2016年公開の「ラ・ラ・ランド」は、かつての有名なミュージカル映画のオマージュのシーンが多いということは知っているが、ある記事によると、その数は10作品を優に超えるというから驚く。
デイミアン・チャゼル監督は、名作ミュージカルへのリスペクトが強かったのだろう。第87回アカデミー賞ではチャゼル自身の脚色賞をはじめ、作品賞を含む5部門にノミネートされ、助演男優賞(J・K・シモンズ)、録音賞、編集賞の3部門を獲得した。
確かに「雨に唄えば」(1952,3シーン登場)などはすぐにそれとわかるが、それ以外にも目白押しのようだ。
トップバッターは、冒頭に登場するロサンゼルスの高速道路のシーン。これはフランスのミュージカル映画「ロシュフォールの恋人たち」(1967)へのオマージュ。
主人公ミア(エマ・ストーン)が女友達とカラフルなドレスを身に纏(まと)ってパーティーに向かうシーンは、シャーリー・マクレーンがキュートな魅力の「スイート・チャリティ」(1968)へのオマージュ。このシーンが一番好きかも(笑)。
傘を持って街灯の周りで踊る有名なシーンの「雨に唄えば」(1952)は、傘こそないが該当の周りで踊るシーンがあった。クライマックスの群舞のシーンも「雨に唄えば」へのオマージュでだ。
ベンチに座って、最初はツンツンしてた2人が徐々にいい雰囲気になっていくというシーンは「踊らん哉(おどらんかな)」(1937)へのオマージュ。フレッド・アステアとジンジャー・ロジャース共演のロマンチックでコミカルなミュージカル作品。原題の「Shall We Dance?」を”踊らん哉”って時代を感じさせる(笑)。
映画のハイライトシーンのひとつが、マジックアワーの空とロスの夜景が美しい公園での踊り。このシーンは「バンド・ワゴン」(1953)へのオマージュで、フレッド・アステアとシド・チャリシー共演のミュージカル。
マジックアワーの中でセブが歌うシーンは「ウエスト・サイド・ストーリー」(1961)へのオマージュ。
夜空を舞い上がりながら踊るミアとセブのシーンは「ムーラン・ルージュ」(2001)へのオマージュ。
クライマックスのミュージカルシーンから、オーディションに受かり、パリで撮影に挑んでいるらしいミアのシーンは、オードリー・ヘプバーン主演の「パリの恋人」(原題:Funny Face, 1957) へのオマージュ。周囲に星が散ったような空間で白いドレスを着たミアと踊るセブのシーンは「踊るニュウ・ヨーク」(原題:Broadway Melody of 1940,1940)のオマージュ。
このほかモーリス・シュヴァリエ主演の「今晩は愛して頂戴ナ」(原題:Love Me Tonight, 1932)などがある。
(追加)映画評論家の町山智浩氏によると「ラ・ラ・ランド」の下敷きとなっているのはマーティン・スコセッシ監督の「ニューヨーク、ニューヨーク」(1977)であり、話はそっくりという。ライザ・ミネリが、映画館の切符切りから女優になって有名になり、別れたロバート・デ・ニーロが映画を数年後に見ることになる。
「ラ・ラ・ランド」はこうした元ネタをつなぎ合わせて一つの夢を追う物語を描いている。
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