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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから」(原題: The Half of It、2020)を見る。

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映画「ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから」(原題;The Half of It、2020)を見る。ネットフリックスで評判だったので見てみたが、おもしろかった。

白人ばかりが住む田舎町。中国人であるというだけで人種差別的な暴言を受けたりで、友達はゼロという娘と、妻を交通事故で亡くした父親は、鉄道エンジニアだがほとんど仕事をせず、家でテレビの映画ばかり見ているという父娘の話と高校生同士の三角関係を描くラブコメ

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最初に、主人公の中国系女子高生のナレーションで「この物語は恋愛モノでもなければ望みが叶う話でもない。」と語られる。

結局「愛は寛容でも親切でもない。愛とは厄介なもの。愛とはおぞましく利己的。それに大胆。」と締めくくられていた。

50年前に大ヒットした「ある愛の詩」の名セリフは「愛とは決して後悔しないこと」だったが、「愛とは」と一口に言ってもいろいろ定義があって、一筋縄ではいかないようだ。

この映画でも、歴史上の人物のセリフなどが多々引用されていた。カズオ・イシグロの「日の名残り」が何度も引用されるが、これは想いがあっても出せない、という主人公と重なる。主人公のエリ―は、ラブレターを代筆しているうちに、相手のアスターと共通点が多いことに気づき惹かれていく。カトリックの多い地域で、同性愛などが知れたら大ごと。

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エリー・チュー(リーア・ルイス)は中国系の女子高生。4-5歳の時に移民としてアメリカにやってきた。母親は何年か前に亡くなり、いまは父エドウィン・チュー(コリン・チョウ)と二人暮らし。父親は英語が話せず、テレビの映画などをみて、英語に慣れようとしている。

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映画のシーンで流れてくるのは「カサブランカチャップリンの「街の灯ハワード・ホークスのコメディ「ヒズ・ガール・フライデー」のほか「フィラデルフィア物語ヴィム・ヴェンダースの「ベルリン・天使の詩」など。

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カサブランカ」のラストシーンの映像が流れている時などは、娘のエリ―が話しかけても「山場だ」といって、話を受け付けない。

そんな中、エリ―の学校の担当教師はエリ―の聡明さを理解してくれており、ワシントン州の大学への進学を薦めてくれる。しかし、エリーは経済的にも進学など到底無理だと考えていた。

ある日エリーは、高校の弱小アメフト部の部員であるポール(ダニエル・ディ―マ―)から、アスターアレクシス・レミー)という女子生徒へのラブレターを代筆してくれと頼まれる。なぜならエリーもまたアスターに密かに惹かれていたからだ。

しかし、電気代の支払いが遅れている家の事情を考慮して、エリーは1回だけというポールの依頼を50ドルでひき受けることにした。

アスターから返事が来たというポールの言葉に驚き、思わず手紙に目を通すと、エリーの父親がテレビで観ていた「ベルリン・天使の詩」の台詞を引用したのを、アスターに見抜かれてしまっていた。

ポールは万事休すと思ったが、エリ―はこれはキャッチボールのような挑戦ととらえて、脈がないというわけではないというのだが・・・。

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気が弱いポールが、直接言葉でいえない代わりに、苦手な手紙を聡明なクラスメイトの女子に頼むというのがおもしろい。エリ―は、ポールから見ても異性として意識するような女性ではなかったが、やがてラストシーンでは、少し前に見た映画のシーンのように、ポールが汽車で旅立つエリ―を追いかけるシーンがある。

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エリ―とポールの関係、エリーとポールのラブレターの相手であるアスターとの関係、などが丁寧に描かれている。エリ―とアスターも別々の道を歩むことになるが、互いに好意を持っていることが確認できたので「数年後に会おう」と約束する。

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フランスの哲学者サルトルの「出口なし」という戯曲についても触れられているが、「出口なし」の状態から、将来は抜けだすだろうと予感させて映画は終わる。後味のいい映画ではある。

主な登場人物;