fpdの映画スクラップ貼

「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「阪急電車 片道15分の奇跡」(2011)


映画 「阪急電車 片道15分の奇跡」 予告編
 
 
阪急電車 片道15分の奇跡」は、かなり「ド・ツボ」映画だった(笑)。
 オムニバス形式に、別々のストーリーがあるとき交差する、群像劇は好み。
今年の邦画では、これもベスト10入りだ。
 
日常の平凡さを描いて、映画化してしまうところがすごい。
関西のおばちゃんのイメージは、おしゃべり、うるさい、お節介という定評があり、
この映画に登場する関西おばちゃんは、それこそすさまじい。他人への配慮など皆無。関西おばちゃんのイメージが下がる?こと請け合い(笑)。昔、”かしまし娘”もいたし、事実そうなのだろう(爆)。
 
電車に乗るときの、空いている席に向かっての猛ダッシュはド肝を抜く。
一人遅れてくる人のために、反対側の座席にかばんを投げて「席を確保」なんていうのは序の口。
 
目撃していた、年季の入った老婦人は、ついに堪忍袋の緒が切れて、
騒々しいおばちゃんたちに「喝」を入れるが、結局、伝わらなかったようだ・・・。
 
関西地区のローカル電車(阪急電車)を舞台としたハートフル群像劇映画。監督は今作が劇場用映画デビューの三宅喜重
 

主演は「嫌われ松子の一生」「ゼロの焦点」などで好演した中谷美紀だが、存在感たっぷりの老婦人役の宮本信子がすばらしい。宝塚~西宮北口間を約15分で走る、えんじ色の車体にレトロな内装の、阪急今津線。その電車に、さまざまな「愛」に悩み、やりきれない気持ちを抱えながら、偶然乗り合わせただけの乗客たちがいた・・・。

映画は、タイトル、説明もないまま、三角関係の男女の会話から始まる。
 ”名前も知らない人たちは、私の人生に何の影響ももたらさないし、私も影響を与えない、と思っていた。しかし・・・”ではじまるこの映画。16分たって、はじめてタイトルが出る。
 
登場人物が、それぞれ脈略なく登場してくるが、共通しているのは、阪急今津線の駅の近くに住んでいること。これらの別々の人々が、やがて、交差する。

 
後輩に婚約者を寝取られたOL。彼氏のDVに悩む女子大生。息子夫婦との関係がぎくしゃくしている老婦人。
 
セレブ気取りの奥様たちとの付き合いに疲弊する
平凡な主婦。おしゃれな大学になかなか馴染めない地方出身の男女。年上の会社員と付き合いながら憧れの大学を諦めきれない女子高生。

電車内という限られた空間で、それぞれの人生がほんのちょっと重なり合い、影響し合い、そして離れていく・・・。

他人から勇気と元気をもらった人が、今度は別の人に、勇気と元気を与えていく。落ち込んでいる人に、勇気を持って踏み出せば、いつもとは全く違う景色が、人生が、そしてすばらしい出会いがあると映画は伝える。
 
後輩に婚約者を奪われ、復讐のために純白のドレスで結婚式に乗り込むOL・翔子役に、「嫌われ松子の一生」、「ゼロの焦点」で日本アカデミー賞最優秀女優賞に輝いた、日本を代表する女優・中谷美紀
 
彼氏との関係に悩みつつも、なかなか前に進むことができない女子大生・ミサ役には、愛くるしい存在感ながらも「ライアーゲーム」「アマルフィ」などの実力派女優としての地位を確立した戸田恵梨香
 
脚がすらりとして、ショート・パンツが可愛い(笑)。この男友達は、DVをふるい、「つきあってやっている」などとほざき最悪の人間だ。しつこく付きまとい、家のドアをガンガンたたくなど迷惑千万の男で、空手を習っているという友人の兄を立ち会わせ、ぎゃふんと言わせてやったのは大正解だった。
 
偶然、電車に乗り合わせた翔子とミサの生き方に影響を与える老婦人・時江役に、日本映画界屈指の女優・宮本信子宮本信子は、「マルサの女」など一連の伊丹映画以来だったので、最初は判らなかったが、堂々たる貫録の演技で、日本アカデミー賞の優秀助演賞候補にはなるだろう。
 
その他、南果歩谷村美月有村架純小柳友勝地涼玉山鉄二天才子役の芦田愛菜など話題のキャストがさまざまな愛のドラマを紡ぎだしている。
 
2011年4月29日からTOHOシネマズ日劇3ほか日本全国の東宝系劇場で公開されたが、関西では4月23日から先行上映された。上映館数が83スクリーンと少ない劇場館数ながら6月15日に興行収入10億円を突破した。
 
映画の中での気の利いたセリフも多い。
・老婦人のセリフ:「自分のためにも、(元彼とその相手がいる)会社はやめた方がいい」「次の駅で降りて、休んで行きなさい。いい駅だから」
・名門校の学生が、受験を目指す女子高生に:(勉強したのか、と聞かれて)「勉強しないで遊んでばかりいた・・・といいたいところだが、猛烈に勉強した。遊んで入ったと言われたら、むかつくよね」。それを聞いてほっとして、納得する受験女子。
・寝とられた相手の結婚式に出ることについて:「結婚式を思い出すたびに、後悔するように」出たというと、老婦人「いい根性ね。そういうところは好きよ」。
・女同志の友達に:「(みずくさい)何年友達をやっていると思ってんの。」
・女子中学生が仲間外れにしているいる生徒に「XXちゃんは、別の電車でもう帰った」というと「聞きもしないことを教えてくれてありがとう!」というと、あとから聞いていた翔子が「(落ち込んでいる女子生徒に)さっきはかっこよかったよ」と励ますところも、いい。
 
関西名物の肉まん180円も出ていた。なつかしい。
 
最後に、翔子(中谷美紀)とミサ(戸田恵梨香)が、再会し、どうしていたと聞くと、お互いに「人生の機微を味わっていた」と意気投合。「私の話を聞いて~」と喫茶店に向かいエンディング。後味のいい映画はいい。
 

出演:
高瀬 翔子 - 中谷美紀
森岡 ミサ - 戸田恵梨香兵庫県神戸市出身)
伊藤 康江 - 南果歩兵庫県尼崎市出身)
権田原 美帆 - 谷村美月大阪府出身)
門田 悦子 - 有村架純兵庫県伊丹市出身)
萩原 亜美 - 芦田愛菜兵庫県西宮市出身)
小坂 圭一 - 勝地涼
カツヤ - 小柳友
マユミ - 相武紗季(友情出演)(兵庫県宝塚市出身)
羽田 健介 - 鈴木亮平(友情出演)(兵庫県西宮市出身)
披露宴の会場係 - 大杉漣(特別出演)
小峰 比奈子 - 安めぐみ
小林駅の駅員 - 菊池均也
門田 悦子の友達 - 森田涼花京都府出身)
樋口 翔子 - 高須瑠香(大阪府出身)
健吾 - 高橋努
遠山 竜太 - 玉山鉄二京都府出身)
萩原 時江 - 宮本信子(若い頃の時江 - 黒川芽以
 
 ※追加:のちに「あまちゃん」でブレイクする「有村架純」も高校生役で出演。
 
☆☆☆☆
 「にほん映画村」に参加してます:クリック↓ポン! ♪。