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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「いのちの停車場」(2021)をみる。成島出監督、吉永小百合主演。

     

いのちの停車場」(2021)をみる。成島出監督、吉永小百合主演といえば「ふしぎな岬の物語」(2014)以来のコンビ。在宅医療、死生観、安楽死といったテーマで、人生の締めくくり方などの問題を問いかける。

前半は、ユーモアなどもあって進むが、後半は、在宅医療の現実や、死期を迎える人々の終わり方などを描くヒューマンドラマ。

東京の救命救急センターで働いていた女性医師が、ある出来事をきっかけに退職し、金沢に帰郷する。そして彼女は、診療所で在宅医として働き始めるが、これまで自分が働いてきた現場とは異なる治療方針に戸惑う。そんな中、とある人物が彼女を追って金沢にやって来る。

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大きなトンネル事故が起こった日。白石咲和子(吉永小百合)が務める大学病院にも事故に巻き込まれた重体患者が次々に運ばれてきた。救急救命医の咲和子は、的確に看護師に指示を出し、治療にあたる。

緊迫する治療室に、病院の事務員・野呂聖二(松坂桃李)が幼い子供を抱えてやってきた。病院の近くで車にはねられたいう女の子は、ひどく辛そう。

咲和子は点滴を用意するが、トンネル事故の患者が急変しそちらへ向かう。苦しそうな女の子を前に、野呂は自分が点滴を打つことを決断。

野呂は、医学部を卒業したものの医師国家試験に落ち続けており、医師免許を持っていなかった。

この事が、大学病院で問題となる。世間体を何より気にする上役たちは、野呂を問いただす。そこに当日の担当責任者だった咲和子が現れ「野呂君は人間として正しいことをしました。責任なら現場の責任者である私が取ります」と啖呵を切って咲和子は長年勤めた大学病院を退職した。

咲和子は、実家の金沢へ帰ることにした。バスから降りると年老いた父が迎えに来ていた。「おかえり」。幼い頃、咲和子が母に抱かれ父を迎えに来ていた思い出のバス停だった。

町の小さな診療所「まほろば診療所」で在宅医として再出発することを決めた咲和子。診療所では、陽気な院長・仙川徹(西田敏行)と、しっかり者の看護師・星野麻世(広瀬すず)が温かく迎えてくれた。

事故で車いす生活になってしまった院長の変わりに、咲和子は麻世と一緒に患者たちの家を一軒一軒、診察に回る。坂道の多い町は、自転車では大変だが…。

1人目の患者は、末期の肺癌患者、寺田智恵子(小池栄子)。職業は芸者。「芸が出来なくなったら芸者は終わり。私の人生もおしまい」。仕事を何よりも愛している彼女は、最期まで芸者でいることを選びました。

2人目の患者は、脳出血で入院後、在宅治療中の胃瘻患者、並木シズ(松金よね子)。夫の徳三郎(泉谷しげる)と暮らす自宅は、目の当てられないゴミ屋敷となっていた。

在宅治療を強く望む徳三郎は、寝たきりの妻を愛してはいるものの老老介護に疲れ果てていた。「シズは他人に世話されるのが嫌いなんだよ」。咲和子のホームヘルパーの提案に激怒。

3人目の患者は、脊髄損傷で四股麻痺となった江ノ原一誠(伊勢谷友介)。IT企業の社長である彼は、金に糸目は着けないから、在宅医療で自分を蘇らせて欲しいと言う。

「在宅医療は信用できないと思っていた」

困難な状況であっても諦めず、未来を切り開く姿を、社員に見せたいからだった。

4人目の患者は、8歳の小児癌患者、若林萌(佐々木みゆ)。小さい身体で幾度にわたる抗がん剤治療を続けてきた彼女。「パパもママも、萌に頑張れって。でも、萌、何を頑張ればいいの?」。

 「がんばれ、がんばれって、何を頑張ればいいの?」

萌の母親・祐子(南野陽子)は、子供に迫る死を受け入れることが出来ず、次々と新薬を使った治療を求め続ける。

5人目の患者は、末期の膵臓癌患者、宮島一義(柳葉敏郎)。元高級官僚の宮島は、最期を穏やかに故郷で暮らしたいと、妻の友里恵(森口瑤子)と共に金沢に帰っていた。

また幼いころ白石咲和子(吉永小百合)を知っていた中川朋子(石田ゆり子)は、がんが再発したため咲和子を頼って訪ねてきた。余命を悟っている朋子は、最後に咲和子らと楽しい時を過ごすのだったが…。

       年齢を感じさせない美女2人

田中泯(たみ)(1945年3月10日生まれ)と吉永小百合(1945年3月13日生まれ)の3日違いの同い年が、父娘を演じるが、小百合がいかに若々しいかということ。

印象に残るシーンは、余命いくばくもない若林萌(佐々木みゆ)が海を見たいというので、最初は反対していた両親も、一緒に出掛けて子供がはしゃいで、野呂(松坂桃李)の背中におぶさって、海を泳ぐシーンなどをみて喜ぶ。

「STATION」と書かれたレストランバーの様なたまり場では、地元の知り合いの仲間たちが集まって、マスター(みなみらんぼう)のギターなどを聞く。朋子(石田ゆり子)が初めてやってきたので、院長・仙川徹(西田敏行)が店について講釈をする。

       「本人はあれで丹波哲郎のつもりなんですよ」

すると、野呂(松坂桃李)が「いまのは丹波哲郎のモノマネのつもりなんですよ」と言い、野呂自身がビートたけしのモノマネをする。「次は朋子(石田ゆり子)さんの番」と野呂からいわれて、朋子は「似てないですけどね」と武田鉄矢のモノマネをするのだった。(影の声:丹波哲郎のモノマネならfpdに任せておけ…笑)

このたまり場のシーンだけは、なぜか赤味がかった色調の画面だった。

人間には「生・老・病・死」(生きる・老いる・病気になる・死ぬ)の4つの苦しみがあるといわれるが、中でも、必ず訪れるのが「死」。

映画では、咲和子(吉永小百合)の父が、これ以上、生きて苦しみたくないというので、自殺未遂を図るが失敗。咲和子は本人の強い希望があり「永遠の開放=安楽死」もあるのではないかと逡巡する。

「日本では、安楽死は犯罪になりますからね」というセリフもあった。

ある程度の年齢まで生きたら、ピンピンコロリと行くのがベストなのだが…。

吉永小百合という大ベテラン女優と、若手実力派女優となりつつある広瀬すずの共演も見どころだった。柳葉敏郎も還暦を超え(今年1月で61歳)も、あの「踊る大捜査線」の俳優も老境の役を演じるとは…。

舞台となる田舎町の診療所は、在宅医療が中心の病院で、地元の地図が壁に貼ってあり、患者のいる家の場所に「ポストイット」がほんの数か所貼ってある。

大都会の大病院からやってきた咲和子はこれを見て驚く。しかし、時を経て、壁のポストイットの数が数十以上に増えていた。

しかし、咲和子も、この病院に別れを告げるときがやってくる…。医者の資格を持っていなかった野呂(松坂桃李)も、この病院を去り、資格を取ってきっと戻ってくるというのだが…。

さすがにみなが去っていき寂しさを禁じ得ない星野麻世(広瀬すず)だが、野呂が戻るのを期待できるのか…。

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成島監督作品(劇場映画)※=脚本なども合わせて担当

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