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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「劇場版 Doctor-X Final」(2024):最高峰医療ドラマの集大成。

12年間続いた医療ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子」の映画版で完結編となる「劇場版 Doctor-X Final」をMOVIXさいたまで見る。集大成という意味ではうまくまとまっていて劇場で観る価値がある作品だった。


米倉涼子は大門未知子は分身と語っていたが、その圧倒する存在感を見せているほか、今風の合理主義的な若手の天才医師を演じる染谷将太が2役を好演している。


ドラマは東帝大学病院を舞台に昔も今も変わらないと言われる院長を頂点とした”白い巨塔”の世界が描かれてきたが、若い院長が乗り込んできたことで、老害や院長の後に大名行列が続く総回診などの悪しき慣習に「メス」が入ることになるのだが…。

<上映時間の関係で「日本語字幕版」で見た>

これがよかった。手術中に医療の専門用語などが飛び出すが文字であらわれるので理解を助ける。

未知子が「メッツェン」「グラフト」などと矢継ぎ早に助手に命じるが、言葉が目からも入るのでわかりやすい。

  メッツェン

ちなみに「メッツェン」は「メッツェンバーム剥離剪刀(はくりせんとう)」のこと。医療では「はさみ」をメッツェン(=メス)と呼ぶ。

グラフト」とは、やはり医療用語で、移植治療に用いられる皮膚や血管、骨、筋肉などの組織片を指す。

・・・
フリーランスの天才外科医・大門未知子(米倉涼子)は、某国の大統領の命を救うため日本を離れていた。手術にあたっては、大統領の護衛兵士たちが銃を構えていて、失敗は許されないという状況だった。

のちに大統領の手術が成功したというニュースが駆け巡った(執刀した医者の名前は明かされていなかった)。


その頃、東帝大学病院では、院長が蛭間(西田敏行)から海老名(遠藤憲一)に代わったばかりだったが、そこに若き新病院長・神津比呂人(こうず・ひろと、染谷将太)が現れた。

比呂人に不信の目を向ける院長や側近に対して、比呂人は「電話が入るから出てもらえればわかる」という。電話が鳴り蛭間が受話器を取ると「はい、わかりました」と蛭間が返していた。相手は病院長の人事などにも影響力を及ぼす大物政治家か。

比呂人は凄腕の外科医で政財界にも顔が利き、双子の弟・多可人(たかひと、染谷将太2役)は医療開発会社で資金のバックアップもあった。


比呂人による徹底的な合理化の大号令がかかり、医局内は戦々恐々。次々とクビを切られる医師や看護師たちだが…。

「ぞろぞろ後ろについてくる行列はムダ」とタイパ重視の新院長が大ナタを振るうことになる。

         リストラを言い渡されて激高する医師も…。

                       「メロンです」と、高額な請求書を病院長に渡す神原昌。

     事務所内では麻雀やおふざけでやんちゃぶりの昌(あきら、右)

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映画版で大門未知子の過去や、ドラマの名セリフ「私、失敗しないので」の誕生、神原(岸部一徳)との関係などが初めて明かされた。


外科医の道を歩む森本光(田中圭)は、未知子に憧れ、未知子がどのようにして外科医の腕を磨いてきたのかのルーツを探すため、未知子の故郷を訪ね歩く。

幼いころの未知子を知る小学校の同級生や教師によると、気が弱く控えめだったという。実験でカエルを扱うことになったが、怖がって触れなかったという。

現在外科医ですばらしい腕の持ち主であると伝えると、皆驚くのだった。カエルを箱に入れて隠し、海辺で解放する優しさも持ち合わせていた。


大門の外科手術の原点はメキシコにあった。メキシコの野戦病院のようなところで、神原(岸部一徳)のもとで、多くの技術を学んでいた。


ドクターXともいわれた神原の「患者は(たとえテロリストであっても、生きている人間は)誰であっても救わなければならない」そして、自分に言い聞かせるようにスペイン語

ジョ・ヌンカ・ファジョ

とまじないのように繰り返しつぶやくのだった。

この意味こそ、大門未知子がのちに常に発言している「私、失敗しないので」という意味だった!また神原は「師匠の私を超えろ」といい未知子を激励。


大門未知子は、神原の教えを守って、東帝大学病院にとっても神原にとっても宿敵とも思える神津比呂人の手術に全身全霊で取り組む。その姿に医師たちも「そこまでしなくても」というのだが、未知子には通じなかった。


いまや植物人間状態になっている神原の心臓を比呂人に移植するという未知子の決断には、医療仲間から犯罪になると中止するようにという声が上がるが「昌さん(神原)なら絶対にそうする」と初志貫徹する。


モニターで、手術の一部始終を見ていた蛭間会長は「手術はなかった。隠ぺいしろ」と海老名に命じるのだった。


神津比呂人は、30年前に、神原の手術のせいで、自分の双子の弟が不随になったことで神原に復讐を誓っていたのだが、優秀な外科医として未知子を評価して、弟の手術を未知子に依頼する。


「この手術だけは失敗したくない」と大門に弟の手術を頼むが「手術に失敗していい手術などというのはない」と大門に言われる。


神津比呂人は合理主義者で(病院内の教授を中心とした総回診は)「ギョイギョイ言ってムダ」「タイパよく働いてください」と医局員たちに言い渡す。海老名は「なにパっていったの?」と新語などに疎い。

手術が成功した比呂人は、未知子から手術のモニターを見せられて、未知子に「ありがとう」と謝意をみせていた。

心臓を取り除かれ、植物人間状態になっていた神原昌(岸部一徳)には多可人の会社で製造された人工心臓が埋め込まれていた。


未知子は、神原を時間に許す限り付き添っていたが、神原の足のうらに「へのへのもへじ」の文字を書き、それが神原が目覚めたた場合の動きに合わせて動くことを期待するものだった。

大門に代わって城之内博美(内田有紀)が付き添っていると、足裏がかすかに動くのだった。

・・・
<主な登場人物>
■大門未知子:米倉涼子…「神原名医紹介所」に所属しながら、様々な病院を渡り歩いているフリーランスの外科医。組織に属さない一匹狼だが腕は一流。報酬は桁違いに高いが外科医としての腕は超一流。「私、失敗しないので」が信条。

■神原昌(かんばら・あきら):岸部一徳…神原名医紹介所・所長。かつてドクターX と呼ばれた元外科医で大門の師匠。大学病院で大門が関わった手術費は高額で、請求書とともにメロンを届ける。趣味は麻雀。飼い猫が2匹いて、事務所の看板猫で茶トラが「ベン・ケーシー」とその息子の子猫「ギャノン」。

■蛭間重勝西田敏行…東帝大学病院の医院長。海老名に院長を譲り、自身は会長に。表向きは温和だが、逆らう者はバッサリと切り捨てる冷血漢。お金に執着心がある。

■海老名敬:遠藤憲一…蛭間元院長に対して常に「御意(ぎょい)!」と絶対服従。蛭間から院長に指名され「光栄至極に存じます」と有頂天だったが、それもつかの間、理事会で不信任決議が採択され、新院長に神津比呂人が就任。降格させられ、付け髭も外す。「タイパ」という言葉も知らない無知ぶり。

■森本光:田中圭…新米医師時代に未知子と出会う。地方の病院院長の息子だったが未知子に憧れ、外科修業をすべく海外へ留学ののちに帰国。未知子の故郷に赴き、生い立ちを調べる。

■城之内博美:内田有紀…「帝都医科大学付属第三病院」に勤務していた頃に大門未知子と出会ったことでフリーに転身。神原名医紹介所に所属。

■神津比呂人(こうず・ひろと):染谷将太…天才外科医で、サイコパスな東帝大学病院の新院長。多可人の双子の兄。若き天才医師で、一人15時間労働のシフトを作成するほどの合理的主義者。「50歳以上の医者はゴミです」と言い切り、リストラを断行する。弟の手術を大門に依頼する。

 比呂人(左)多可人

■神津多可人(こうず・たかひと):染谷将太(2役)…医療機器メーカーのCEO。比呂人の双子の弟。先天的に足に障害があり、車椅子生活を強いられている。生まれつき心臓も悪く、将来完全に機能しなくなるリスクがあるため、完全置換型の人工心臓を開発中

■氷室淳:馬場徹…新病院長・神津比呂人の右腕で事務長。

■河野明彦:綾野剛…大門未知子の医大生時代の同期。開業医として広島・呉で診療所を営んでいる。未知子のルーツを探るため、未知子の生まれ故郷・呉を訪ねた森本と出会う。未知子の知られざる過去を知るキーパーソン。

■進藤悠介:田口トモロヲ…神津比呂人の双子の弟で、生まれつき心臓が悪い多可人の主治医。

■加地秀樹:勝村政信…「腹腔鏡の魔術師」と呼ばれるほど腕がいいが、金には汚い。大門未知子の手術に協力したせいで左遷されるなど、数々の迷惑を被ってきたため、未知子を「デーモン」と呼んで疫病神扱いする。

■原守:鈴木浩介…「帝都医科大学付属第三病院」時代、未知子の手術に協力したせいで地方の分院へ転勤。上の人間に頭が上がらない半面、患者の心に寄り添う医療を目指す温かい男でもある。

 

西田敏行の遺作となった作品で、最後に英語で追悼の字幕がある。

 

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