哲郎 (富樫勝男)
 左幸子 (妻・富樫サキエ)
 藤田弓子 (娘・富樫トモ子)
 三谷昇 (寺田継夫)
 ポール牧 (ポール・槙)
 市川祥之助 (超智信行)
 中原早苗 (超智信行の妻)
 関武志 (秋葉友幸)
 内藤武敏 (大橋忠彦)
 中村翫右衛門 (千田武雄)
 江原真二郎 (後藤少尉)
 夏八木勲 (堺上等兵
 藤里まゆみ (堺上等兵の妻)
 寺田誠 (小針一等兵
 山本耕一 (厚生省課長)

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