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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

<span itemprop="headline">映画「カンゾー先生」(1998)</span>




カンゾー先生」は、見ごたえのある映画だった。

日本を代表する監督のひとり、今村昌平(1926年9月15日 - 2006年5月30日)の1998年の作品。


この映画では町医者の赤城風雨(通称カンゾー先生)を演じた柄本明日本アカデミー賞主演男優賞を得たほか、麻生久美子が体当たり演技で、同賞最優秀助演女優賞と新人賞などを受賞した。麻生久美子作品を振り返るシリーズ?で見た。


昭和20年夏。戦時下の岡山県日比が舞台。

町の海岸を、開業医・赤城風雨がひた走りに走る。

よく全速力で走ると思ったら、赤城は父の代からの家訓である「開業医は足だ 片足折れなば 片足にて走らん 両足折れなば 手にて走らん 疲れても走れ 寝ても走れ 走りに走りて生涯を終らん」を胸に、こうして病人の家を往診して回っているのだった。


病人たちは、いつでも赤城が飛んできてくれるので感謝していたが、どんな患者にも「まぎれもなく肝臓炎じゃ」と診断するものだから、いつしか赤城のことを「肝臓先生」と揶揄して、呼ぶようになっていた。そんなある日、田舎には珍しい二十歳になるかならないかの美少女・ソノ子(麻生久美子)が赤城医院に看護婦としてやって来る・・・。


ソノ子は、それまで売春(映画では“いんばい(淫売)”)をして、弟、妹の面倒を見てきたのだが、肝臓先生は、「これからは“いんばい”だけはやらないようにしなさい」とソノ子に言うが「わかりました。たまにだけ」と答えるソノ子。「それもいかん」と先生。



ソノ子の幼い弟、妹が ”いんばい”の意味も知らずに、無邪気に「ねえちゃん、腹へった。いんばい、たのむ」というのが、笑わせる。ソノ子は、全身でぶつかる演技で、大女優のソフィア・ローレンのデビュー時のようなおおらかで、野性味を見せていた。現在大活躍を続ける麻生久美子の原点(映画出演3作目)のような作品かもしれない。


カンゾー先生のそばで働いていて、ソノ子は、赤城の食事を忘れても患者のために働く姿を見て、一部から、藪医者といわれる先生に「先生は藪医者じゃない。寝ずにバクテリアを見ている。戦争が始まって、みんな自分のことばかり考えとる。うち、先生が好きになった」と叫ぶソノ子だった。

赤城は、上京して、大学関連の医学研究者や開業医仲間の会合で「肝臓病が国民病になっている。これまで治療した1,500以上のカルテがあるがこれを研究に使ってほしい」と訴え、出席した医者に感銘を与える。



あるとき、捕虜の一人、オランダ人が脱走するが、医者として、治療に当たる。オランダ人が以前は顕微鏡のエンジニアとして仕事をしていたことがわかり、顕微鏡の調整の仕方などを教えてもらう。


このあたりの会話はドイツ語。さすが医者、初歩的な会話ながらドイツ語で会話する。

Sprechen Sie Deutsch? (ドイツ語がわかるか) 
Wie heissen Sie? (名前は?)
Was ist denn los? (どうした?) 
Sie haben keine Angst! (心配ないよ)

(しばらくぶりにドイツ語を聞き、懐かしく苦笑いするfpd。爆)





昭和20年8月6日。

赤城は、瀬戸内海に、船で出かけていたとき鯨を発見。ソノ子は、槍を持って鯨と格闘する。

そのときの、鯨のギョロっとした目には、ぞっとする(笑)。ちょうどそのとき、遠くにキノコ雲が見えてくる。赤城とソノ子は舟の上から、そちらに眼を奪われる。


赤城は「あれは生きた病原体だ。肝臓の形をした雲じゃ。それとも、(肝臓を実験用に摘出された)袴田さんの姿か? いやいや戦争のすべてを恨んでいる姿じゃ」で終わる。


麻生久美子の演技は、せりふなどややぎこちなさも感じるものの、体当たりの演技で、代表作の1本かも。せりふの中で、隠語がぽんぽん飛び出してきた(笑)。


今村昌平監督は、「にっぽん昆虫記」にしても「エロ事師たちより 人類学入門」にしても、閉ざされた日本人の性について追求しているが、ソノ子のせりふ。(ソノ子が小さい頃、母から言われたことば 「“XXXX”の相手はひとりきりに・・・」ということばがあったが)その言葉を、赤城にぶつけるが、赤城は、困った顔をして「残された人生のすべてを“肝臓炎”の撲滅に賭ける」と力強く決意する。

この映画では、ファンだった松坂慶子(「愛の水中花」「蒲田行進曲」・・・)が、まだ?
ほっそりしていて・・・爆。共演はほかに清水美佐、田口トモロヲなども出演。


喜劇映画だが、なかなか骨のある映画だった。未見の方は、お勧めの1本。


監督作品:

盗まれた欲情(1958年)
西銀座駅前(1958年)
果しなき欲望(1958年)
にあんちゃん(1959年)
豚と軍艦(1961年)
にっぽん昆虫記(1963年)(ベルリン映画祭主演女優賞 )☆☆☆☆
赤い殺意(1964年)
エロ事師たちより 人類学入門(1966年)☆☆☆
人間蒸発(1967年)
神々の深き欲望(1968年)☆☆☆☆
にっぽん戦後史 マダムおんぼろの生活(1970年)
復讐するは我にあり(1979年)☆☆☆
ええじゃないか(1981年)★★
楢山節考(1983年)カンヌ映画祭パルムドール受賞 ☆☆☆☆
女衒 ZEGEN(1987年)
黒い雨(1989年)カンヌ映画祭高等技術委員会グランプリ
うなぎ(1997年)☆☆☆
カンゾー先生(1998年)☆☆☆
赤い橋の下のぬるい水(2001年)
11'09''01/セプテンバー11 (2004年)



☆☆☆