「隔たる世界の2人」(原題:TWO DISTANT STRANGERS、2020)を見る。今年のアカデミー賞の短編映画賞部門にノミネートされている30分のタイムループ・ドラマ。タイトルは、黒人と白人の間に横たわる溝のことで、人種差別問題を扱っている。悪夢に苦しむ黒人が、何度も悪夢を見るが100回みても、最終的に警官に差別されて殺されるという結果になるというストーリー。
監督はエミー賞受賞脚本家トレイヴォン・フリーとマーティン・デズモンド・ローが共同監督。主演はラッパーでもあるジョーイ・バッドアス。32分。
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前日知り合った女性と一夜を共にした男が、朝、愛犬ジータ―の待つ家に帰ろうとするが、外に足を踏み出すたびに、最悪の日が繰り返される。どうあがこうと結末はいつも同じになる。
短い作品ながら、考えさせられる作品。黒人と警官とのやり取りのシーンが何通りも描かれる。何もしていないのに、黒人というだけで、職質し拘束しようとする警官。近くにいたおばさんが、スマホで一部始終を撮影し「何もしていないのに」と訴える。
あるシーンでは、NYPD(ニューヨーク市警)の数人に取り押さえられ、呼吸困難に陥ったり、またあるときは、パトカーで家まで送ってもらうことになるが、車の中では、プライベートの会話などで、話が弾み、打ち解けたはずだったが・・・。
別れのあいさつを交わした後で、警官の態度が豹変する。
「こんなに黒人と長話をしたのは初めてだ。話がうまいのには参った。(人を丸め込む)演技がうまいな。だまされないぞ」と黒人に銃を向けて発砲するのだ。
結局、無力感と絶望感が残る結末だった。
4月9日からNetflixで配信。