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ドラマ「アキラとあきら」(WOWOW、全9話、2017)を見る(Netflix)。元銀行員の池井戸潤の経済小説が原作で、今月26日、映画「アキラとあきら」が公開されるので、予習も兼ねてみた。“半沢直樹ロス”ファン向けのドラマ(笑)。
最初にタイトルを見たときに、やや奇をてらったように思えてスルーしてきたが、映画化されたとあっては、“黙ってはいられない”(笑)。
斎藤工(たくみ)と向井理(おさむ)が2人のアキラを演じている。同じアキラでも、ひとりは零細企業の息子の瑛(あきら、斎藤工)、もう一人が大海運会社経営者一族の御曹司の彬(あきら、向井理)で、2人のアキラが、まるで運命ともいうべき出会いを通じて人生をかけた戦いに挑んでいくというストーリー。
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ドラマのストーリーは、バンカー出身の池井戸潤の、いわばホームグラウンドである銀行と融資先の丁々発止のドラマを描き「半沢直樹」の延長のようなドラマ。
2人のアキラが、劇中何度も繰り返して語られる言葉である「宿命」が縦糸になっている。映画「砂の器」でも、親と子の絆の宿命が描かれていた。
「アキラとあきら」のドラマの第9話(最終話)が、最大の盛り上がりを見せるが、すべての成り行きというのは、あらかじめ決められていた宿命だったのかもしれないという言葉が印象に残る。家族、人間の出会い、など偶然のようで、人間の意志に関係なく定められているのかもしれない。
登場人物では、わき役陣が充実している。
「バンカー(銀行員)もつらいよ」のようなドラマでは「半沢直樹」「花咲舞が黙ってない」のようなスーパーヒーロー、ヒロインが登場するが、現実には、出世をめぐってのドロドロや足の引っ張り合いが日常茶飯事のようだ。
1980年代ごろは、イケイケの時代で、バブルは続くよどこまでも、といった風潮があって、土地の価格も上昇し、銀行や証券も花形だった。そんな1980年代から、バブルがはじけた数年後の1997年くらいまでの日本が舞台になっている。
時代背景を見るのも面白い。1990年ごろの携帯電話が登場する。当時は、携帯電話はレンタルだった。1990年代半ばに携帯電話が売り切りとなって、個人でも所有するようになった。併せてピッチと呼ばれるPHSも登場した。
銀行員で、出世のみを目指し、融資先の会社の社員のことまでなど考えもしない「エレガントで冷酷なバンカー」もいれば、「銀行でのキャリアを捨ててもハートのあるバンカー」もいるというドラマだった。
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池井戸潤のドラマは、テレビ局にとっては、視聴率がある程度稼げるドル箱コンテンツということもあって、ドラマの放送は多く「半沢直樹」のような、平成のドラマ史に残る、超特大・場外ホームラン級の作品があるほか、おおむねヒットしている。
主なヒット作には「下町ロケット」(NHKと民放で放送)「ルーズヴェルト・ゲーム」「陸王」「ノーサイド・ゲーム」「花咲舞が黙ってない」「空飛ぶタイヤ」などがある。このほか主演俳優がイマイチだった?「ようこそ、わが家へ」(月9)「民王(たみおう)」などがあった。
ドラマが多い反面、映画化作品は少なく、池井戸潤作品で映画化されたのは「空飛ぶタイヤ」(2018)と「七つの会議」(2019)の2本だけだった。そして、3作目の映画となるのが「アキラとあきら」(2022)ということになる。
ちなみに、映画版では瑛役を竹内涼真、彬役を横浜流星という若手人気俳優がW主演している。映画版は8月26日から公開される。
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