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映画「リチャード・ジュエル」(2019)。実話の映画化が続くイーストウッド監督作品。

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イーストウッドの監督最新作「リチャード・ジュエル」(2019)を見た。アトランタ・オリンピック開催中の公園で起きた、爆破テロ事件を描く実録ドラマ。

許されざる者」と「ミリオンダラー・ベイビー」で、アカデミー賞の作品賞&監督賞を2度受賞するなど、ハリウッドの偉大なフィルムメーカーでありレジェンドであるクリント・イーストウッド

イーストウッドは近年は題材として実話モノをピックアップしている。

米軍史上最強と謳われた伝説の狙撃手クリス・カイルの半生を描いた「アメリカン・スナイパー」(2014)。ブラッドリー・クーパーが主演し、過酷なトレーニングと食事制限によって、自身よりも体の大きかったクリスを体現。「運び屋」(2018)ではイーストウッド監督とクーパーが俳優同士で“初共演”。

2009年に起こり、奇跡的な生還劇として知られるUSエアウェイズ1549便不時着水事故、通称“ハドソン川の奇跡”と、その後の知られざる真実を映画化した「ハドソン川の奇跡」(2016)。

15時17分、パリ行き」(2018)が描いているのは、2015年に発生した“タリス銃乱射事件”。アムステルダム発パリ行きの高速鉄道タリス内で、554人の乗客全員をターゲットした無差別テロ襲撃事件だ。

そして、アトランタ・オリンピック開催中の公園で起きた、爆破テロ事件を描く実録ドラマ「リチャード・ジュエル」(2019)だ。

イーストウッドが実話を撮り続けている理由は何か。

これまでハリウッド映画が撮り続けてきた正義のヒーローたち(「スーパーマン」「バットマン」など)が不在の現代において、ヒーローというのは身近な日常の中にもいるというのを示したかったのか。

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主人公の警備員リチャード・ジュエルは、公園内のベンチ下にセットされたパイプ爆弾をいち早く発見、被害を最小限に食い止めたことから一躍英雄となる。しかし、FBIがジュエルに疑惑の目を向けていることをメディアが実名で報道し始めたことから、一転して、ジュエルは第一容疑者のレッテルを貼られてしまう。

現代社会におけるメディア・リンチ(犯罪事件等で、メディアが庶民感情を煽り被害者や加害者のプライバシーを一方的に垂れ流すこと)の深い闇が、個人を奈落の底に突き落とすという構図だ。「ハドソン川の奇跡」の機長の場合もまさにそうだった。

ジュエルはなぜ、第一発見者から第一容疑者になってしまったのか。

発端は、ジュエルがかつて警備員として勤務していた大学の学長が、TVインタビューを受けるジュエルを見て、FBIに通報したことに始まる。大学に勤務していた時のジュエルが、学内の問題点に過剰に反応する行動をよくとっていたことを学長は思い出し、ジュエルに爆弾設置の可能性があることを指摘。憶測の域を出ていなかった。

FBIは、憶測を正統化するためにプロファイリングを強引に適応。何ら科学的根拠はない。ジュエルが、最後に語る。「証拠があるのか」と。

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 過熱報道を続けるメディアはどうか。アトランタ・ジャーナルの女性記者キャシー・スクラッグスは、同紙のフロントページにジュエル容疑者説を掲載。他紙も追っかけ記事で追随する。メディアの怖さがある。

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実話となると、モデルとなる主人公の造形(イメージ)を変えることはできないにしても、CGで加工したようなあのでっぷりした顔(実物とそっくりとのこと)が不自然に思えて、なじめなかった(笑)。「15時17分、パリ行き」と「リチャード・ジュエル」はイマイチの評価。逆に「ハドソン川の奇跡」はコンパクトにまとめて見ごたえがあった。