「ドイツ映画祭 HORIZONTE 2021」が5月20日から23日にかけて東京・渋谷ユーロライブで開催される。ドイツ映画祭は、2年前の3月に同じ会場で開催されて、見に行った。会場周辺が迷路のようでわかりにくかった。ケイト・ブランシェットが一人で13役を演じた「マニフェスト」という映画はブランシェットの変幻自在ぶりの演技力にうなった。
シネコンやミニシアターでも公開されないような埋もれた作品を上映している。今年は、2019年・2020年ベルリン国際映画祭での受賞作で日本未公開作品を中心に6本の劇映画と1本のドキュメンタリー映画の計7本が上映される。ベルリン国際映画祭金熊賞(最高映画賞)受賞作「悪は存在せず」は見逃せない。
上映作品は以下の通り。
■「未来は私たちのもの」:映画祭のオープニング作品で、1994年生まれのイラン系ドイツ人のファラズ・シャリアット監督による自伝的デビュー作。ドイツにおける移民系の青年の成長とLGBTQカルチャーを繊細かつポップに描き、第70回ベルリン国際映画祭テディ賞を受賞。監督は日本のアニメファンだといい、アニメ愛が随所に見られるという。
■「悪は存在せず」(原題:(英)There is no Evil):ドイツ在住のイラン人モハマッド・ラスロフ監督による第70回ベルリン国際映画祭金熊賞受賞作。東京国際映画祭ジャパンプレミアで上映された。
■「マリアム エヴィーン刑務所に生まれて」:政治犯が収容されるイランの刑務所で生まれ、その後ドイツに渡った女優、作家のマリアム・ザレーが初めてカメラを通じて自身の誕生の場所に迫るドキュメンタリー映画。
■「オライの決断」:ドイツにおけるイスラム教徒のコミュニティの現実を描くメフメト・アキフ・ビュユックアタライ監督(トルコ系ドイツ人)作品。
■「ベルリン・アレクサンダープラッツ」:アルフレート・デーブリーンの小説を原作とするライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督によるテレビ映画を、アフガニスタン系ドイツ人のブルハン・クルバニ監督が移民による現代版にリブートした作品。
■「システム・クラッシャー 家に帰りたい」:主演のヘレナ・ツェンゲルが11歳でドイツ映画賞歴代最年少の女優賞を獲得した、第70回ベルリン国際映画祭銀熊賞受賞作(ノラ・フィングシャイト監督)。
■「異端児ファスビンダー」:名匠オスカー・レーラー監督が若き日のファスビンダーを描いた作品。
また、関連プログラムとして、ファスビンダー監督の集大成的超大作「ベルリン・アレクサンダー広場」(1979、1980)も上映される。
・・・
企画担当のウルリケ・クラウトハイム(写真、ゲーテ・インスティトゥート東京、文化部)によると「ドイツ映画は今、変化の過程にある。2021年のドイツ映画祭 HORIZO NTE(地平線、視界)の上映作品7本のうち5本は、移民の背景を持つ監督による作品。ここ数年は新世代の映画人が登場し、従来とは異なるドイツを物語る作品を発表している。ドイツにある多様な現実に光を当てて、この光によって、これまでのドイツ映画の世界では見えなかった“色 ”が輝き出し、表現がより豊かになる。ドイツの現実に対する眼差しが多様化することは、ドイツ映画の充実だけでなく、私たち自身の“視界(Horizont)”を拡げ、ひいては未来の社会を共に構築するための大切な支えを作る」とコメント。
プロモーション映像↓:
ドイツ映画もハリウッドと同様に、多様性を描いた作品が増えているようだ。