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映画「赤い光点」(原題:Red Dot, 2021)を見る。スエーデン発のワンシチュエーションスリラー。

赤い光点」(原題:Red Dot, 2021)を見る。Netflixオリジナル作品としては、初のスウェーデン映画。正体不明のスナイパーに狙われる恐怖を描いたワンシチュエーションスリラー。

伏線があって二転三転する面白さはある。なぜかわからず、どこからともなくスナイパーに狙われて、銃のレーザーによる赤い光線が自分の身体に照射されると恐怖感は募る。

監督は「マスター・プラン」(2015)のアラン・ダルボルグ。愛犬家には残酷なシーンがあり、動物愛護団体からクレームがありそう。

主人公の夫婦は自己中心で、自業自得の結果になるのは当然と思えてくる。全く感情移入はできず、ラストの後味の悪さは「ミスト」並み。

・・・
遡ること大学卒業式の日。ダビッドは無事就職も決まり、カフェテリアで彼女と二人食事をしていた。時計を見てトイレへと建つダビッド。校内放送を利用したプロポーズをナジャにするためだった。

しかし放送に間に合わず、計画は失敗に終わる。ガッカリしてトイレの個室を出るとそこにはナジャの姿があった。サプライズは失敗したものの、ナジャは喜んで返事をした。
それから1年半後、2人の関係は険悪になっていた。仕事で疲れる毎日。家事を全くしないダビッドにナジャは嫌気がさしていた。

そんな2人の生活に親身になってくれる隣人にナジャはまだダビッドに言っていない妊娠のことを告白する。隣人は自分は子どもを失ったがふたりなら良い親になると背中を押してくれた。

その隣人は、ある朝、ナジャの朝食にスイカとお茶を枕元に添えて「スキー旅行」へ誘う置手紙を残した。表で荷物を積んだ車を準備するダビッド。

お互いの関係修復のために夫婦で北部へハイキングへ行くことにした。車を走らせ、愛犬ボリスと共に郊外へと向かった。

ガソリンスタンドで給油中、居合わせた男がボリスを撫でていいかとダビッドに近づいてきた。

その男は、アフリカ系のナジャに目をやり「(犬だけでなく)彼女もかわいいな」と言う。その男とダビッドは微妙な雰囲気になり、男は「冗談だ」と告げ、売店へ向かった。

男のトランクのなかにシカの死体と猟銃が見えた。どうやら男は猟師のようだと推測するダビッド。車に戻り、出発するその時、男の車とぶつかり、車体を擦ってしまった。
心配するナジャの声をよそに「かすっただけ」とダビットはその場を後にする。

ホテルに到着すると、ロビーではナジャの姿を見た女性従業員はすぐに裏へ行き、別の男が対応にきた。

男は「彼女は別にレイシストではない。人見知りなだけだ」と弁明すると同時に、北部で見られるオーロラや夜の凍てつくような寒さの話をしだす。「中国人などは、オーロラもみずに帰っていく」と差別的に聞こえる言葉を発する。

奥のラウンジにはガソリンスタンドで出くわした男がこちらを見ていた。ダビットは思わず視線をそらした。

あくる朝、ハイキングへ出ようと車に向かうと、車体には傷と「黒人が乗っています」というステッカーが貼られていた。

あのレイシストの仕業だと確信したナジャは報復しようと彼らの車に引っかき傷をつけていった。

雪山をスキーで滑り、オーロラが見える星空の下テントを張って中でくつろいだ。ナジャは意を決してダビッドに妊娠を告白した。

戸惑いながらも喜ぶダビッド。テントの中で過ごす2人に外から「赤い光点」が照射されていることに気づいた。光点はふたりを狙うように動いていく。

愛犬のボリスは赤い光点が照射されている方向へ走っていった。その後銃声がし、2人はテントから離れる。

何者かが2人を狙っている。2人は凍える雪山の中を走り抜けていく。きっとあのレイシストたちが狙っているに違いない。近くにあった小屋で朝を迎えた2人はテントのあった場所へ戻っていった。

そこでダビッドが目撃したのは切断されたボリスの生首。「あいつら、殺してやる」とナジャは激昂する。ボリスの生首に手をかけると下に仕掛けられていたトラップ(ネズミ捕り用)にダビッドは腕を挟まれた。

連絡する手段もない2人は雪山を彷徨(さまよ)う。再び銃声が聞こえ、身をかがめて逃げるうちにふたりは離れ離れになってしまった。

・・・
2人を銃で撃ってきたのは、ガソリンスタンドで車に傷をつけた腹いせに仕返しをしてきたのかと思わせるが、実はこれはミスリードだった。

<以下、ネタバレ含む>
2人の新婚時代の過去にフラッシュバックされる。車を運転中に、助手席のナジャが運転しているダビッドにいちゃいちゃと絡んできたときに、前方から目をそらしたときに、子どもを轢いてしまったのだ。

ナジャが車から降りて子供のところに駆け寄ると、子どもは死んでいた。ナジャが警察に電話をとダビッドに促すが、少し運転してから、あとで電話しようと勝手にいい、死んでいないかもしれないともいう。

ナジャは「間違いなく死んでいる」というのだが、ダビッドは、新婚のスタートを優先してしまった。このことが原因で、すべてが狂ってくるのだが…。

北欧の極寒の中での、赤い光点から逃れるための逃亡は厳しいものだった。ダビッドが割れた氷の中に落ちて、海中で溺れるダビッド。ナジャは上半身を潜り込んで彼を探す。

なんとかダビットを引き上げることが出来たが、極寒の中、おぼれた彼の身体は冷え込んでいき、ナジャも体力の限界を迎えていた。

森の奥に小屋を見つけたふたりは、灯をともして傷の手当てをし、救助隊への連絡に成功した。

翌朝、救援の知らせを受けて駆けつけたのはスキーモービルに乗ってやってきた男は、あのガソリンスタンドにいたレイシストだった。

窓から外へ出て、姿を隠すふたり。そのまま小屋を離れ近くの穴倉に身を潜める。男は猟銃を小脇に抱え、こちらへ向かってきた。

そこで猟銃を抱えた男に出くわす。思わず腰を抜かしたナジャに男は「何をしているのか」声を掛ける。そこにダビッドが駆けつけ、男を石で撲殺してしまう。

正当防衛だと、自分たちに言い聞かせながら近くの民家で助けを呼ぶ。「救急車を呼んでくれ」とナジャは懇願するが、そこに住む男エイナルは救助隊ではなく、ある男へ連絡していました。

民家には2人のプライベートを追った写真が壁中に貼られていた。1人の男の子の写真に目をやるダビッド。その子供は、自分が車で轢いた子供だった。

連絡を受けて来た男は、2人の住むアパートの隣に住んでいた男だった。男はナジャに「いったい何をしたのか」と問い詰める。

何事もなかったように生きてきた2人を男は責める。自分は子どもを失い、絶望から立ち直れなくなった妻もなくしたという。

あの日、男とその子どもはドローンを飛ばして遊んでいた。ドローンを追いかけて子どもは車道へ飛び出し、そこへ通りかかったのがダビッドの車だった。

ドローンの映像から2人の素性を突き止めた彼は、周辺を調査し報復を果たすために彼らの向かいへ越してきたのだった。

隣人として2人との親交を深めながら、雪山のハイキングをダビッドに持ちかけ、そこで復讐を遂げようと企てていた。

男は2人への復讐としてダビッドにナジャのお腹をドリルでえぐるよう指示する。ダビッドはこれを拒否。

すると、男はナジャを撃とうとするが、そこへ発煙筒を放った救助隊の男ヤルモが駆けつける。

状況を混乱させたヤルモを男が撃ち、ヤルモはそのまま抱えていた銃でエイナルを撃ち抜いてしまった。

混乱に乗じてダビッドとナジャは逃走を図るが、ダビッドはひどい傷で歩けない。ナジャは先にその場を去り、ダビッドのもとへ男がやってきた。

彼に銃口を向ける男に、ナジャは持ってきた銃を突きつける。「銃をおろしなさい」とナジャは男に告げるが、後ろから男を援護していたモナによって銃殺されてしまった。
絶望したダビッドは「殺してくれ」と懇願するが、男はダビッドに「生きろ」とだけ告げて去っていった。

額(ひたい)に穴の開いたナジャの亡骸を横にダビッドは「(掛けがえのない人を失くして)ようやくあんたの気持ちがわかった」と叫んだ。

そもそも轢き逃げに端を発した出来事で、自分勝手なダビッドに同情の余地はゼロ。
前半で車を傷つけ、愛犬を襲った犯人と思われていたレイシストはミスリーディングで、真犯人をカモフラージュする役割を果たしていた。

犯人でなかったことは中盤で明かされるが、物語は森で彷徨うふたり同様、結末として、どこへ向かえばいいのかもやもやとさせる後味の悪い映画だった。

【キャスト】
ナンナ・ブロンデル、アナスタシオス・ソウリス、トーマス・ハンソン、ヨハネス・バー・クンケ、トーマス・べリストローム、カレド・ムストネン、アンナ・アスカラ―テ

スエーデン北部では、有色人種に対する偏見、差別などが今でも残っていることがさりげなく描かれていて、厳しいものがあることが感じられる。

 

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