「グッドバイ〜嘘からはじまる人生喜劇〜」(2020)を見る。監督は「八日目の蝉」「ソロモンの偽証」などの成島出(いずる)。主演は大泉洋と小池栄子。太宰治の未完の遺作「グッド・バイ」を独自の視点で解釈したケラリーノ・サンドロヴィッチ作の舞台劇の映画化。
舞台版でヒロインを演じた小池栄子が同じ役で出演。小池栄子の大食いで破天荒な普段の生活ぶりと化粧と衣装で決めた落差でみせる演技が見所。
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終戦から3年後、文芸誌「小説浪漫」編集長の田島周二(大泉洋)は優柔不断なくせに女性にはモテ、何人もの愛人を抱えていた。しかし田島には青森に疎開させた妻・静江(木村多江)と娘・幸子がいた。
その妻子を呼び寄せるために愛人たちと縁を切りたい田島だが、自分から言いだす度胸がない。そんな彼に、親友の作家・漆山(松重豊)がある提案をする。
それは1人の女性を偽の妻に仕立て上げ、妻に愛人の存在がばれたことにして別れを告げるというものだった。
そこで田島は担ぎ屋の永井キヌ子(小池栄子)に、嘘の妻を演じてもらうように頼む。キヌ子は田島に報酬をもらう事で同意。かくして二人は愛人たちを次々に訪問することにする。
美しく着飾ったキヌ子と田島は、1人目の女性の所に向かう。戦争で未亡人となり、花屋で働いている青木保子(緒川たまき)。キヌ子を妻だと信じた保子は、別れを覚悟して思いつめた様子を見せる。
その姿に心が揺らぐ田島だが、彼女のポケットに札束をねじ込み「グッドバイ」と呟いて別れを告げるのだった。
愛人清算に早くも心が折れ始める田島を、漆山は適当な助言であしらう。
漆山が、妻と娘の疎開先である青森に取材旅行に行くことを知った田島は、娘にプレゼントする人形を代わりに渡して欲しいと頼む。
2人目の女性は文芸雑誌の挿絵画家・水原ケイ子(橋本愛)。田島とキヌ子が家を訪ねると、同じ建物の2階に花屋の保子が住んでいて、最近男性に振られて2度も自殺未遂を図ったということを知る。
ケイ子の屈強な兄・健一(皆川猿時)は「そんな男は俺が殺してやる!」と息巻く始末。思わぬ偶然と、ケイ子の兄の剣幕に怯え、田島が話をそらして帰ろうとすると、保子が2階から飛び降り自殺を図った。
命に別状はなかったが「3回目の自殺未遂だ」と一同は騒然とする。
3人目の女性を訪ねる約束の日の朝、妻・静江から田島宛てに電報が届く。そこには、愛想が尽きたから離縁する、もう仕送りは要らないと記されていた。
それを読んだ田島は、突然胃の痛みに苦しみ始める。キヌ子が田島を担いで、3人目の女性である医師・大櫛加代(水川あさみ)の元を訪れると、加代は慣れた様子で田島に注射を打って落ち着かせる。
田島は胃腸が弱く、すぐ胃痙攣(いけいれん)を起こすのだという。加代のところにも静江から手紙が届いていたが、加代は田島と真剣に付き合うつもりはなく、キヌ子が妻のふりをしていることもあっさり見抜く。目覚めた田島に向けて、加代は「グッドバイ」と別れを告げた。
一方、編集部には怒り心頭のケイ子の姿があった。もう挿絵は描かないというケイ子に対し、編集部員の清川(濱田岳)が説得を試みるが「田島さんに『グッドバイ』とお伝えください」と言い残してその場を去ってしまう。
夫・周二に「グッドバイ」を言うために青森からやってきた妻・静江。
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モノクロスタンダードの映画スクリーンに、原爆投下のシーンが映し出される。終戦直後の映像が続き、画面が横に広がってワイドスクリーンになる。このあたりの導入部は「ラ・ラ・ランド」を思い起こさせる。
ひょうひょうとして優柔不断な情けないダメ男ぶりを演じると天下一品の大泉洋は適役。ハットを被ってのスーツ姿は「浅草キッド」とダブル。
親に捨てれれて育ったというキヌ子を演じる小池栄子は、とにかく食べ、お金に目がない女。田島(大泉洋)から、偽の妻を演じるように頼まれるが、田島がケチだと知っているので、報酬を釣り上げる貪欲さ。
田島が十数人もいるという愛人たちに「グッドバイ」を告げようとしていくが、逆に、愛人たちや妻からも「グッドバイ」されるという喜劇を描いている。
謎の易者(戸田恵子)の言葉通り、田島の身近にパートナーがいると予言された通りの結末となる。
編集スタッフの濱田岳が、易者を信じて宝くじを当て金持ちになるが、歯をすべて金歯にしたのが笑わせる。
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主な登場人物:
■田島周二:大泉洋:優柔不断なダメ男の雑誌編集長。なぜかモテていたが、妻や愛人たちから逆にグッドバイされる。キヌ子への愛に目覚める。
■永井キヌ子:小池栄子:親から見捨てられるおたくましく生きる女性。田島の偽妻を演じるが、やがて田島に惹かれる。
■大櫛加代:水川あさみ:医師。さっぱりした性格。
■水原ケイ子:橋本愛:文芸雑誌の挿絵画家。
■田島静江:木村多江:周二の妻。一人娘・幸子がいる。田島に愛想を尽かし、離婚して作家・漆山と再スタートすると決める。
■水原健一:皆川猿時:ケイ子の兄。
■デザイナー:池谷のぶえ
■佳乃:犬山イヌコ
■易者:戸田恵子:いかにもインチキそうな易者だが、ズバリ占う。
■清川伸彦:濱田岳:編集長の使いパシリだったが、宝くじを当てておお金持ちになり、態度もガラリと変わり横柄になる。
■漆山連行:松重豊:作家。青森出張のついでに、周二の代わりに周二の妻の疎開先を訪ね、周二の妻子と親しくなる。
■野口:曽世海司
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