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「名作に進路を取れ!」…映画とその他諸々のブログです。

映画「流れ者」(1970)を再見。トランティニャン主演のフランスノワール。始めて買ったサントラ。

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クロ―ド・ルルーシュ監督、ジャン=ルイ・トランティニャン主演の「流れ者」(原題:Le Voyou、フランス、1970、日本公開1971年3月)を再見した。

フランシス・レイのテーマ音楽Le Voyou(ル・ヴォユー)が洗練されていて気に入り、すぐにサントラレコードを買った。「流れ者」と「雨の訪問者」と「赤いテント」が最初に買った45㎝ドーナツレコードだったと思う。パイオニアのどっしりしたステレオシステムでよく聴いていた。

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Voyou”とは賎しく教養のない連中、チンピラという意味のフランスの俗語。映画の中の劇中劇のミュージカル風の映画のタイトルでもある。

これは法の裏表を熟知した元弁護士が、誘拐、脱獄の犯罪を粋にやってのけるルルーシュフィルム・ノワール。製作は「あの愛をふたたび」のアレキサンドル・ムヌーシュキン、監督も同作のクロード・ルルーシュ、脚本もルルーシュと「愛と死と」や同作等のコンビ、ピエール・ユイッテルヘーヴェン、それにクロード・ピノトー等の共作。撮影はジャン・コロン、音楽は「雨の訪問者」「ある愛の詩」のフランシス・レイ

出演は「Z」のジャン=ルイ・トランティニャンルルーシュ夫人で映画初出演のクリスティーヌ・ルルーシュ、「Z」のシャルル・デンネなど。

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映画は、いきなりド派手でシャレた身なりの黒人の男と数名の太もも美女たちの踊りで始まるミュージカル風のオープニング。しかし、これが、最後には「Le Voyou」という映画のシーンだったことがわかるというオチがある。

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主人公のシモン(トランティニャン)は、泥棒仲間の密告で刑務所にはいり、出獄してきたところから物語が始まる。シモンの知り合いで銀行員の男(シャルル・デンネ)の息子を誘拐して身代金を狙う。銀行員はお金が払えないが、勤務先の大手銀行は社会的な評判などを勘案して必ず支払うはずというのだ。

実は、誘拐は銀行員も絡んだ、狂言誘拐だった。しかし、銀行員は、子供が無事に帰り、一躍時の人となってしまい、新聞に大きく報道されることになる。

再見してみると、小ネタがあちこちにあって、映画ファンをにんまりとさせる。この当時(1970年ごろ)、フランス映画としては、コスタ・ガヴラス監督の3部作(「Z」「告白」「戒厳令」)が人気だった。

シモンを追う刑事たちが、街中でシモンを見失うが、近くには映画館が2軒あった。刑事が言う。「”告白”かミュージカル風映画”流れ者”のどちらかだろう。おそらく”流れ者”だ」といって劇場に入っていくのだ。

「流れ者」を見ていたシモンは、警察が追ってくることを見越して、一人で映画を見に来ていた女の近くに移動して、ナイフを突きつけて、”アベック”(古い!カップル)を装って、顔を隠して抱擁しているふりをしてその場を逃げ切る。独り身の女は、その後、シモンに惹かれていき、シモンを自分のアパートに匿(かくま)うことになる。

警察も、やがて犯人はシモンだけでなく、女がかくまっているに違いない、「男と女」だと見当をつける。すると、シモンは、なぜかトランティニャン本人が出演した、同じルルーシュ監督の「男と女」(1966)のメロディを口ずさむというお遊びもある。

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シモンは、ビールが好きで、ビールを飲むときには、必ず「泡なしで!」と何度も注文をつける、こだわりがある。そういえば「マティーニはシェイクで」という殺しのライセンスを持ったイギリス人もいたな(笑)。

「流れ者」は、血の流れない犯罪映画で、シャレたフランス版、あるいはルルーシュ版のノワール映画だ。

 

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■テーマ曲

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