「ブラック・クランズマン」(原題:BlacK k Klansman、2018)を見る。黒人刑事が白人至上主義団体「KKK(クー・クラックス・クラン)」潜入捜査した実話をつづったノンフィクション小説を「マルコムX」などブラック・ムービーで知られるのスパイク・リー監督が映画化。
主演はデンゼル・ワシントンの息子、ジョン・デヴィッド・ワシントンでスパイク・リー監督の常連。相棒の白人刑事に「スター・ウォーズ」シリーズでカイロ・レン役を演じるアダム・ドライバー。リー監督の集大成的な作品と位置づけられている。
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1970年代なかばのコロラド州コロラド・スプリングス。街で初めての黒人刑事となったロン(ジョン・デヴィッド・ワシントン)は、黒人集会への潜入捜査の後、情報部へ異動となる。ロンはそこでKKK(クー・クラックス・クラン)のコロラド・スプリングス支部におもむろに電話し、差別主義の白人になりすまして、まんまと電話相手に気に入られる。
ロンは同僚の白人刑事フリップ(アダム・ドライバー)を自分の変わりに仕立てる潜入操作を提案し、電話対応はロン、対面はフリップという2人体制でKKK潜入捜査を開始する。
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映画の中で、映画史に残る不朽の名作「國民の創生」(原題: The Birth of a Nation)は、D・W・グリフィス監督による1915年公開の無声映画)が登場するが、この映画は黒人に対する差別を社会に広げてしまった作品。
KKKは、南北戦争後に一度消滅したが、20世紀になって復活し、今も残っているのは、この映画の影響と言われている。
リー監督は、そんな名作映画に刻まれてしまっている差別意識を「ブラック・クランズマン」であぶり出そうと試みている。
また、アメリカを作ったのは白人であり、KKKが「アメリカ・ファースト」を叫ぶシーンがあり、映画が製作された時(2018年)のトランプ大統領の「アメリカ・ファースト」のシーンも登場させて、皮肉ってみせている。
黒人と白人では一般的に英語のアクセントが違うとみられているが、この黒人のアクセントにまつわるイメージを逆手に取った作品でもある。
黒人刑事のロンが、潜入捜査の電話対応を自分でやると上司に告げると、上司は「黒人の喋り方じゃすぐにバレてしまう」と言う。ところがロンは見事にその場でアクセントを使い分けて「白人」になりきってしまう。しかも、白人が黒人に対しての暴言なども織り交ぜていて、電話越しにロンの英語を聞いたKKKの幹部も、彼が白人だと完全に認識してしまうのだ。
KKKとロンが面会するところが山場。ロンになりすました白人刑事フリップがKKKのパーティに出席するが、KKKのメンバーの中に、かつてフリップに逮捕された人間がいて、感づかれてしまうというサスペンス的要素もある。
エンタメ映画としても面白い作品だった。
KKKを扱った映画としては、「ミシシッピー・バーニング」(1988)などが印象に残る。